先生
試験官に連れてこられた別室には、すでに一人の女性がいた。
若い。
他の試験官とは違う、柔らかい雰囲気。
「……ふーん。この子がダンね」
そう言いながら、顔を近づけてくる。
近い。
キスされるんじゃないかと思うくらいの距離。
思わず息が止まった。
(いや、近すぎだろ……)
自分でも分かるくらい、耳が熱くなる。
「もう一度検査するけど——この力に心当たりはある?」
何事もなかったかのように、彼女は問いかけてきた。
「両親が火と水を扱うので、どちらかだと思っていました。心当たりは……ありません」
正直に答える。
嘘をつく理由もない。
「そう」
短く頷くと、彼女は先ほどよりも一回り大きな水晶を取り出した。
「じゃあ、これに両手を」
言われるままに手をかざす。
胸の奥に、妙なざわつきが残る。
光が、また揺れた。
さっきと同じ——いや、それ以上に不安定な輝き。
「……やっぱり」
小さく、そう呟く。
その声は、どこか納得しているようにも聞こえた。
「この子は、私が責任を持って教育します」
強面の試験官に向かって、静かに言い切る。
一瞬だけ、部屋の空気が変わった気がした。
けれど次の瞬間には——
「大丈夫よ」
優しく微笑まれる。
その笑顔に、さっきまでの違和感が少しだけ薄れる。
(……なんだ、いい人じゃん)
そう思ってしまった。
部屋を出ると、ユーリとカイトがすぐに駆け寄ってきた。
「大丈夫だった?」
「なんかされてないか?」
二人とも心配そうな顔をしている。
「うん、大丈夫」
正直よく分からなかったが、特に問題はなさそうだった。
「先生がすごくきれいだった」
軽く冗談っぽく言う。
「……心配して損しましたわ」
ユーリが呆れたようにため息をついた。
少し言い過ぎたかもしれない。
「明日のクラス分け、緊張するな」
話題を変える。
「一緒になれるといいね」
カイトが笑う。
ユーリも小さく頷いた。
僕は、二人の顔を見ながら思った。
(……ほんとに、大丈夫なんだよな?)
理由は分からない。
でも、胸の奥に残った違和感だけが——消えなかった。




