もう一人の英雄
ほう、英雄を迎えにいくのか。
俺以外にも英雄は居たんだな。
同じ時代の英雄だ。もしかすると有名人かも。いや、地球で有名だった人が召喚されるんだ。有名に違いない。
……あれ?おかしいな。違和感がある。なんか聞いていたのと違う気がする。なんだったかな……確かシルクから聞いていたことだ。えっと……ああ、そうか。
「なあ、シルク。英雄召喚って、前に行われたのは100年以上前じゃなかったか?」
「そうだよ。詳しく言うと127年前だね。」
どういうことだろうか。127年前の英雄が生きてるのか?こっちの世界じゃ普通の事なのだろうか?そう言えば寿命とか聞いた覚えがない。日常会話で出る内容でもないが。
「エンドゥにいらっしゃる英雄様は『最東の賢者』と呼ばれていまして、召喚されたのは300年以上前と聞いてますわ。」
「その頃だと314年前の25回目の召喚だね。フロントガーデンでの英雄召喚。」
127年所じゃなかった。ドンだけ長生きなんだよこっちの世界。後、何処だよフロントガーデン。
「あの、最東の賢者様だけですわ、人の身でそこまで長生きしてらっしゃられているのは。何でも老化を止め寿命を延ばす方法を発見したそうで。」
不老不死ならぬ不老長寿か。仙人みたいなものかな。賢者って、言われるぐらいだ。知識も俺なんかと違って豊富そうだ。
「ソレイユ殿。最東の賢者様が250年程前に魔力溜まりの活用法を開発したのじゃ。ここにある灯りも厨房のコンロも元をたどれば賢者様の発明となる。」
ああ、成る程。これ以上無い専門家だ。この世界での現在のメインとなるシステムを作った人だし。地球だとエジソンみたいな。多分。
「取り敢えずの目的はその『最東の賢者』を迎えに行って、その人と魔力溜まりの調査をすればいいんだな。まあ、俺には護衛位しか出来そうにないが……ん?」
俺は『詠嘆の地』でシルクに見せてもらった地図を思い出す。確かこのカツー王国の位置は左上の方。地球と同じ地図の見方だとすると西の端の方となる。そして最東の賢者。もしかして端から端への大移動か?
この世界で車とかを見たことがない。瓦礫の運搬用に牛や馬ぽい動物が使っていた 、リヤカーを見た位か。トラックとかは多分ない。その辺の技術が無いとなると移動手段は歩き、乗馬、馬車とかになるのではないだろうか?
俺はその辺りの事を王様に聞いてみた。
「ソレイユ殿、これを見てもらえますかな。」
王様が手に持つ紙を広げる。地図だ。シルクの地図ほど精度はないが、見覚えがある形……大陸が描かれている。この形だとこの辺りに……俺が思っていた位置に王様が指を指す。
「ここがカツーの首都ハルカですじゃ。そして……」
王様の指が地図の上を這う。たどり着いたのは大陸の右端にある半島。
「ここが賢者様のいらっしゃる街、ティーツヤーですじゃ。」
やっぱり端から端だ。縮尺が分からんから、どれぐらいの距離かは分からない。しかし大陸と言うぐらいだ。隣近所って訳じゃあるまい。
「因みにどれぐらいの距離なんだ?」
「真っ直ぐ行って3000キロと言われておりますな。」
飛行機で行く距離じゃないか。
馬は乗った事がないし、そもそも乗れる馬がいるかどうか。馬車か?あれって時速どれぐらいだろうか。
「どうやってこの距離を行くんだ?時間制限も有るんだろ。」
「はい、50年前なら世界の危機に間に合わない所でしたわ。」
アクエリアスさんがハルカの側を指す。
「ここはシゲーロ。この国の魔力溜まりがある街の一つ。」
そこから王様とは違うルートで指を這わせる。
「シゲーロからイヌキ、ホースフィールド、フロントガーデン、ハーク、スタン、そしてエンドゥのティーツヤー。この大陸の七か国の七都市を結ぶ線。これが最東の賢者最大の発明と言われる『大陸横断列車』なのです。」
車はないが列車はあった。
いや、聞いてみたら車もあるらしい。それも賢者の発明なのだが、まだ数がない。
「各国の魔力溜まりから魔力溜まりへと鉄道が通っているのです。これを使えば各都市に2日で行けますわ。」
例えばシゲーロからイヌキに2日で行くことができ、そこから乗り換えでホースフィールドに向かう。ただし乗り換えで次に列車に乗るには、手続き等で1日かかる。つまりは2日+1日+2日+1日+2日+1日+2日+1日+2日+1日+2日+1日+2日の20日でティーツヤーに着く事になる。帰りは賢者と各地の魔力溜まりを調べながらになるので、どれぐらいの時間がかかるかは不明だ。
「手段も分かった。で、俺はいつ行けばいい?」
「5日後。旅への準備と国民への英雄様の紹介が終わりましたら、お願い致します。」
次回『シゲーロへ』




