第三十七話 道具屋の店主マタルガ 〜立花翔真編〜
〜立花翔真の視点〜
――――街ゴンドロ、道具屋マタルガ前――――【現在時刻、14時53分】
《古代の迷宮》の地下深くに居るとされている『ニーヒャ』を討伐する為に、そのモンスターの弱点である”明かり”を確保する為に、翔真達は『道具屋マタルガ』に寄って、閃光玉や戦闘に使えそうな道具を買いにやって来ていた。
〈此処が、受付嬢さんが言っていた道具屋マタルガだな……っ!〉
「さぁ、お兄様っ! 早速中に入りますわよっ!」
ロゼリアは、翔真の手を掴みながら道具屋の方に引っ張り始める。
「おいおい、そんなに焦る必要は無いだろ……」
こうして翔真は、呆れながらも道具屋マタルガへと足を踏み入れた。
――――道具屋マタルガ店内――――【現在時刻、14時55分】
「マタルガさん〜。 居ますか〜?」
翔真は、開口一番に店主を呼び付けると、その翔真の声を聞いた”老人の店主”が杖を突きながら店の奥から出て来る様子が見えた。
「おお、こりゃまた、元気な冒険者さんで……。 それで、何か御探しの物でも……?」
「あっ、貴方が店主のマタルガさんですね?」
「えぇ、如何にも」
「えっと、実は俺達は、古代の迷宮に生息しているニーヒャを討伐すると言う依頼を冒険者ギルドから受けていまして……。 なので、此処で売っているニーヒャの”弱点”となる閃光玉を買いに来たんですっ!」
翔真は意気揚々と答えると、冒険者ギルドの名を聞いた店主マタルガが、しみじみと懐かしみながら物思いに耽った。
「ほーう、なるほど、ニーヒャをか……! ほほほ、若いってのは良いモンですなぁ〜。 ワシも、もっと若ければ毎日の様に冒険に出掛けられるんだがのぅ……」
「え!? もしかしてマタルガさんも、元々は冒険者だったんですかッ!?」
「ほっほっほ。 まぁ、少しだけ腕っぷしが有ったかも知れぬのぉ〜?」
マタルガは照れ臭そうに微笑むと、その二人の会話を後ろで聞いていたロゼリアが、マタルガに向かって問い掛けた。
「マタルガさんも昔は、腕利きの冒険者だったんですの? それなら、ニーヒャの事について弱点以外にも何か”行動パターン”だとか、”攻撃の隙”とかの事を知っているのなら、是非とも私達にも教えて下さいまして……?」
〈そうか……! ナイスだロゼリア! マタルガさんなら、きっと何か有力な情報を知ってるかも……!〉
「ハハ、そうか……。 君みたいな小さな子も討伐に行くんだねぇ? ……うーん、ニーヒャは基本的に眠っている時は、主に天井にぶら下がっているから、奇襲を掛けたい時には、何か”遠距離武器”……若しくは、”投擲道具”とかが有れば便利だとは思うよぉ……? 後、それと、閃光玉の在庫は丁度残り40個だから、良かったら買い占めるかい?」
すると、そのマタルガの話を聞いた翔真とロゼリアは、互いに顔を見合わせながらコクっと頷いた。
「へぇ〜。 ……遠距離武器と投げれる道具ですわね? 有益な情報の提供をして頂き、とても助かりましたわ。 感謝致しますわね、マタルガさんっ♪」
「なるほど、閃光玉は残り40個か……オーケー! じゃあ、折角だから俺達が残りの閃光玉を全部買い占める事としよう。 えっと、それで閃光玉40個で金貨何枚必要なんですか?」
すると、瞬時に暗算をしたマタルガが、にこやかに微笑みながら閃光玉に支払う合計金額を翔真に伝えた。
「えっとね〜? この店では閃光玉は1個で銅貨5枚だから、40個でピッタリ金貨2枚が必要だね〜」
「うん、金貨2枚なら問題無く買えるな。 それじゃあ、それぞれ10個ずつ持つ事としようかっ!」
すると、店内で様々な道具を見漁っていたアケミとリセスも、翔真の下に合流する。
「おっ! どうやら、ちゃんと閃光玉は売ってあったみたいだな!」
「ふふっ、それも40個セットですわよっ!」
「40個もッ!? へへへ、丁度アタシ達は”四人パーティー”だから、それぞれが10個ずつ持ったら良い感じになるなぁ〜っ! まっ、アタシは元々閃光玉を5個持ってっから、無駄にアタシだけ持ってる量が5個多くなるがなぁ……」
すると、その話を聞いたリセスが、嬉しそうにしながらアケミに話し掛ける。
「あらあら、確かにアケミだけは、閃光玉を15個持つ事になりますけど……。 ふふふ、でもアケミは力持ちだから特に問題は無いですよねぇ〜?」
「おう、リセス……。 さっきから、なんかアタシに対する語気が強い気がするんだが、それは単なるアタシの気の所為か……?」
「うふふっ、気の所為に決まっていますよ。 うふふふふっ♡」
「いやだから、その微笑みが怖いんだって……ッ! まぁ、別に良いけどよぉ……」
〈さてと、そんじゃさっさと払っちまうか……〉
すると、そんなアケミとリセスの会話に対して、一切の聞く耳を持たなかった翔真が、そそくさと金貨2枚をマタルガに支払うと、マタルガは40個ある閃光玉を、それぞれに向かって10個ずつ優しく手渡した。
「はいっ、どーぞ。 ん〜でも、上手く持ち運べるのかい? おじいさん、少々心配だよぉ〜?」
「言われてみれば確かにそうですわよ、お兄様っ! これでは、私達の両手が塞がって仕舞いますわよっ!」
「それならマタルガさん。 10個の閃光玉が入れられる皆の分の大き目の袋4つと、ついでに回復薬5個も下さいっ!」
「うんうん。 それならこの、大き目の袋4つと回復薬DXを5個付けてっと……。 うん、これで値段は全部で金貨1枚と銀貨5枚だよ〜」
店主マタルガは、沢山の量の閃光玉を持ち運ぶには充分過ぎる程の大きな袋を四つ取り出すと、更に普通の回復薬よりも数段回復効果の高い『回復薬DX』を五つ取り出して来た。
「おおっ! これは回復薬DXじゃんか! 割と”レア”もんだぞ……っ! よし、それじゃあ今は金貨しか持っていないので、両替お願いしますね〜」
「はいよぉ〜。 お買い上げ誠に有り難う御座います〜」
そして、翔真は金貨2枚をマタルガに手渡し、金貨1枚を銀貨5枚に両替して貰うと、店主マタルガから手渡された大き目の袋をそれぞれ受け取る。
「有難う御座いますわマタルガさんっ! これで、閃光玉も楽に持ち運べますわねっ!」
「あらあら、翔真さん。 お金なら、私が代わりに支払って差し上げますのに〜……?」
「いや別に、俺が払っても良いだろリセス? さっきの依頼の報酬で、ギルドから金貨5枚貰ってるし。 それに、たまには男の俺にも支払わせろよな〜?」
「そ、そうですわよリセスッ! お兄様の男気に感謝しなさいよッ!」
ロゼリアは、リセスに向かってビシッと人差し指を突き付ける。
すると、指摘されたリセスが申し訳無さそうにしながら、翔真に向かって謝罪する。
「……そうですね。 私も、でしゃばり過ぎました……。 翔真さんがそれで良いのなら、私も甘んじて受け入れましょう……。 すみませんでした翔真さん……」
「おいおい、そんなに重く考えんなよリセス? ほら、もっとリラックスして、肩の力を抜いたらどうだッ!? なっ?」
「流石は、お兄様ですわっ! いい事、リセス? 常に私の様な、堂々たる面持ちで居る事ねっ! そもそも貴女は、いつも物事を難しく考え過ぎですわよっ!」
すると、そのロゼリアの言葉を聞いたアケミが、ロゼリアに向かって茶々を入れる。
「ヘヘッ……! 寧ろロゼリアは、能天気過ぎだと思うがなぁ〜? まっ、何にしてもさ? これでアタシ等は、沢山の閃光玉を手に入れたんだから、ニーヒャの討伐なんて楽勝だと思うぜぇ〜!」
〈楽勝……か。 まぁ、確かに油断さえしなければ楽に勝てるかもな……!〉
「むぅ〜、アケミったら直ぐに調子に乗るんですのね……っ! そんなんだと、ま〜た戦いの最中に、急に腹減った〜とか言い出して足手纏いになる事請け合いですわねっ!」
ロゼリアは肩を竦めながら、アケミに向かってそう言い放つと、アケミはギクッとしながら冷や汗を掻いた……。
「うっ……。 たっ、確かにその件については……完全にアタシの所為だから、弁明は出来ねぇけどよぉ……? ま、まぁ? そう言う事は、誰かしらでも起こり得るんじゃねぇかなぁ〜っ? あ、あはは……」
「その言い草だと、あの時の事を全く反省していませんわね……」
すると翔真は、その時のアケミの様子を思い返していた……。
「あぁ〜、それって確か……。 アケミがモンスターとの戦闘中に調子に乗って、うっかり体力を使い切っちゃって、それで腹減った〜とか言って、無様にも倒れちまった時の話だよな……? いやぁ〜、あの時は空腹で倒れたアケミを庇いながら戦うのは、中々に大変だったなぁ〜」
「うぅ……。 は、恥ずいから思い出させないでくれよなぁ〜……。 あん時は、朝飯を食った量が少なかったのが、いけねぇんだよ〜……」
「まっ、アケミは食いしん坊ですから。 まったく、端ない事、この上ないですわねっ!」
「なんだとぉ〜? ロゼリア〜?」
「まぁまぁ、お二人共。 また、口喧嘩しないの……。 あ、それでマタルガさん? ニーヒャの事について、お聞きしたいのですが、そのニーヒャの主な”活動時刻”は何時頃なのですか?」
すると、そのリセスの問い掛けに対して、店主マタルガが丁寧な口調で答えてくれた。
「ふむ。 ニーヒャは、主に夕方くらいから活性化し始めとるから、討伐に行くのならニーヒャが寝静まっている、朝方頃の方が良いと思うよぉ〜」
〈へぇ〜! なっるほどなぁ〜……。 その事を踏まえると、今日の所は一旦宿に戻って、それから明日に備える為の”作戦会議”を行った方が得策かも知れないな〜……〉
マタルガの話しを聞いた翔真達は、これから討伐しに行くのではなく、今日の所は一旦宿屋に戻ってニーヒャの討伐は明日に変更する事にした。
「まぁ、そうだな。 武器も道具も万全だし、後は明日に備えて一眠りってのも悪い選択じゃねぇよなぁ……」
「そうですねアケミ。 冒険者ギルドからのニーヒャの討伐期間は、特に定められていませんし、今は別に焦る必要も無いですしね」
と、翔真とアケミとリセスの3人は、これから宿に戻ろうと提案したが、ロゼリアだけは自身の頭をトントンとしながら別の事を提案する。
「やれやれですわね。 皆さん、ちょっとは”頭”を使ってみたら如何ですの〜?」
「あぁ〜? ロゼリア、一体何が言いてぇんだぁ〜?」
苛ついた様子のアケミが、ロゼリアに向かって詰め寄っていく。
「おっと、落ち着けよアケミ! 何か、ロゼリアにも考えが有るんだよなっ!?」
「うふふっ♡ 流石は、お兄様ですわねっ! アケミなんかよりも頭の出来が違いますわねっ!」
「ちょいッ!? ロゼリア! お前も、いちいち挑発すんなって! で、一体何を思い付いたんだよ?」
すると、ロゼリアはニヤリと口角を上げると、自身の考えを述べた。
「ふふっ、これから『傭兵所』に行って新たな”助っ人”を募るんですのよっ! 今の内に、明日の朝方に一緒に古代の迷宮まで来てくれる腕利きの傭兵を予約するんですのっ!」
「なるほど、助っ人の傭兵か! 確かに傭兵団は”前日予約制”だから、当日に行っても追い返されるだけだしなぁ〜。 んで、ニーヒャは地下50階の奥深くに生息してるから、なるべく俺達の体力の消費を抑える為に、傭兵さんを雇うって事か?」
「そう言う事ですの……っ! そして、勿論お金はリセスに支払って貰いますわ。 勿論良いですわよね……リセス?」
ロゼリアは、ニコッと微笑みながらリセスに確認を取ると、その事を聞いたリセスが嬉しそうに返答した。
「……はっ! はいッ! お金の事なら私の出番ですっ! 翔真さんっ! 今度は、私に任せて下さいねっ!」
リセスは、鼻息を荒くしながら、翔真に向かって言い寄った。
「お、おう……? そうだな。 じゃあ、これから皆で傭兵所に行ってみっか!」
「ふふっ、良かったですわね、リセス! お兄様に頼って貰えてっ!」
ロゼリアは、リセスに向かってニヘヘッと陽気に笑った。
「ロゼリア……っ! まさか、私の為に傭兵を雇うと言う提案を……?」
「ん〜? 別に、偶然ですわよ、偶然っ! ささ、話し込んでいないで、さっさと傭兵所にへと向かうわよリセスっ!」
「えぇ、行きましょうロゼリア!」
「ロゼリアの奴……。 何で、アタシに対しては当たりが強いのに、リセスに対しては優しいんだぁ〜?」
「……アケミ。 多分、お前の普段の行いの所為だと俺は思うぞ……。 まぁ、別に同情はしないが……」
「ガーーーンッ! ショウマまで、そんなにアタシの事が嫌いかよぉぉおお〜〜〜ッッッ!!!」
「いや、別に嫌いじゃないけど、少し面倒臭いとは思う……」
「それって、言われて一番イヤなパターンじゃんかよぉ〜〜ッ!?」
かくして、色々有ったものの、翔真達一行は傭兵を雇う為に、傭兵所に向かうのであった!
【現在位置】
【街ゴンドロ】
【現在の日時】
【4月7日 15時10分 春】
【立花翔真】
【状態】:健康
【装備】:旅人の服 頑丈な剣 小さな袋と大き目の袋
【道具】:回復薬10個 回復薬DX5個 金貨1枚 銀貨5枚 閃光玉10個
【スキル】:不意の転倒
【思考】
1:さてと、傭兵はどんな人を雇おうかな……。
2:取り敢えず、ニーヒャの対策の為にも、辺りを明るくするスキルを持った人物が良いな……。
3:……これだけ万全なら、無事にニーヒャを倒せる筈……だよな?
【基本方針】:ニーヒャとドンマンを倒して一流の冒険者の証を手に入れる。いずれ魔王ベルファスを倒す。ムニルに謝りたい。ソアボと再会したい。腕利きの傭兵を雇う。
※回復薬DX5個と、大き目の袋4つと、閃光玉40個を購入しました。
【リセス・トワ・イラル】
【状態】:健康
【装備】:ピンク色のプリンセスドレス 銀色のティアラ 腕時計 大き目の袋 豪華な革袋
【道具】:金貨299枚 レインボーカード 閃光玉10個
【スキル】:絶対防御
【思考】
1:傭兵を雇え終えたら、明日に備えて休息を取る事に致しましょう。
2:取り敢えず、折角ですから最高ランクの傭兵さんを雇いたいですね。
3:最高ランクだと、恐らく金貨50枚から100枚で雇える筈ですから、余裕で雇えますね。
【基本方針】:ニーヒャを討伐する。魔王を倒した後で王国に帰り王位を継ぐ。最高ランクの傭兵を雇う。ムニルに会いたい。
※散財欲求が強まっています。
【ロゼリア】
【状態】:元気
【装備】:街娘の服 使命の剣と盾 大き目の袋
【道具】:閃光玉10個
【スキル】:元奴隷根性
【思考】
1:格好良い傭兵さんが良いかしらね〜っ!
2:それとも、美人さんかしら〜っ!
3:寡黙な、おじさまも捨て難いですわね〜っ!
【基本方針】:良い感じの傭兵を雇う。翔真に恩返ししたい。弟のロメオに会いたい。
【アケミ】
【状態】:若干落ち込み気味
【装備】:紅色の和服 撃滅の斧 大き目の袋
【道具】:閃光玉15個
【スキル】:火炎演舞
【思考】
1:くそぉ〜、アタシは傭兵より飯が食いてぇぞぉ〜!
2:後、眠いから早く寝てぇ〜ッ!
3:飯、飯、飯ーーーッッッ!!!
【基本方針】:ヤケ食いしたい。飯を食べ終えたら直ぐに寝る。傭兵選びは皆のセンスに任せる。かつての仲間達と再会したい。
【マタルガ】
【状態】:健康
【装備】:眼鏡 緑色の道具屋の店主の服 杖 双翼の腕章
【道具】:双眼鏡
【スキル】見切りの一撃【効果】:相手の攻撃を瞬時に見切り、相手にカウンターの一撃をお見舞いする。年老いた今でもこのスキルの効果は健在である。
【思考】
1:ほっほっほ、冒険って良いものですよなぁ〜。
2:昔は、ワシもブイブイ言わせてたもんですよぉ〜。
3:若いってのは、本当に良いですなぁ〜。
【基本方針】:いつか、また昔みたいに元気に冒険をしてみたい。




