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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第九章「目覚めたクッカ」

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第83話 キンチャとの再会

 クッカ救出の旅は紆余曲折ありながら、五年目に突入していた。

 魔大陸にあった町の多くが魔王軍に占拠され、ゆっくり休むこともできずに過ごす五年の旅は過酷としか言いようがなかった。

 旅の途中で逃げ遅れた商人が魔物に襲われそうになっていたのを助け、高級魔道テントを譲ってもらえたのが一行にとっての唯一の救いだった。

 その魔道テントは水道やキッチン、風呂まで付いていたのだ。これがなければ、アーロの心はもっとすさんだものになっていたかもしれない。


 ヘルミの案内で一行がたどり着いたのは高い城壁だった。見える限り城壁をくぐる入口は一つだけ。高い壁の上の見張り台には黒い小型のドラゴンがあくびをしているし、他にもリザードマンだろうか、ワニのような見た目の兵士が巡回しているのが見えた。


「ここが、セイナ砦です。魔王城にたどり着くまでの最難関の関門と言ってもいいでしょう」


「物々しいな……」


「ほんとですね……」


 アーロとパルタは木の陰に隠れながら、砦を観察した。


「魔王城に向かう為にはどうしてもここを通らないと行けません。砦と連なって深い谷があり、そこを渡ることは不可能だからです」


「どこか抜け道はないの?」とアーロ。


「あるわけ無いじゃないですか…… しかし、スム様はここの警備に絶対の自信を持っておりますので、ここを気づかれずに通過する事ができれば大きなアドバンテージとなる事は間違いありません」


「ここは警備の数が圧倒的に多い。メツァ大森林前の戦闘のようにはいかないだろうな」


 パルタはひげを触りながらうなった。


「しばらく、観察してみよう。何かヒントが得られるかもしれない」


 パルタは砦が見えるところに高級魔道テントを広げた。このテントの凄いところは、外からは完全に透明で見えないところだ。しかも、完全防音で、匂いが漏れることも一切ない。ムスタの【隠れ蓑】と違って移動はできないが、これでコボルトなど鼻のいい魔物に見つかる心配は限りなく低くなった。

 テント自体を触られてしまうとバレてしまうので、アーロとパルタで交代で見張りをする必要はあったが、これに入っている間は安心して休むことができた。


 アーロとパルタ、ヘルミにムスタ、皆でテントに入り、ひとまずほっと息を吐いた。




 * * *




 夜も更けてきて、パルタが近くで取ったカモ肉を焼き始めた。その間にアーロはテントの窓から砦を監視する。


 アーロが見張っていると、近くの森の中を動く影を見つけた。


「あれは? 人間?」


 アーロの声で、急いでパルタも見に来る。


「いや、あの動きは獣人だな」


「敵じゃないってことですね。ちょっと声を掛けてきます」


 アーロはテントからこっそりと出て、木の陰に隠れている獣人の肩を叩いた。


「おい」


「わぁ!! て、アーロ!?」


 振り返った獣人は驚いて腰を抜かした。しかもアーロのことを知っているような口ぶりだ。しかしアーロにはこんな姿の獣人の知り合いはいない。


「だれ?」


「俺だよ! キンチャだ」


「えぇ!? キンチャ!? お前もっとこんなちっちゃかっただろ!?」


 アーロは手で、以前のキンチャのサイズ感を表現する。


「何年前の話してんだ! 前に会ったのは十年前だろ。もう十六だから、子ども扱いはやめてくれ。 ……そういうアーロはちょっと老けたな」


「誰が爺だ。まだ二十二だぞ」とアーロは返したが、自分も十六だったころは二十代はかなり大人だと思っていたので、キンチャの言いたいことも分からないこともない。でも、ちょっとだけ腹が立った。


 アーロは立ち話もなんだからと、キンチャをテントの中へ案内した。




「これ、アルヴォカス社製のハイモデルテントじゃないか……」


「これがなかったら、俺は死んでた。断言できる」


 アーロはキンチャにマイホームを自慢した。


 テントに入って来たキンチャの顔を見て、パルタを驚いた顔をした。


「お前オウニの息子だろ? 顔がオウニにそっくりだな。俺はクッカの父のパルタだ。よろしくな」


 パルタとキンチャは握手する。


「初めまして。パルタさんはクッカに似てないですね」


「…………似てるし」


 パルタはクッカと容姿を比べられるのが好きじゃない。必ず似てないと言われるからだ。キンチャの無遠慮な物言いに拗ねてしまったパルタを見て、アーロは慌てて話を変えた。


「そんな事より、キンチャはどうしてこんな所にいるんだ?」


「クッカを助けに来たに決まってるだろ? クッカは俺の嫁、むぐむぐ」


 アーロは慌ててキンチャの口をふさいだ。


「き、キンチャ、その話は止めろ」


(ひげパパの前で、その話をしたら殺されるぞ!)


 アーロはキンチャに目で訴えたが、耳をパタパタさせて、絶対に伝わっていない顔をした。

 アーロはテントの隅にキンチャを引っ張っていき、ひげパパどんなに危険か話して聞かせることにした。


「いいか、キンチャ、クッカの家はちょっと特殊なんだ」


「特殊? どういうこと?」


「クッカのお父さんはクッカを目に入れても痛くないってくらい溺愛してるんだ。だから、クッカが嫁にいく話をするととんでもないことが起こる」


「と、とんでもないこと?――て、どんなこと?」


「お前の大事な尻尾なんか引き抜かれてしまうぞ」


 キンチャはひゅっと息を飲んで、自分の尻尾を抱え込んだ。


「とにかく、あのひげ男は何をするか分からない危険人物だ。絶対にクッカが嫁にいく話はもうしないでくれ。いいな」


 アーロの鬼気迫る眼にキンチャは何かを感じ取ったのか、うんうんと繰り返し頷いてくれた。



「なんか、変なこと話してなかったか?」と戻って来たアーロとキンチャの顔をパルタが目を細めて見る。


「き、気のせいですよ、ひげパパ。それより、キンチャとも情報を共有しましょう」


 アーロは何とかパルタとキンチャのバトルと回避した。


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