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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第九章「目覚めたクッカ」

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第80話 ムスタとの再会

 飛空艇を下りたアーロはイェレと固く握手を交わした。


「私の方でも、後方支援に力を入れさせていただきます。何か困ったことがあれば、いつでも最寄りのカウッパ商会系列店にご相談ください」


「ありがとう、イェレ」


 パルタもイェレと握手しようと手を出した。イェレは港街サタマでパルタに振り回されたのがよっぽど怖かったのか、パルタとはびくびくしながら握手を交わした。


 イェレと別れたアーロとパルタは始まりの町タロの街道を二人で並んで歩いた。どうも以前来た時より、町に活気がないように感じる。


 まっすぐ町を抜けてケト草原に出ようとしたアーロの肩をパルタが掴んで止めた。そこは街役場の前だった。


「先に情報収集だ。なんだか、町の様子がおかしい」


 アーロは逸る気持ちを押さえてパルタに従った。






 街役場に入ると、職員が慌ただしく作業に追われていた。役場内での何か別の業務に追われて、受付の人数もいつもより少ない二名体制で回している。そこに聖女と勇者が列をなしていた。


 パルタは最後尾に並んでいた勇者に声を掛け、本国から戻って来たばかりで、事情を知らない旨を伝えた。


「魔大陸の至る所で、言葉を話す高知能の魔物が確認されて、役所はてんやわんやなんです。勇者や聖女の怪我も相次いでいるらしくて、役場は情報収集や整理に追われているみたいですよ。

ほら、あそこ。掲示板に貼ってあるのが、現在役場で把握できている高知能魔物らしいですよ」


 アーロとパルタは事情を教えてくれた勇者に礼を言ってから、教えてもらった掲示板を見た。

 

 掲示板にはたくさんの張り紙がされていた。鎧を着たカエル、武器を持った猫、ケンタウロスなど、多岐にわたる。どの報告も武器を持った勇者や聖女を狙って攻撃してくることが書かれていた。


 アーロの懐からもぞもぞとヘルミが出てきて、アーロの肩に乗る。


「おそらく、魔王軍がクッカ様を守るために勇者や聖女の排除に動いているのでしょう」とヘルミはアーロの肩でブルブルと毛を震わせながら言った。


 どう動くべきか、アーロはパルタに指示を仰ぐとパルタは腕を組みながら顎に手をやった。


「アーロは魔王軍のやつに顔を見られてるんだったな。見つかると余計に警戒網が強まる可能性もある。できるだけ、魔物との戦闘は避けて隠れて移動する方がいいだろうな……」


 パルタの意見を聞き、ヘルミはブルブルと毛を震わせる。


「パパさん、魔王軍には鳥族という種族で構成された部隊があります。彼らの監視網をすり抜けることは不可能に近いです」


 ヘルミの話によると、鳥族は見た目が普通の鳥と全く一緒の魔族で、幻術や催眠術の類を得意とする種族だと言う。鳥の姿を利用して、魔大陸の至る所に潜伏し、監視の任務に当たっているというのだ。

 ヘルミは自分の毛をもしゃもしゃと動かしながら、身振り手振りを交えて鳥族の説明をした。

 

「そんな! じゃあ、俺たちが魔大陸に来ていることがバレるのも時間の問題ってことか?」


 二人と一匹は頭を抱えた。現時点で、鳥族の監視を搔い潜る方法が全く思い浮かばなかった。





「おや? 銀の勇者様ではないですか?」


 アーロは声を掛けてきた人物を見た。小柄な身長の男性で、髪をきっちり七三分けにしている。そして何よりも特徴的なくるんとしたチョビ髭にアーロは見覚えがあった。


「あ、魔獣屋の…… えっと…… チョビさん!!」


 アーロはチョビさんの長い本名を思い出せなかった。


「はい、もうそれでいいです。いやぁ、商会長から、銀の勇者様と大木斬の勇者様が一緒に魔大陸に来ると連絡を受けて、こうして街役場で探していたのですよ。会えて良かった。

 銀の勇者様からお預かりしていた、スノーゴートのムスタをお返ししたいと思っていたのです。長旅に騎獣は必要不可欠ですからね」


「ムスタがこの町に来てるんですか!? 早く会いたいです!」


 魔獣は本国に連れて帰ることができないため、アーロとクッカは以前の任務を終えた際に、ムスタをカウッパ商会に預けていたのだ。

 結局半年ほどムスタに会えていないアーロは早くムスタに会いたくてうずうずした。


 ケト草原にいると言うので、一向はチョビさんの案内でケト草原まで歩みを進めた。





 ケト草原には見覚えのある赤と白のストライプ柄の大きなテントが立っていた。その周りには何頭かの魔獣が草原に出て草を食んでいる。


 他の魔獣たちと草を食んでいたムスタはアーロがムスタに気が付くより前に気が付き、むくりを頭をあげた。そして一目散にアーロに向かって走って来た。


「ムスタ! 会いたかったぞ!」


 ムスタはアーロの顔に自分の顔を擦りつけた。アーロはムスタの首を撫でてから、ムスタの毛に顔を埋めた。


「チョビさん、ムスタを預かっていただき、ありがとうございました」


 アーロはチョビさんに向き直って礼を言う。チョビさんはここでにやりと笑った。


「ふっふっふ…… 銀の勇者様。ただ預かっていただけだと思わないでください。私、ムスタに新しい技を教えておきました」


「新しい技ですか?」


「ちょっと、手本をお見せしますので、少し下がってください」


 アーロとパルタはムスタから距離を取る。チョビさんはムスタの首に手を当てながら、「ムスタ、【隠れ蓑】」と声を掛けた。

 すると、チョビさんの姿が忽然と消えてしまったので、アーロとパルタは驚いた。


「え!? チョビさんはどこに消えたんですか?!」


「消えてなどいませんよ、銀の勇者様。ムスタ、もういいよ」


 チョビさんが言葉を発すると、さっきチョビさんがいた場所にチョビさんが再び出現したではないか。これには、アーロとパルタも目を見開く。


「これは、ムスタに新しく習得させた【隠れ蓑】という技になります。この技をムスタが使っている時にムスタの体を触っているものは周りから姿を見えなくすることができるのでございます」


「すごい! これで、隠れながら移動ができるようになるんですね!」


「さようでございます。ただし、連続使用は最大一時間。一日に使えるのは三時間が限度でしょう。それ以上は使えません。

 銀の聖女様が攫われたということは、私も商会長から聞き及んでいます。どうか、銀の聖女様をお救いください」


 チョビさんは自分の胸に手を当てて、クッカの無事を祈った。


「チョビさん…… 分かりました。ムスタに新しい技を伝授してくださり、ありがとうございます。必ず、クッカを助け出して、またチョビさんに会いに来ます」


 アーロはチョビさんと握手をしてからムスタに跨った。パルタもアーロの後ろに跨る。


「よし! ムスタ出発だ!」



 チョビさんとムスタのおかげで、意気揚々とケト草原へと出発した一行であったが、この後魔王軍の本当の実力を目の当たりにすることになろうとは露ほども思っていなかった。

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