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召喚理由

ガイドゥとの闘いから3日。


俺とシルクはカツー王国で来賓と言う形で寝泊まりさせてもらっていた。ただし、行動できる範囲は城内のみ。これは第二王女の回復を待ってから国民に英雄の紹介をするからだ。竜人とゴブリンとの戦いで国は色々と疲弊した。そこで明るい話題として、国民への希望を大々的に発表をしたいらしい。


もっとも、発表までただ『戦いに勝ちました』だけでは不安が積もるだけなので、英雄召喚に成功し、その英雄が敵を退けたと言う情報は流してあるそうな。


さて、この国。テレビ、パソコン、電話等、現代社会にて必需品だったものは何もない。しかし、俺は現代社会においてもそれらを特に必要にしていなかった。ただ一畳程のスペースもあれば寝て、食べて、筋トレができた。時間潰しと言う考えもほとんどない。時間があれば鍛え、補給し、休んだ。


だから、来賓として生前住んでいた3LDKのマンションよりもでかい部屋をもて余した。因みに生前のマンションは、先輩レスラーが結婚して一戸建てに住むようになったので、引き継いで借りたものだ。ある程度後輩ができると、何だかんだでそれなりのスペースの家が必要となるのだ。入ったばかりの若手に飯を食わせたりな。


別に筋トレだけしていたわけでもない。ガイドゥの攻撃でそこらじゅう穴だらけになった城だ。その復旧の手伝いをさせてもらった。


手持ち無沙汰のボランティア……と言うわけではない。


実戦を経験したあととは言え、まだまだこの体身体のポテンシャルは計り知れない。ガイドゥとの闘いでさえ、結果だけ見れば無傷と四肢粉砕で圧勝だったのだ。だから、出来る限りの限界値を知りたかった。


でだ、瓦礫撤去でどれぐらい持ち上げれるか試してみたのだが……どうもトン単位で瓦礫を持ち上げることが可能だった。正確な数字ではないのは、瓦礫程度じゃ余裕過ぎて、限界はまだまだ見えないからだ。人数人分よりも大きい瓦礫でも、『腕力』だけで持ち上げれるデタラメさには苦笑いしか起こらない。


オーガウさんに岩山が近くにあると聞いたので、今度そこで試そうと思う。


オーガウさん達、近衛兵団の方たちとは仲良くやらしてもらっている。話せる相手が、シルクを除けば彼らと王様がつけた女給さん達ぐらいしかいないとも言えるが。女給さんもシルク相手は兎も角、俺には何処かビビっていて話しかけると……その青ざめた顔に……可愛そうで罪悪感満載にになる。


それと違って近衛兵団の方達は、一緒に瓦礫撤去や同じ釜の飯を食ったりしてお互いの距離は縮まった。徒手空拳での俺の闘い方にも興味があるらしい。色々と質問を受けたので、比較的簡単にできる関節技や投げ技をレクチャーした。護身や暴動鎮圧に必要以上の怪我や殺してしまわないと言うことで好評だった。


「ソレイユ殿。その出で立ちですが、あなたの世界では普通なのですか?言っては何ですが……かなり派手ですね」


瓦礫撤去中、若い騎士さん……ヒーガスさんが話しかけてきた。回りの騎士さん達は『空気読め』という顔をしている。と言うか、呟いていた。聞こえてないと思ってるんだろうな。まさかマスクのライオン耳が、どんな小さな音でも聞き逃さないとは思いもよらないだろう。俺も思わなかった。


「いやいや、俺の格好は特殊だよ。普通はみんなとそれほど変わらない。素材とか若干違うど。」


「ほー。ではソレイユ殿は何故その様な格好を?」


「俺の職業にあった衣装としか言いようがないな。君達が近衛兵団として動くときには鎧を身に付けるのと同じさ」


「するとその覆面も?」


「ああ。これは俺の顔そのものと思ってほしい。前の世界じゃ政治の大事な会議でも許されていたんだよ」


「……凄いですね、ソレイユ殿のいた世界は……それでそのソレイユ殿の職業とはどういったものですか?」


「プロレス……は分からないか。格闘家とか武闘家がその戦いを見せて飯を食っていた。」


これで分かるかな?プロレスで通じていたものをいざ説明しようと思うと案外難しい。


「剣闘士……みたいなものですか?あれは殆どが奴隷ですが」


剣闘士……聞いた事はあるな。コロッセオとかで闘うやつだ、多分。


「だいたいそんな感じかな。それにショー要素を目茶苦茶盛り込んだやつだ。この衣装は自分を誇示するためだな」


「ショー要素だよすると、演劇でより目立つ衣装にする様なものですね。分かりました。ですが、新たな疑問がひとつ」


「何ですか?」


「いえ、何で普段からその衣装を着ているのかと。私達は近衛兵団としては鎧を身に付けます。しかし、今みたいにそれ以外の時は脱ぎますよ?」


「それは簡単だ。俺はこれ以外の服を持ってない」


「……」


いやいや、汚れは自動で落ちて綺麗だよ?




王様とは召喚理由について話をした。


「竜人が理由ではありませぬ」


オーガウさんから聞いていたのは違っていた。


「いや、オーガウが言っていた竜人が『人族の天敵』と言うのは間違っておりませぬ。そしてあの戦い。そのタイミングであの者がそう思ってしまっても仕方がないかと」


俺のとなりにはシルクがいる。おれではこの世界のことに疎いのでアドバイザーとしての参加だ。今は王様自ら煎れたお茶を飲んでいる。お茶は緑茶だった。思いっきり洋風なじいさんの姿の王様が煎れるのはギャップが激しい。シルクはこの味が気に入ったらしい。なにも話さずお茶を飲み続けている。実際、自然な甘味があって旨い。社長の奥さんが煎れてくれたグラム2500円のお茶より旨いと思う。


「竜人と人との戦いはこの世界の住人の問題であり、我らが自らの手で解決すべきな事。それに国が滅びても、民が生き延びればまた国は興りますゆえ。もっともそうならないようにするのが、私共の役目でございますが」


「では、何で俺を?」


「それは……『天託』がありました。その『天託』に従って、ソレイユ殿を英雄召喚したのです」


「『天託』?」


「『天託』はね、『世界維持継続予測システム』からの解析結果だよ。この世界が滅んじゃわないように、世界を検査計測して未来を予測しているの」


「何か凄いこと聞いた気がするがよくわからん。で、その『天託』がなんだって?」


「はい……『天託』によりますと……一年後ほどに起こる日蝕。それと共に世界が終わりまする」

次回『シルクのご飯』

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