第二十四話 教会ノイリの地下に潜む狂気 〜竜胆園鯛造編〜
〜竜胆園鯛造の視点〜
――――始まりの大地ストファー、教会ノイリ前――――【現在時刻、14時19分】
数年ぶりの再会を果たした鯛造とアビウスは、再会の余韻に浸りながら、ゆっくりと教会ノイリへと足を向ける。
「さてと……。 こうして、互いの再会を喜び合うのも良いですが、そろそろ『ネリアス』の”お墓参り”に行きませぬか?」
「あ、あぁ……! そうだな、鯛造さん……! 確かに、我等が先ず、すべき事は、ネリアスの墓参りをする事だったな……!」
ハッとしたアビウスは、慌てて教会ノイリの中へと、鯛造と共に入ってゆく……。
――――教会ノイリ内部――――【現在時刻、14時21分】
すると、教会ノイリに足を踏み入れた途端に、アビウスと鯛造は僅かな”違和感”を覚えた。
〈おや? 何やら、不気味な雰囲気ですねぇ……? 誰も……”居ない”?〉
「……? 誰も居ないのか? もしや、神父もシスターも地下の方に居るのか……?」
アビウスはそう言うと、教会の中をキョロキョロと見回しながら移動する。
すると、ふとアビウスは、地下墓地へと続く”階段”を見付ける。
「これは階段か……。 恐らくこの階段を降りた先にネリアスの墓が在るのだな。 何か、”嫌な予感”がするがな……」
〈……無断で地下墓地に立ち寄るのは、少々憚られますが、この際ですから致し方無いでしょうな……〉
と、鯛造が顎に手を当てながら思案をしていると、アビウスが警戒した様な口調で問い掛けて来た。
「どうする鯛造さん? 危険を承知で、地下墓地に降りてみるか……?」
「えぇ、そうですね。 気を付けて降りる事と致しましょうかアビウスさん。 くれぐれも警戒を怠らない様に……」
「あぁ、しっかりと心得ている。 それでは行くか、鯛造さん……」
二人は、嫌な雰囲気を肌で感じ取りながら、慎重な足取りで地下墓地ヘと続く階段を下ってゆく……。
慎重に1段ずつ……ゆっくりと、なるべく足音を立てない様に階段を降りてゆく……。
すると不意に、二人は地下から漂ってくる不自然な”匂い”に気が付く……。
「……!? この鉄臭い香りは……”血”か?」
アビウスは、不意に臭って来た血の匂いを嗅いだ途端に、ピタリと足を止めた。
すると、鯛造がアビウスを宥めながら、静かに言葉を発する。
「えぇ。 恐らくこの先に、この臭いの”元凶”を作った者が居る筈ですよ……。 アビウスさん、どうしますか? 一旦引きますか……?」
すると、その鯛造のコトバに対して、アビウスが不服そうな表情で返答する。
「引くって、何故です? 我等、二人の力を合わせれば、敵の一人や二人程度なんぞ相手では……」
すると、鯛造はそのアビウスの発言を一蹴する。
「自惚れなさんなアビウスさん。 恐らく、この血の匂いは、元々この教会に居た”神父”と”シスター”の物で間違いない筈……。 ならば、其の者達に危害を加えた相当なる”手練”が、この先に居るのかも知れぬ……」
鯛造は、アビウスを制止しながら、暗闇の奥の方に目を向ける。
〈矢張り、思った通りですなぁ……。 この先の暗闇に目を凝らして見ると、辺りに血痕が散乱していますねぇ……。 どうやら、この辺りで”戦闘”が有ったのは確かの様ですなぁ……〉
すると、鯛造と同じく暗闇を見詰めていたアビウスが、とある事に気が付く。
「……待って下さい。 薄暗いが、数段先の階段を見てみて下さい……。 彼処に何故か、”剣”が落ちているが……?」
〈……剣ですか? あぁ、確かに見え難いですが、アレは剣で間違い有りませんねぇ……〉
すると、鯛造は周囲を警戒しながら、数段先に転がっている剣の下にへと近寄って行く。
「にしても、剣は有っても神父やシスターの姿は見えませんねぇ……? む、”コレ”は……?」
すると、隣の壁に目線を向けた鯛造が、其処に赤黒い液体が付着しているのと同時に、嘗ては人間で有ったであろう”肉塊”がコビり付いているのを発見した……。
「……なんと惨い。 それに、良く見てみると、他にも破れた”衣服の断片”も散らばっていますなぁ……」
すると、遅れて剣の下に辿り着いたアビウスが、鯛造に提案をする。
「鯛造さん……。 折角ですから、この落ちている剣を使ってみたらどうだ……? ほら、鯛造さんは武器を持っていない様子だからな……」
〈確かに、”護身用”として身に着けておくべきか……〉
そしてアビウスは、慎重な手付きで剣を拾うとそのまま鯛造に手渡した。
「これを、鯛造さん」
「えぇ……そうですね。 有り難く使わせて頂きますかねぇ……」
そして、鯛造は落ちていた血塗れの剣をアビウスから受け取ると、目を凝らしながら”剣の名前”を言い当てた……。
「ふむ、この剣は恐らく《信念の剣》と言う名の、”名刀”だな……。 この世界の神父が、良く護身用に装備している剣だから、見ただけで判別出来る……」
「と言う事は、この辺りの血痕も……神父の者で間違い無いと?」
「えぇ、この状況から察しますと、その線が濃厚ですなぁ……」
すると、そんなやり取りを鯛造とアビウスがしていると、突如として一人の”女性の甲高い悲鳴”が地下から響いて来た……。
『キャーーーッッッ!!!』
〈……!? い、今の声は悲鳴……ッ!〉
「急ぎましょう、アビウスさん! どうやら、まだシスターは”生きている”みたいですよ……!」
「了解だッ! 鯛造さん……!」
アビウスと鯛造は剣を構えながら素早く階段を降りてゆく……。
――――教会ノイリ、地下墓地――――【現在時刻、14時26分】
そして、二人は階段を降り切って地下墓地に辿り着くと……。
其処には、”数名の遺体”がバラバラになった状態で辺りに散乱していたのだ……。
「こ、これは……!? なんと惨たらしい事だッ! どうやら、全員まだ死んで間も無い様だな……。 アビウスさん、辺りを警戒しろ……ッ! どうやら、これを行った”犯人”がまだ近くに居る様子だぞ……」
「はい……。 くっ、何処に居る……殺人鬼めッ!」
すると、苦悶の表情を浮かべている遺体を凝視しながら、鯛造は思い耽った。
〈それに、この遺体……。 全員がまるで弄ばれたかの様に、意図的になるべく致命傷を与えない様に苦しませてから殺害されている……。 これは、此方も相当な覚悟をしなくては一瞬にして殺られますなぁ……〉
と、周囲に気を配らせながらアビウスと鯛造が身構えていると……。
遠くの方から、ピチャッ……ピチャッ……。
と言う水溜りを踏む様な”足音”が、段々と鯛造とアビウスに近付いて来る事に気が付く……。
ピチャッ……。 ピチャッ……。
〈おや? この足音は……? 何者かが、辺りに散乱している亡骸を踏んでいる音か……?〉
「……アビウスさんッ! どうやら、何者かが此方に向かって来ている様子ですぞ……ッ!」
「あぁ……! そうだな、鯛造さん……っ! 果たして、生存者か……”それとも”?」
ピチャッ……ピチャッ……ピタッ。
〈足音が鳴り止んだ……? 然し、姿は見えない……? ハッ! まさか、後ろか……ッ!?〉
と、鯛造が慌てて後ろを振り返ると、其処に居たのは”頭部だけ”になったシスターの髪を片手で掴んでいる一人の背の低い男が、狂気的な表情を浮かべながらアビウスと鯛造の目の前に姿を現すと、そのまま口を開いて声を発した……。
「んあー? アンタ達は一体誰だぁ? もしかして、この地下墓地に御参りに来た人かぁ?」
〈……返答を間違えれば、”殺される”。 此処は様子見をしつつ、無言を貫くべきか……?〉
「…………………」
「んー? 何も言わねぇのかぁ〜? だったら悪ぃが、お引き取り願おうかぁ? 今のオレっちの姿を見てくれぇよなぁッ! ほらさ、分かるよなぁ〜? こう見えても忙しいんだよぉ……。 この場は”見逃してやる”からサッサと帰んなぁ〜……?」
背の低い男は、小首を傾げながらアビウスと鯛造に向かって、警告の言葉を投げ掛ける。
然し、二人はそれに対抗する様に、男に向かって質問をする。
〈先ずは、この男の”目的”を聞き出すべきでしょう……。 なるべく、奴を挑発しない様に言葉を選びながら……〉
「……貴方に一つ聞きたいのですが、この教会ノイリを襲った犯人は、”貴方だけ”なのですか? それとも、他に仲間が居て、その者達と一緒に襲撃したのですか……?」
鯛造は怯む事も無く、殺人鬼の男に向かって問い詰めると、その質問に対して男は嬉々としながら答え始める。
「いんや、これはオレっちの”単独犯”だね! 因みに動機も知りたそうにしてるから特別に教えてやるけど、実は”とある大きな国”からこの教会の奴等をぶっ殺せっつー”依頼”が有ったから殺っただけでなぁ〜?」
〈大きな国からの依頼……ですか。 はてさて、一体どの国が教会を襲えなどと言う依頼を出したのでしょうかねぇ……〉
「……依頼だと?」
アビウスは、男に向かって睨みを利かせながら剣の切っ先を向ける……。
すると、男はニヤ付きながら話を続ける……。
「へへっ。 まぁ、待て待て。 まだ、オレっちの”話”は終わってねぇぜぇ〜? んで、その依頼の”達成報酬”は、その国のお姫様との”婚約”でなぁ〜ッ! やっぱ、この年になると身を固めたくなるっつーか? お金より嫁だよな〜って思ってよ! だって、人を殺すだけでお姫様と結婚出来るんだぜ!? そりゃあもうノリノリで殺すよねぇ〜っ!」
男はゲラゲラと下卑た笑みを浮かべると、アビウスは苛立った様子で、男に向かって行く。
「……貴様ッ! 今この場で断ち切るッ……!」
すると、そのアビウスの行動を鯛造が制止する。
「待て、アビウスさん……。 此処はまだ、奴と戦うべきでは無い……。 先ずは、奴の”名前”を知る事の方が先だ」
「え? オレっちの名前が知りてぇんかぁ〜? イイぜ、そんじゃ特別に教えてやんよぉ〜っ! イイか? 良く聞けよ〜、オレっちの名前は『ギョン』ってんだッ!」
〈……ギョン? その名は確か、《夢幻旅団員》の中に、居た様な気が……〉
「なるほど、ギョン。 其れが、御主の名なのか? 鯛造は、この名に”心当たり”は……?」
「思い当たる節なら、御座いますねぇ……。 恐らく、《夢幻旅団No.17》の『墓荒らしギョン』。 その者と同一人物かと……」
すると、鯛造のその言葉を聞いたギョンは、まるで歓喜したかの様に拍手しながら声を発した。
「ヘヘ、御名答〜ッ! オレっちは夢幻旅団っつーのに入ってる墓荒らしギョンだぜぇ〜ッ!? でも団員No.17だからかなり”新参者”なんだぜぇ! それで、あんた等の名前は? 人に名乗らせて置いて自分達は名乗らねーっつーのは無しだぞぉ〜ッ!」
すると、ギョンはバラバラ遺体に突き刺さっていた”手斧”を強引に抜き取ると、その手斧を鯛造とアビウスに向かって振り翳す様なポーズを取る。
然し、その姿を見ても、鯛造は動じる事なくギョンに向かって冷静な口調で自己紹介を行う。
「私の名は、『竜胆園鯛造』と申します。 そして、隣に居る彼女はアビウスと申します」
すると、ギョンはアビウスの顔をジロジロと興味深そうに凝視する……。
「お〜っ! アビウスちゃん可愛いねぇ〜。 でも、オレっちに対してメチャクチャ威嚇してんねぇーッ! ははっ! オレっちの事を殺したくて仕方無いのかなぁ〜?」
ギョンは、おどけながらアビウスに向かってニンマリとした不気味な笑みを浮かべると、その苛つく顔を見たアビウスが舌打ちをしながら呟いた。
「ちっ! ……殺すッ!」
「待て、アビウスさん……。 彼は、とても強い……。 まさか、夢幻旅団の団員と”またしても”会う事になるとはな……」
すると、その鯛造の言葉を聞いたギョンが少しだけ興味を示し始めた……。
「んお? まさかアンタ等、他の夢幻旅団の団員に会った事があるんかぁ〜? え〜? 誰だぁ? 誰と出会ったんだッ!? 早く教えろッ! じゃねぇと殺んぞッ!」
激昂しつつあるギョンに対し、鯛造が冷静に説明をする。
「実はですね? 私は、数年程前に『ジルバー』と言う名の男に会った事が有るのですよ。 おっと因みに、隣に居るアビウスは昔に、『アドムンハ』と言う男にも会った事が有ると仰っていましたね……」
「えぇ、だが。 アドムンハは確か、今は夢幻旅団を”抜けている”みたいだがな……」
すると、鯛造とアビウスの口からジルバーとアドムンハと言う名を聞いたギョンは、ハッとした様な顔を浮かべた。
「ほえ〜ッ! アドムンハって、確かに今はもう夢幻旅団から抜けちゃったけど、今でも夢幻旅団内で語り継げられている、”伝説の殺し屋”じゃないっすかッ!? うわぁ〜、大スターじゃんッ! やべーじゃんッ! オレっちでさえ会った事が無いってのに、羨ましいなぁ〜畜生ッ!」
すると、途端にギョンの目がキラキラと輝き出した。
そして、そのままギョンは饒舌に語り出す……。
「んで、後はジルバーっつー奴だっけ? ソイツは、突然”謎の正義感”に目覚めて、《悪の夢幻旅団》から《正義の英傑旅団》に入ったっつー変わり者っすね。 寧ろ、何で英傑旅団はアイツを採用したんっすかね? 例え”人殺し”でも改心すると今迄の事は棚に上げて”正義側”になれるんっすね! いやぁ~、凄いな正義感って! あっはっは!」
ギョンは、突如として高笑いを上げる……。
すると、鯛造はギョンに対して、とある交渉を行った……。
〈成程……。 どうやら、このギョンと言う男は、ジルバーに対して快く思っていないみたいですな……。 さてと、それではそろそろ”交渉”に移りましょうか……〉
「所でギョンさん。 私達は、此処の御墓の中で眠っているネリアスと言う方に御参りをする為に、態々やって来たのですよ。 なので、貴方の事は”見逃して差し上げる”ので、私達はこのまま御参りをしても宜しいでしょうかね?」
すると、ギョンは頭をポリポリと掻きながら、申し訳無さそうに返答した。
「おお、そうか。 何かすまねぇな……。 オレっちの所為で無関係なアンタ等の事を邪魔しちまったみたいでなぁ〜……。 オーケー、この場は一旦”双方見逃す”と言う事で手打ちとするから、気が済むまで好きに御参りしててなぁ〜。 そもそも、オレっちはもうとっくに、”一仕事終えた後”だからこの場にもう用は無いからなッ! んじゃ、あばよッ!」
そう言うと、ギョンは片手に握り締めていた”シスターの頭部”を後ろにぶん投げながら、呑気に階段の方へと向かって行った……。
すると、黙ってギョンの事を見逃している鯛造に対して、アビウスが声を荒げながら問い質す。
「鯛造さん……ッ! あんな奴を、みすみす見逃すのか……ッ!」
すると、そのアビウスの質問に対して、鯛造が静かに答える。
「まぁ、待てアビウスさん。 あのギョンと言う男は、かなりの手練なのだ……。 まともに相手をしたら、一瞬で狩られるのは私達の方だぞ……」
「そ……んな! わ、我は……これ程までに力を蓄えたと言うのに、まだ足りないと……?」
「そうだな……。 兎に角、今は当初の目的であるネリアスさんの墓の前に行こうか……」
「鯛造さん……。 我は……もっと、強くなりたい……! 強くなれれば、あんな……、あんなクソ野郎の事なんか一瞬で……葬れるッ!」
激昂するアビウスに対して、鯛造が優しく宥める。
「そうですな……アビウスさん。 でも、強くなると言う事はな……。 とっても大変な事なんだ……。 強くなると言う事は力を付ける事だけじゃ無く、精神力に忍耐力……。 それに、”心も強く”なっていかなくちゃいけないんだよ……」
「……心も強く、ですか?」
「えぇ、そうです。 そして、この心が強くなる為には、兎にも角にも、”時間を掛ける事”が必要なのですよ……。 生きてゆく度にこの身に少しずつだけ貯まってゆく”様々な経験”が必要なのだよ……」
鯛造の答えを聞いたアビウスは、徐々に目元に涙が溜まってゆく……。
「我は……。 今までに、辛い経験も……苦しい経験も……楽しい経験も、沢山経験して来ました……。 それなのにッ、これだけの経験を持ってしても……まだ! ……まだッ”足り無い”と言うのか……ッ!?」
「あぁ。 そう言う事です……。 私達は、共にまだまだ”未熟”と言う事なのだ。 ……それよりもアビウスさん。 そろそろネリアスさんの墓に、この御供え物を届けようじゃないか?」
鯛造は、懐に仕舞っているネリアスに手向ける為に用意していた御供え物を、チラッとアビウスに見せ付ける。
「あぁ……。 そうだな……。 確かに、もう危機は向こうから去って行ったからな……。 だが、然し……」
すると、アビウスは、自身が救えなかった者達の亡骸を見ながら考え込んだ。
「……この辺りには、我が救えなかった沢山の骸が散乱している……。 これも、自身の”戒め”として真摯に受け止める事としよう……」
「あぁ、この遣る瀬なさも、一つの経験ですからな……。 さぁ、ネリアスさんの墓を探そうかアビウス……」
「あぁ、鯛造さん……」
そして、アビウスと鯛造は、ネリアスの墓の前に辿り着く……。
――――地下墓地、ネリアスの墓石前――――【現在時刻、14時36分】
「やっと見付けた……。 これがネリアスの墓か……。 本当に、ネリアスは亡くなって仕舞ったのだな……」
ネリアスの名が刻まれている墓石をこの目で見た瞬間に、アビウスと鯛造は本当にネリアスが死んで仕舞ったと言う事を実感した……。
この紛れも無い”事実”に対して、アビウスと鯛造は生きていた頃のネリアスの笑顔を僅かに思い浮かべると、静かに身体を震わせながら目から涙が零れ落ちそうになっていると言う事に気が付いた……。
〈ネリアスさん……。 出来れば、生きている内に再び相見えたかった……〉
すると、アビウスは力無く膝から崩れ落ちると、地面に向かって悔しそうに拳を振り下ろした……。
ドン……ッ。
「くそ……ッ! 何故、こんな事になって仕舞ったのだ……。 一体何故、ネリアスが死ななければならないんだ……ッ」
〈アビウスさん……。 その悔しい気持ちは私も一緒だよ……。 それとネリアスさん……。 ほらこれ、君が好きだった”苺の飴”だよ〉
すると、鯛造は御供え物の『苺の飴』を懐から取り出して、墓の前に静かに置いた。
「今でも、鮮明に覚えているよ……。 何時も、私が街から買って来たこの飴を、皆に一つずつ差し上げようとしている時に……。 一人で勝手に私の懐から盗んでコッソリと食べてましたよね……?」
すると、その鯛造の言葉を聞いたアビウスも、コクコクと頷きながら、そのネリアスの姿を思い浮かべる。
「そう……だな。 其の様子は、しっかりと我も憶えている。 ははっ、何時も無口なネリアスが苺の飴の事になると、途端に饒舌になったり、はしゃいだりするんだよな……」
「おぉ、アビウスも憶えていてくれてたのか……? ふふっ、それも、幼い頃だけだったらまだ良かったんだが、身長が伸びた頃も同じ事をしてたんだよな……。 ネリアスさん……。 君は何時まで経っても変わらなく良い子だったよ」
ネリアスの当時の事を思い浮かべた鯛造の声色は、徐々にか細くなってゆく……。
すると、アビウスもネリアスとの”思い出の品”を墓に納める……。
「えっと他には、この玩具も好きだったよな……? この”ケンダマ”と言う名の異世界から持ち運ばれて来た玩具だ……。 この玩具は、異世界から来た”玩具職人”の方が我等の為に作ってくれた特別な物の一つだったよな……。 ネリアス、此処に置いておくから、これで何時でも好きなだけ遊べるな……」
鯛造とアビウスは、涙ぐみながらネリアスの墓の前で静かに黙祷をした……。
やがて、二人は黙祷をし終えると、目に溜まっている涙を、そっと袖で拭いながら、静かに階段の方へと向かって行く……。
「……取り敢えず、近くの街に向かおうか! 今直ぐにでも、誰かにこの教会ノイリでの”惨劇”を知らせなくては……!」
「この、教会ノイリで起きた”聖職者大量殺人”の犯人を知っているのは我等だけだからな……。 因みに此処からだと、『デイルン』と言う街が一番近いが……。 鯛造さん、これから其処に向かう事とするぞ……!」
「あぁ……。 そうだなアビウスさん……!」
かくして、ネリアスの御墓参りを無事に済ませた二人は、この場所で起きていた惨状を誰かに伝える為に、デイルンと言う街に急いで向かうのであった……。
【現在位置】
【教会ノイリ】
【現在の日時】
【4月7日 14時40分 春】
【アビウス】
【状態】:悲しみ
【装備】:紫色の和服 破滅の剣
【道具】:無し
【スキル】:閃光斬り
【思考】
1:ギョン……我は貴様を絶対に許さない……。
2:いち早く、この事を誰かに伝えねば……。
3:座衛門……すまないが我は、まだ貴方達と出会えそうに無いな……。
【基本方針】:鯛造と共に行動する。教会ノイリの事件を誰かに知らせる。アケミとサヨコに会いたい。座衛門達にも早く会いたい。ギョンをこの手で殺す。
※教会ノイリでの殺人事件の犯人を目撃しました。
【竜胆園鯛造】
【状態】:精神的疲労
【装備】:黒色の和服 スーツケース 信念の剣
【道具】:沢山の和服 財布
【スキル】:指導効果最大
【思考】
1:ネリアスさん……どうか安らかに眠りなさい……。
2:ギョンに教会を襲撃する様に仕向けた国は、一体何処だ……?
3:それにしても、思いの外ギョンは簡単に私達を見逃してくれたな……? 口止めは必要無いと言う判断なのか?
【基本方針】:アビウスと共に行動する。教会ノイリの事件を誰かに知らせる。ギョンに依頼した国を突き止める。アケミとサヨコとジルバーに会いたい。
※教会ノイリでの殺人事件の犯人を目撃しました。
【現在位置】
【教会ノイリ周辺】
【墓荒らしギョン】
【状態】:幸福感
【装備】:血に塗れた水色の服 人斬り斧
【道具】:『セイラ王国』からの依頼書
【スキル】身代わりの幻影【効果】:自分そっくりの幻影を作り出して身代わりにする事が出来る。最大10体まで幻影が出せる。
【思考】
1:ふっふっふー! これで、オレっちにも可愛い嫁が手に入るぞぉー!
2:セイラ王国のお姫様の『サキヤ』と言う可愛い娘と結婚出来るなんて……! いやぁ〜、今年で”36歳”になったオレっちの人生もまだまだ捨てたもんじゃねぇなぁ〜!
3:でも、アビウスっつー娘も可愛かったなぁ〜! ぐへへっ!
【基本方針】:セイラ王国に行って依頼達成の報告をする。セイラ王国のお姫様サキヤと結婚する。結婚しても夢幻旅団を抜けるつもりは無い。
※鯛造とアビウスに教会ノイリでの殺人事件を目撃されました。
【シスター死亡確認】
【神父死亡確認】
【シスター見習い数名死亡確認】
【神父見習い数名死亡確認】




