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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第九章「目覚めたクッカ」

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第84話 パルタ、エルフになる?

「それで、キンチャもセイナ砦に侵入しようとしてるってことだよな? 作戦はあるのか?」


 アーロは気を取り直して、キンチャに聞く。


「実は、俺は魔王軍内部に協力者を得ることに成功したんだ」


 キンチャは協力者を得るに至った経緯を簡単に説明してくれた。

 キンチャがクッカを助けるために単独でセイナ砦を越える方法を探っていたところ、その協力者に見つかり向こうから声を掛けてきたという。


「さっきはその協力者の手引きでセイナ砦に入る予定だったんだ。もし、二人の了解が得られるなら、その協力者を二人にも紹介したい」とキンチャ。


 ムスタの毛に潜り込んでいたヘルミがその話を聞いて飛び出してきた。


「僕も魔王軍所属の諜報員だ。その協力者とはいったい誰のことを言っているんです?」


 キンチャは急に飛び出してきて喋りだしたヘルミに驚きつつも、質問の答えを返した。


「……鳥族の長老のポッソという魔族だ」


「……」


「知ってる奴か?」


 ヘルミが考える様に丸くなったのでアーロが聞く。


「はい…… 確かにポッソさんなら信用できるでしょう。スム様のやり方に以前から疑問を持ち、苦言を呈してきた方ですから」


 ヘルミの様子にアーロとパルタは頷き、キンチャの申し出を受け入れることにした。

 キンチャは二人の判断にほっとした顔をしてから礼を言った。そして、テントを出てしばらくしてから、腕に茶色いフクロウを乗せて戻って来た。




「お久しぶりです、ポッソさん」とヘルミはポッソに頭を下げた。


「おやおや、キンチャどのが言っていた白いふわふわとはミミ殿のことでしたか。まさか、君が将軍閣下を裏切るとは意外でしたな」


 ポッソは大きな丸い目を細めてヘルミを見ている。フクロウを初めて見たアーロはその表情から、ポッソの気持ちを推し量ることができなかった。


「僕は、クッカ様にもスム様にも幸せになっていただきたいと思っています。今のままではだめだと、僕なりに判断いたしました」


「フォッフォ、考えていることは儂と同じようじゃな。

 おっと、ご挨拶が遅くなってしまいましたな。初めまして、私が鳥族の長老のポッソじゃ。キンチャ殿にも頼んだのじゃが、お二人にもお願いしたい。将軍閣下を倒していただきたいんじゃ」


「理由を伺っても構いませんか?」とパルタが聞く。


 ポッソは少し伏し目がちに「理由はいくつかあるのじゃが、一番は将軍閣下が気の毒でならんのじゃ」と答える。


 ポッソはまた目を細めて事情を話し始めた。


「儂も将軍閣下の『魔大陸を平和な土地にしたい』という想いに賛同し、鳥族が魔王軍に加わること賛同した一羽じゃ。

 しかし、今の『復活の術』や『不老の術』ありきの体制には限界が来ているように感じる。

 儂はもう十分すぎるほど長生きしてしまった…… 疲れてしまったのじゃよ。自分たちの子孫や親しき友人を見送ることがもう辛くて耐えられないんじゃ。

 口にするものは少ないが、儂のように力なく過ごす兵士もかなり増えてきている。

 将軍閣下自身もそうだと儂は考えている。誰かが、これを終わらせなければいけないのじゃ」


「……その、話し合いとかしないんですか? 今の現状に反対な人が多いなら、皆で説得したりはしたんですか?」とアーロが聞く。


「もちろん、何百年も前から申し上げておる。……しかし、閣下は我々を解放してはくださらんのじゃ…… おそらくじゃが、閣下は自ら仲間の命を摘み取るようなことはできなくなっているのだろう」


 ポッソは嘴をカチカチと合わせて音を出した。


「ポッソさんの気持ちは分かりました。クッカを取り戻すことにご協力いただけるのなら、その将軍とやらは俺が討ちましょう」


 パルタは表情を変えずにそう答えた。アーロはパルタが「自分たちが」とは言わずに「俺が」と答えたことが気になって、話に口を挟もうとしたが、パルタはアーロの顔を見て首を横に振った。その顔は「厄介ごとはすべて自分が引き受けるから大丈夫」と言っている気がしてならなかった。


「ありがとうございます。それでは早速セイナ砦侵入作戦決行と参りましょう。

 作戦はこうです。――」


 ポッソは翼を広げながら作戦を説明してくれた。




 * * *




 三人と二匹と一羽は堂々とセイナ砦の門の前まで来ていた。

 一行に気が付いた兵士がポッソに声を掛ける。


「やぁ、ポッソさん、久しぶりだね。そっちのは?」


 兵士が顎で三人を指す。


「見ての通り、猫族とエルフの友人さ。王都に一緒に行く予定があるんじゃ」


 ポッソの作戦とは鳥族が得意とする幻術を使って、キンチャとアーロとパルタの見た目を魔大陸の魔族に変化させるというものだった。


 今アーロの目には、キンチャはオレンジ色の毛の大猫に見えていたし、鏡で確認した自分の見た目も耳が伸びてエルフのようになっていた。


 一つ気がかりがなことがあるとすれば、パルタが耳の伸びたただのひげオヤジにしか見えないことだ。ポッソの話によると、自分の本来の姿からかけ離れた幻術はかけることができないらしい。


 兵士は順番に全員の顔をしげしげと観察した。


「こっちの猫族とこのエルフはいいぞ。……この栗色のエルフは本当にエルフか?」


 アーロは内心かなりビビっていたが、焦りを顔に出さないように作り笑顔を浮かべる。


「どこからどう見てもエルフだろ」


 なぜか当のパルタは自信満々で兵士を睨みつけた。


(やめて、ひげパパ! エルフはそんながん飛ばしたりしない! たぶん!)


 アーロは心の中でパルタに文句を言った。


「エルフってよりか、耳の長いゴリラだな、こりゃあ」


 兵士のその言葉に、一緒に警備をしていた他の兵士も吹き出して笑い出す。

 パルタは怒っているのか、顔を赤くしてプルプルと震えた。


(堪えて! ひげパパ! 堪えて!)


 ひとしきり笑った兵士は笑顔でパルタの背中を叩いて「悪い悪い、通っていいぞ。セイナ砦へようこそ」と言って、歓迎してくれた。


「フォッフォ、リザードマンジョークってやつじゃな」


 ポッソは何も心配していなかったのか余裕そうだったが、アーロは「リザードマンジョークってなに!?」と言いたい気持ちをぐっと抑えた。


 砦の中は街が広がり、外の物々しさとは打って変わってアットホームだった。

 広場の焚火を囲んでリザードマンがダンスをしたり、酒場で酒を飲み交わしたりと、その生活の様子は人間のそれと何ら変わりなかった。


 その一方で兵士と思われる鎧を着たリザードマンたちは、ぐったりと地面に座り込んでいるものがちらほらいるのが目に入ってきた。あれがポッソの話に出てきた「力なく過ごす兵士」の姿なのかもしれないとアーロは思った。


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