シルクのご飯
「世界が終わる……ねぇ」
俺は食堂で飯を食っていた。この後、第二王女……アクエリアスさんとの面会となっている。王様から聞かされた俺の召喚理由。それを一番詳しく知っているのが、天託を受けたアクエリアスさんだ。天託には俺……と言うか武の英雄を召喚することまで含まれていたらしい。学の無い俺を喚んで世界が終わる原因をどうにかできるものなのかねぇ。殴って済む話なら頑張れると思うが。
まぁいい。話は飯を食ってからだ。飯を食う時はその栄養が、身体の隅々まで行き渡る様に集中しなければ。
そう、シルクのように。
俺の隣に座るシルクを見る。因みに俺は床へ直に座り(椅子が俺の体重に耐えれず壊れるのだ。)、シルクは食堂の椅子に座っている。体格の差もあり目線はほとんど変わらない。
シルクは飯を食っている。
どんぶり飯をスプーンで。
顔が隠れるほど山盛りで。
既に四杯目だ。
この三日間、シルクとは飲食を共にしているが非常によく食う。昔、大食いアイドルとテレビ番組に出演したことがあるが、彼女よりも食う。俺よりも食う。と言うか何か食い物か飲み物があれば、ずっとそれらを口にしている。
今まで何も食べたことがないと話すシルクに、いっぱい食べさせてやりたいとは思ったが、ここまで食べるのはどうなんだろうか?最初はその食べっぷりに気持ち良さも覚えたものだが、今では不安しか沸き上がらない。
本人いわく、「全部魔力にしているから大丈夫だよ。それより、この味ってのが楽しいよ。何もかも少しずつ違うの。お米一粒一粒でさえ違うの。」だとか。あまりにもいい笑顔なので止める事もできなかった。
なお、カツーの主食は米だ。昔に召喚された英雄が伝えたもので、気候も稲作に向いているらしい。最初、ヨーロッパ風な装いでカツ丼を食べている騎士さん達を見たときには違和感だらけだった。箸もキレイに使っていたし。だが、よくよく考えてみればレスラーがそれぞれの衣装のまま飯を食っていた方が違和感しかないので、気にしないことにした。
この食堂の飯は美味いし。米の方が俺に良しだしな。この食堂、カツ丼とかのどんぶり物や、しょうが焼きみたいな日本の大衆食堂に必ずあるものは、全て揃っているのだ。
別にこういう食事しかないわけじゃない。王様と会食を最初の食事で体験したが、そこではフレンチとかイタリアンぽいコースメニューだった。食材も地球のに似ていた。食えないものも無い。隣でシルクは一口毎に目をキラキラさせていた。食後のお茶で「世界が終わる」とか言われてゲンナリもしたが。
今日は牛丼だ。独り暮らしで食器洗浄が面倒だった事もあり、どんぶり物ばかり食っていたが、単純にその味も好きだ。汁が絡んだ米が美味い。なお、どんぶりじゃ小さくて何回もおかわりを必要とするので、調理器具のボールに大盛りで盛ってもらっている。シルクは重たくて持てないのと、色んな味を楽しみたいのでどんぶりで食べている。
「いつもながらよく食べますね、お二人とも」
食器トレイを持ったオーガウさんが向かいの席に座る。オーガウさんは魚フライ定食だ。確か今日のAランチだったな。
「オーガウさん、体は資本だぞ。いっぱい食べなきゃ」
「私にはこれでも多いんですよ」
そう言って魚フライにタルタルソースをつけて食べる。あのあじフライぽいやつには黒いソースだろ……と思うが、アレはこちらにはない。醤油や味噌、マヨネーズはあるのに。そう言えばカレーもないな。これは問題かも知れん。
「それも美味しそう」
どんぶり飯を食べ終わったシルクが、オーガウさんの魚フライを凝視している。あ、おかわりをしに行った。いくら俺達はただで食べれるとはいえ、食材も材料費も城からすれば有限なわけだし、止めるべきか?でもあの嬉しそうなシルクを止めるのは……。
そんな俺を見てオーガウさん。
「大丈夫ですよ。カツーは食料品輸出で成り立っている国です。それこそ売るほど食べる物は有るんですよ。山も海もあり、川や畑からも恵みの食材が。それにシルク嬢は多くを食べますが、一口一口は小さいですし。食べている時間ほど多くの食材が必要でもないみたいです」
言われて見れば俺の食っているボールどんぶり飯と、シルクの食べたどんぶり飯4杯じゃ俺の方が多いか?安心して最後の一口を食べる。
「もっとも、ソレイユ殿のペースでシルク嬢ほど食べ続けられたら、いずれこの国は滅んでしまうでしょうが」
ごもっとも。
「ところで少々お話しが」
味噌汁を飲みながら話す。赤味噌に玉ねぎだ。まだ見ていないが白もミックスもあるとか。すげーぞ、過去の英雄さん。
「ん、何かあったのかな?」
「ええ、例の竜人が目を冷ましました」
次回『世界がヤバい』




