クラス分け
張り出された紙の前に、人だかりができていた。
クラスはSからDまで。
上に行くほど人数は少なく、建物も違うらしい。
(分かりやすいヒエラルキーだな……)
ざわめきの中、カイトの声が響く。
「おい、俺Sクラスだ!」
「よっしゃああ!!」
予想通りすぎて驚きもない。
ユーリもすぐに名前を見つけた。
「……私もカイトと同じSだったわ」
周囲がざわつく。
光属性。その影響だろう。
二人とも嬉しそうだ。
(まあ、あいつらなら当然か)
問題は——
「……あれ?」
自分の名前が、ない。
何度も見直す。
でも、やっぱりない。
「ダン?」
ユーリが不安そうに覗き込む。
そのとき。
「——あなたは、こっち」
聞き覚えのある声。
振り向くと、あの女性教師が立っていた。
にこりと笑う。
「あなたは少し、特別だから」
(またそれかよ……)
教室には、僕のほかに4人。
「あなたたちは少し特別な能力があるの」
ノエル先生は穏やかに言った。
「既存のクラスには当てはまらない——器、ってところかしら」
器。
その言い方に、少しだけ引っかかる。
「形式上はDクラスに所属。でも授業はここで受けるの」
「全部、私が担当するわ」
(全部って……)
「大丈夫。ちゃんと“使えるようにしてあげる”から」
優しい声だった。
——でも、その言葉だけが妙に残った。
「——あなたも別室に呼ばれましたの?」
振り向くと、長い耳の少女。
薄青の髪がさらりと揺れる。
「もしかして……エルフ?」
思わず声が上がる。
「そうですわ。エリーと呼んでくださいまし」
少しだけ距離が近い。
上品だけど、どこか柔らかい。
(……普通に可愛いな)
「で、どうなんですの?」
「ああ、ごめん。僕も別室組」
「やっぱり」
エリーは小さく頷いた。
寮はクラスごとに分かれていた。
上に行くほど豪華。
(露骨すぎるだろ……)
「あなたたちはこっちよ」
ノエル先生に案内されたのは、少し離れた建物だった。
(……隔離じゃないよな、これ)
中は広い。
でも、人が少なすぎる。
「男女一緒の寮ですの……?」
エリーが小さく呟く。
少し頬が赤い。
(……いや、それはちょっと)
思わず想像してしまい——
「変なこと考えてません?」
「考えてないです」
即答した。
たぶんバレてる。
僕の部屋は、エリーの隣だった。
(これは……当たりか?)
外に出ると、ユーリの姿があった。
「ダン!」
駆け寄ってくる。
少し息が上がっている。
「心配してたの」
その顔を見て、少しだけ安心する。
「大丈夫だよ。なんか……変なクラスだけど」
「変?」
説明すると、ユーリは眉をひそめた。
「……気をつけてね」
その一言が、やけに重く感じた。
部屋に戻る。
静かだ。
広すぎるくらいに。
(まあ、いいか)
ベッドに倒れ込む。
考えるのが面倒になってきた。
でも——
頭のどこかで、引っかかっている。
ノエルの言葉。
“特別”
“器”
そして——
(……使えるようにする、か)
その意味を、このときの僕はまだ知らなかった。




