第三十五話 バルフの家で一休み 〜餅木歩夢編〜
〜餅木歩夢の視点〜
――――バルフの家――――【現在時刻19時50分】
歩夢は、ジルバーとサヨコと名乗った二人組が去った後にも、のんびりとふわふわのソファーの上で寛いでいた。
〈ふぅ〜っ♪ 心が休まるなぁ〜……〉
「おやおや歩夢殿。 そろそろバルフ殿が風呂から上がって来る頃合いですから、拙者達も風呂に入る準備を整えておきましょうぞ!」
「あ〜、そうだね雅隆君。 よいしょっと!」
すると、歩夢がソファーから降りたタイミングで、丁度良く風呂場から上がってきた様子のバルフが、ブラシで毛並みを整えながら、歩夢達に風呂が空いた事を知らせる。
「あ、バルフさん!」
「さてと。 んじゃ今度は、お前等が風呂に入る番だぞ。 着替え用の”人間サイズのパジャマ”も用意して有るから安心して入って来て良いぜっ!」
「おおっ、気が利きますなバルフ殿っ! では早速、歩夢殿と一緒に風呂に入るとしますかな〜っ!」
「うん! 早く入ろう〜! 雅隆君〜っ!」
歩夢と雅隆は、ドタドタと風呂場へと向かって行こうとすると、バルフが陽気な口調で呼び掛けた。
「それじゃあ、お前等が風呂に入っている間に、俺が寝床を整えておくからなぁ〜っ!」
「うんっ! えへへ、手際が良いんだねバルフさんっ! それじゃ、お風呂に入って来まーすっ!」
と言う事で、歩夢と雅隆は一緒にお風呂に入る事となった。
――――バルフの家、風呂場――――【現在時刻、19時55分】
雅隆は、風呂場の中を覗いて見ると、其処には普段自分達が使っている風呂場の構造と、かなり”似ている”と言う事に気が付く。
「ふむふむ……? しっかり、シャワーも完備されている様子ですし、ボディーソープとシャンプーとリンスまで有るで御座るなぁ……?」
「わぁ〜凄いね〜! それに、まるで”温泉”みたいに広いよ〜!」
「確かに、見た所一般的な家庭の風呂の構造で御座るが……。 広さは拙者の自宅の風呂よりも遥かに広いですなぁ〜っ!」
「うんっ! 構造は良く見る感じだけど、広さは結構違うんだねぇ〜っ!」
「うむうむ。 さてと、それではそろそろ話し事は、これまでとして、さっさと服を脱ぐで御座るよ〜っ!」
〈ふふっ、友達とお風呂に入るのは久し振りだなぁ〜っ♪〉
そして、二人は脱衣所で服を脱いで中に入ると、雅隆は直ぐ様シャワーを浴びる為に蛇口を捻った。
ブシャーー。
「ふぅ〜。 シャワーが気持ちいいですなぁ〜♪」
「いいねぇ〜っ♪ ふふっ、それにしても異世界にも、ちゃんと”現代的な技術”が有って安心したよぉ〜っ!」
「確かに、そうですな! バルフ殿の様に魔法を使わない種族でも、この村の様に技術が発展しているのなら、拙者達も安心して異世界の環境に順応出来ますなっ!」
そして歩夢と雅隆は、のんびりと談笑をしながら髪と身体を洗っていると、そこで自分達の”年齢”の話をする事となった。
「あれ、そう言えば雅隆君って僕の”年上”じゃなかったっけ?」
「何を言うで御座るか? 拙者はピチピチの”19歳”ですぞ?」
「えぇ〜っ!? ぼ、僕よりも年下だったの〜っ!? てっきり、”30代”ぐらいかと……」
「……え、もしや拙者の”兄上”の年齢と混同しているのでは……?」
「うん……。 多分、”座衛門さん”と混ざっちゃったのかも……. い、一旦気を落ち着かせる為に湯船に入るね……」
この予期せぬタイミングで衝撃の事実を知った歩夢は、一旦気持ちを落ち着かせる為に湯船に移動すると、そのままどっぷりと浸かった。
「ふぅ〜、やっぱり湯船は落ち着くなぁ〜。 それにしても、まさか雅隆君が僕の”年下”だったなんてねぇ……」
「まぁ、兄上の事を抜きにしても確かに拙者は”老け顔”で御座るからな〜。 初対面の人にも、30代に間違われる事が有りましたからなぁ〜」
「う〜……。 と言う事は今まで僕は、ずっと年下に甘えていたと言うのか〜……。 年上として恥ずかしい……っ!」
歩夢は恥ずかしさの余り両手で顔を覆い尽くすと、雅隆が苦笑いを浮かべながら歩夢の背中を軽く叩いた。
「まぁまぁ、そんなに気にしないで下さいな。 ほらほら、そんな事よりも良い湯加減で御座ろうて……」
「うん、そうだね~。 確かに良い湯加減だね〜! はぁ〜……極楽、極楽〜……」
「それに、どちらかと言うと、歩夢殿が”成人済み”と言う事の方が驚きで御座るからな……」
雅隆はポツリと呟くと歩夢が首を傾げながら聞き返した。
「ん、何か言った雅隆君?」
「いえいえ、只の独り言ですぞ……」
こうして、ひたすらに歩夢と雅隆は、のぼせない程度に湯船にどっぷりと浸かった。
「ふぅ〜……。 それでは、歩夢殿……。 これ以上は、のぼせる危険性が御座いますので、そろそろこの辺りで出る事と致しましょうぞ!」
「うん、そうだね。 バルフさんとドガイゴスさんも、僕達が風呂から上がるのを待っている事だろうし早く出ようか〜」
心ゆくままに湯船を堪能した二人は、ゆっくりと湯船から立ち上がって風呂場から脱衣所に出ると、目の前にドガイゴスが用意してくれたバスタオルと着替えのパジャマが、折り畳まれた状態で丁寧に置かれていた。
〈おっ、さっきバルフさんが言ってた”人間用のパジャマ”ってコレの事だねっ!〉
二人は、濡れた身体を用意されたバスタオルで拭いて、そのままパジャマに着替え終えると、雅隆は外していた眼鏡と自動翻訳装置も身に着けた。
「矢張り、眼鏡が無いと何も見えませぬからなぁ〜! 歩夢殿も着替え終えましたかな?」
雅隆が歩夢の方に振り向くと、其処には”女児用のパジャマ”を身に着けている歩夢の姿があった……。
「あれっ? ねぇ、思ったんだけどこの僕が着たパジャマ、何だか可笑しくな〜い?」
「む? どうやら見た所、歩夢殿のそのパジャマは女児用で御座るな? まぁ、歩夢殿は何時も女性物のコスプレを着ているので、拙者は特に違和感を抱かぬで御座るが……」
〈もしかしたら、僕のサイズに合うパジャマが女児用の物しか無かったのかなぁ……? にしては、下着は”セクシー”なのは一体……?〉
歩夢は、履いているパンツを雅隆に見せ付ける。
「ねぇ、これを見てどう思う雅隆君?」
「むむっ!? 中々にスケスケで際どいですなぁ……。 と言うか、最早パンツの役目を担っていませんなぁ……」
「だよねぇ〜……。 こんなパンツ、コスプレ以外で誰が履くんだよ……」
すると、他にも”ブラジャー”が置いてある事に気が付いた雅隆が歩夢に呼び掛ける。
「おや、見て下され歩夢殿。 こんな所にブラジャーが……」
「あ、ホントだ〜。 でも、流石に僕はブラジャーは着けないよ〜っ!」
「はっはっはっ! まぁまぁ、然し折角用意して下さったのですから、この機会にブラジャーを着けて見ては如何ですかな〜?」
雅隆は、からかう様な口調で歩夢にブラジャーを着ける事を勧めた。
「うーん、まぁ、いっか。 面白くそうだし着けちゃおっと!」
こうして歩夢は生まれて初めて、ブラジャーを着ける事となった。
「うん、意外とピッタリサイズだね。 それにしても、ブラジャーって胸が小さい人用のも有るんだね〜」
「そりゃあそうでしょ。 ブラを着けないと胸の先端が擦れて痛いと良く聞きますからなぁ……」
「へぇ〜、詳しいんだね雅隆君」
すると、歩夢がブラジャーを装着したタイミングで、バルフが脱衣所に入って来た。
「おーい、お前達風呂から上がったのかー? ……って、何でブラジャーを着けてんだぁ……?」
「おや、バルフ殿ではないですか。 いやはや、先程拙者達が風呂から上がった際に、歩夢殿のパジャマと一緒に置いておりましたので、折角だからと着けさせたのですよ」
「おいおい……。 そんなの俺は知らねぇぞ……? まさか、これって母ちゃんの趣味かぁ〜? わりぃな、母ちゃんの”悪趣味”に付き合って貰っちまってよ……」
すると、物陰に隠れながらその会話を密かに聞いていたドガイゴスが、何処からともなく現れた。
「あったり〜っ! うふふっ、あらあら〜。 歩夢ちゃん可愛いわねぇ〜。 ヨシヨシしてあげたいわぁ〜っ♡」
〈やっぱり、ドガイゴスさんが用意してくれた物だったんだ!〉
「おい母ちゃんッ! キメェから、悪ノリは止めろよッ! 歩夢も早く逃げろ……ッ!」
然し、歩夢は逃げ出すどころか、寧ろドガイゴスに向かって駆け出した。
「わぁ〜い! 優しくヨシヨシしてぇ〜!」
「いや、お前もノリノリじゃねぇかよ、歩夢ッ!!」
「良いわよぉ〜♡ 満足いくまで撫でて上げるわねぇ〜っ♡」
「はぁ……。 まっ、もうどうでも良いや……」
バルフは、呆れた様な口調で肩を竦めると、そのまま歩夢は数分の間、まるで子猫の様にドガイゴスの手によって心ゆくまでに撫でられ続けられた。
「よーしよしよしよしっ!」
さすさすさすさすさすッッッ!!!
「速いッ! 何と言う、撫でるスピードで御座るかッ!」
「雅隆、案外オメェも悪ノリが好きなタイプだったんだな……」
「あははははっ! く、くすぐったいよぉ〜っ!」
そして、長かったヨシヨシタイムも、やがて終わりを告げる。
「はい、これでヨシヨシタイムは、お終いよぉ〜。 満足したかしらぁ〜?」
「えぇ〜っ!? も、もっとヨシヨシして欲しいよぉ〜!」
「おいおい、歩夢……。 おねだりなんかしてねぇで、早く母ちゃんから離れて、さっさと歯磨きをして来いッ!」
「う、うん……。 分かったよバルフさん……。 雅隆君早く行こうか……」
バルフから怒鳴られた歩夢は、露骨にテンションを下げながら、洗面台に向かってゆく……。
そして、バルフに言われた通りに、来客用の歯ブラシとコップを持って、二人はしっかりとピカピカになるまで歯を磨いた。
「ガラガラガラガラ……ぺっ……! ふぅ〜。 口の中がさっぱりするぅ〜っ♪」
「やっぱり、いちご味の歯磨き粉が至高で御座るなぁ!」
「分っかるぅ〜! やっぱり、雅隆君は僕と気が合うねぇ〜!」
「ですな、歩夢殿よッ!」
ガシッ!
二人は、友情の証の固い握手を交わした。
すると、歯磨きを終えた事の確認に来たバルフが、今度は寝床の場所にへと案内する。
「お、終わったか二人共。 それじゃあ、お前達は先に寝てろよ〜。 今、寝床の所ヘ案内してやるからな〜」
「よ~しっ! 寝っるぞ〜っ!」
二人は、バルフに寝床の場所に案内されると、やがてベッドが有る部屋に辿り着いた。
すると、歩夢が辛抱堪らずにベッドに向かって飛び込んだ。
「わぁ〜、ベッドだぁ〜っ♪」
ボフッ!
「おいおい、アグレッシブだなぁ歩夢……。 ベッドは逃げねぇぞ〜?」
「ふわぁ〜……。 猛烈に眠くなってきたで御座るよ〜……。 ムニャムニャ……」
「それじゃあ、雅隆はアッチの部屋に来てもらうぜ。 アッチには、もう一つベッドが有るからな」
〈えっ! そんな……ッ!?〉
すると、そのバルフの言葉を聞いていた歩夢が、突然血相を変えるとバルフに対して怒鳴り始めた……!
「ちょっと待ってバルフさんっ! 雅隆君は、僕と一緒に寝るんだよッ! だって、僕一人じゃ怖くて眠れないもん!」
その歩夢の告白を聞いたバルフは、若干引いた様な顔を浮かべると、隣に居る雅隆に相談する。
「えぇ……? 一人じゃ寝られないってマジかよ歩夢……。 んで、雅隆どうするよ……?」
「まぁ、これも何時もの事ですからなぁ。 拙者は、特に問題は無いで御座るが?」
「……そうなんか。 まっ、問題ねぇなら別に良いぜ。 じゃあ、二人で仲良く眠っていろよー」
バルフがそう言うや否や、二人は一人用のベッドの中に強引に入ると、歩夢が雅隆の事をまるで抱き枕かの様に締め付けながら、そのまま就寝しようとする。
「……おいおい、雅隆が苦しそうだが本当に大丈夫なのか……? まぁいいや。 んじゃあ、電気消すぞー」
「いいよー」
「拙者も良いで御座るよー」
「……割と大丈夫そうだな。 じゃあ、また明日なぁ〜」
そして、バルフは二人が就寝している部屋の電気をそっと消す。
すると、どうやら歩夢と雅隆は疲れが溜まっていたのか、直ぐに眠ってしまった。
「えぇッ? 今、電気を消したばっかだってのに、すぐ寝ちまったぞコイツ等……。 まぁ、そうだよな……。 とても疲れてたんだなぁ……」
バルフは、二人が起きない様に優しい笑みを浮かべると、そっとドアを閉めたのだった……。
【現在位置】
【バルフの家】
【現在の日時】
【4月7日 23時4分 春】
【餅木歩夢】
【状態】:就寝中
【装備】:パジャマ 女性用の下着
【道具】:持ち物は現在バルフが大事に預かっています
【スキル】:慈愛の涙
【思考】
1:Zzz……。
【基本方針】:色んなモンスターと仲良くする。雅隆とバルフと一緒に色んな冒険をしたい。
※無事に異世界生活一日目を生き残りました。
【大宮雅隆】
【状態】:就寝中
【装備】:眼鏡 パジャマ 自動翻訳装置
【道具】:持ち物は現在バルフが大事に預かっています
【スキル】:永遠の瞬間移動
【思考】
1:Zzz……。
【基本方針】:一文無しなのでお金を稼ぐ。歩夢とバルフと一緒に色んな冒険をしたい。
※無事に異世界生活一日目を生き残りました。
【バルフ】
【状態】:ご機嫌
【装備】:威嚇用の爪と牙 自動翻訳装置
【道具】:母ちゃんの写真
【スキル】:勇気の咆哮
【思考】
1:ふぅ、コイツ等の荷物は俺の部屋に全部置いてるから俺が責任持って、しっかり見張っといてやるか。
2:俺の部屋は、鍵を掛けてっから、いくら泥棒が家に入って来たって安心だぜ〜ッ!
3:良い夢を見ろよな。 歩夢、雅隆……。
【基本方針】:歩夢と雅隆と一緒に色んな冒険をしたい。荷物を見守る。
※4月7日を無事に生き残りました。
【ドガイゴス】
【状態】:満足
【装備】:バスローブ 自動翻訳装置 双翼の腕章
【道具】:無し
【スキル】:母の愛
【思考】
1:本当に、可愛かったわぁ〜歩夢ちゃ〜んっ♡
2:あれっ? もしかして歩夢ちゃんと、雅隆くんはもう眠っちゃったのかなぁ〜?
3:うふふっ、後で二人の寝顔をこっそりと見ちゃおっかなぁ〜♡
【基本方針】:歩夢と雅隆の可愛い寝顔を、こっそりと起こさない様に覗き見する。
※4月7日を無事に生き残りました。




