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竜人

俺の身を全て覆い尽くすほどの炎。それがすぐそばにまで近づいていた。ぐっ、目の前に太陽が出来たみたいだ。くそ熱い。


「ヤベェっ。」

「マント使ってっ。」


いつも通りのシルクの声。耳元で話したように聞こえた。何かの魔術か。振り向いて確認なんかしない。即座にマントで全身を隠す。シルク特製のマントだ。きっと大丈夫。


炎が接触する。


爆発音。衝撃がマント越しに伝わる。ああ、これが壁を壊していた奴だ。昔の俺だと、この衝撃に耐えれずペチャンコだ。逆に言えば、今の俺なら耐えられる。そして熱はマントがほとんど通さない。チリチリっと来るがそれだけだ。火傷にもならない。反則級だなシルク特製は。


「ほぉ、我の炎弾が全く効かぬか。」


何かを引きずった様な音。それが意味ある音であり、『声』だと言うことに直ぐには気付かなかった。


「なんだ?」


マントに付いたホコリを払いつつ、声のした方を見る。それはやはり大きく空いた壁の穴からだ。


二本足で立つ赤い爬虫類。コメカミの黒い角。衣類はなにも身に付けていない。鎧みたいな鱗に全身が覆われている。特に目立つのは尾。怪獣のしっぽみたいなのが生えている。


「あれは竜人……我々人族の天敵だ。お前が本当に英雄だと言うのなら、姫様はあいつらとの戦いの為に喚んだのだろう。」


団長さんの解説。敵ではないぐらいには認めてくれてるか?

しかし、天敵ときたか。こっちの世界じゃあんなのと戦争をしているのか。


「天敵?何を言っているんだ、角なしが。角も、爪も尾もない下等な角なし共は、全て我らの家畜。天敵など相手としても成り立っておらんわ。」


「じゃぁ、お前は何しに来たんだ?」


「たまたまこの畑……角なし共の言う『国』の側を歩いておったら、十分に実っておってな。たから親父殿への手土産に収穫に来ただけのことよ。」


「そんな理由で国を攻めたと言うのかっ。」


ダンっと団長さんが床を叩く。行き掛けの駄賃として戦争を吹っ掛けられては、やってられない。しかもお手軽に攻められ壊滅状態だ。


「攻めたのではない、収穫だ。しかし手応えもなく、いささかツマランと思っていたのだが、こんな奥に面白そうなものを隠しているとわな。何故出し惜しみする。そんな余裕がお前達にないことぐらいも理解できぬのか?」


「生憎、こっちも今来たばかりなんだ、トカゲさん。しかし、上手いな言葉。声質はひどく耳障りだが。」


「くくく。我の姿を見てなお、そんな口を利けるか。ゴブリンどもでは相手にならんはずだ。角なしだが特別に我が飼ってやろう。見世物として丁度良い。」


「巡業としては有るのかもしれんが、俺個人は客は選びたい所だ……おわっ。」


突如銀色の閃光が竜人へ跳ぶ。団長さんだ。片手突き。速い。さっきのゴブリン達なら3匹は瞬殺出来そうだ。


「なっ……。」


その閃光の様な突きを竜人はたった二本の指で止めていた。剣先を摘まんだ形だ。


「見え見えだ。」


そのまま剣を捻る。それだけで剣が破壊される。そして団長さんの腹部を蹴り、壁まで飛ばす。どれにも力を込めた様子はない。マッチをへし折るように剣を折り、石ころを蹴り飛ばすように団長さんを10メートル以上飛ばす。俺と同等かそれ以上か?


「この角なしは要らぬな。ここで燃えておけ。」


大きく息を吸い込む。魔力の高まり。この感じは赤……火か。だとするとさっきの……。


「団長さんっ。」


俺は飛ばされた団長さんへと駆ける。

同時に吐き出される火球。

くそっ、団長さんは意識がない。

かばうか?

俺にはあの火球は効かない……いや、壁になるには一歩足りない。


「無駄だ間に合わんよ。」


だったら……


マントを腕に絡ませる。これで熱は大丈夫。


一歩届かないが、一手なら届くっ。


「ぬりゃぁぁぁっ!!」


俺は火球を殴り飛ばすっ。軌道は……反らせたっ。これで直撃はない。


後は俺と団長さんをマントで覆った。


弾け飛んだ火球は壁に着弾、大爆発を起こす。……よく考えたら殴ったときに、今のように爆発していたかもしれない。……いや、結果オーライだ……うん。


「面白いな、ますます興味を持った。我はガイドゥ・ギ・ゼレド・ディバウ=ザレバ。大いなるゼレドの氏族だ。お前の名はなんだ?」


なげー名前だな、おい。濁音ばっかりだし。いいだろう、こちらも名乗ろう。『名前を聞く前にそっちが名乗るのが礼儀だ』とか言ってみたかったが、先に名乗られちゃったしな。


脚を前後に開き、腰を少し落とす。両腕はクロスさせ掌は前面に突き出す。


「俺の名はソレイユ。太陽の勇者ソレイユだ。」

次回『受ける』

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