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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第九章「目覚めたクッカ」

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第79話 アーロとパルタ、空の旅

「やっとここまでたどり着けたな……」


 パルタは手に持った斧を強く握りしめながら、そうつぶやいた。パルタの頭の上には強風仰に仰がれて目を細めているヘルミがくっついている。

 アーロは極度の緊張から嘶くムスタの黒い長毛を撫でて落ち着かせ、パルタの呟きに頷いた。


 アーロとパルタの目の前には、高く切り立った崖がそびえていた。ヘルミの情報によると、この崖を越えた先にクッカがいる魔王城があるらしい。ここまでたどり着くまでに実に六年もの月日が流れてしまった。


 アーロは六年も捕らわれたままでいるクッカの身を案じて、居てもたってもいられない気持ちだったが、ここで焦って魔王軍にバレるようなことがあれば、せっかくここまでたどり着いたことが無駄になってしまうと思い、ぐっと奥歯を噛みしめた。


 アーロの頭の中には、ここにたどり着くまでの六年間が駆け巡る。


 ここにたどり着くまでの道のりは本当に大変な物だった。



 * * *



 旅の支度を済ませて、ヴオリ王国の港街サタマから船に乗ろうとしたアーロとパルタだったが、その時点からすでに問題は発生していた。

 魔大陸からの定期船が戻ってきていなかったのだ。もちろんパルタは港を管理している国の職員に詰め寄った。


「どういうことだ!! なぜ、定期船が来ないんだ!!」


 職員の襟首を掴んで八つ当たりするパルタをアーロは必死に止めた。


「ひげパパ、落ち着いてください! 職員の人に怒っても仕方がないでしょ! まずは事情を聞きましょう!」


 アーロは何とかパルタの手から港の職員を助け出すことに成功した。パルタがいると話が進まない可能性があるので、職員を港の管理室の隅まで連れていき事情を聞く。


「魔大陸側の港のタロから、先日通信が入りました。魔大陸の周りの海に巨大な渦潮が発生して船が出られないそうなんです」


「え!? 大丈夫なんですか!?」


「幸いにも、船が壊れたり、乗組員が怪我をしたりといったことはないようなのですが、完全に魔大陸が封鎖されている状態でして…… 我々としても困っているのですよ」


 今まで、あの海域に渦潮が発生したなんて聞いたことがなかったアーロは、このことがクッカが攫われてしまったことと関係しているような気がしてならなかった。


「……一体どうしたらいいんだ」


 途方に暮れるアーロと港職員の耳にパタパタパタという大きな音が聞こえてきた。

 窓の外を見たパルタが急いで走ってくる。


「アーロ! ちょっと来い!」


「え!? ひげパパ!?」


 パルタに引っ張られて外に出たアーロは目を見開いた。


 空から大きな船が港に向かって飛んで来ていたのだ。船には大きな翼といくつものプロペラが付いていて、ボディにはカウッパ商会のロゴマークがでかでかと描かれている。


「アーロさん! パルタさん!」


 あんぐり口を開ける二人に、船の上から手を振るのは狐目の少年――イェレだった。


 大きな船はゆっくりと海上に着水する。

 船から伸びたタラップを使ってイェレが下りてきた。いまだに事態を呑み込めていない二人の前に立ち、イェレはひらひらと手を振る。


「おーーい、アーロさん、パルタさん。大丈夫ですか?」


「イェレ…… あれはなに……?」となんとかアーロが言葉にした。


「わが商会で開発した新型飛空艇です! すごいでしょ!」


 イェレはカウッパ会長にそっくりのほくほく顔だ。


「完成はだいぶん前にしていたのですが、国から実用の許可がなかなか出なかったんです。今回の海路封鎖でやっと許可が出ました! これで、国内のみならず、魔大陸との人の移動や物流もわが商会が独占できます!」


 どうやらカウッパ商会はまだ儲けるつもりでいるらしい。魔大陸の謎の渦潮も商機ととらえるとは、なんとも商魂たくましい。


「これで、クッカを助けに魔大陸へ渡れるんだな!」


 やっと理解が追い付いたパルタはイェレを抱き上げてぐるぐると回した。あまりの回転の速さにイェレの顔は引きつった。


「ひげパパ、止めてください! それ喜ぶのクッカだけですから!」


 アーロはパルタの手から今度はイェレを助け出した。イェレは怖かったのか小さく震えていたが、何とか気を取り直してアーロとパルタにほほ笑んだ。


「さ、さぁ、早く乗ってください! お二人のことはわが商会が責任を持って魔大陸までお連れします!」



 * * *



 カウッパ商会の飛空艇は本当に早かった。以前使った定期船だと、魔大陸につくまで二週間前後かかったはずだが、イェレの話によると一日あれば到着できるとのことだった。

 そしてアーロが最も気に入ったのは、船酔いを心配しなくても良くなったことだ。飛空艇は波に揺られることがないので、船に比べると圧倒的に揺れが少なかった。


「あぁ…… 飛空艇、最高だな……」


 肩にヘルミを乗せ、甲板で風に仰がれているアーロをそうつぶやいた。


「本当は魔大陸の中もこれで進めれば早いのですが、魔大陸の中は飛行型の魔物も出るとのことで国の許可が出ませんでした。力及ばず、申し訳ないです」


 アーロの横に立つイェレは悔しさで拳を握りしめていた。本当だったら、自分の手でクッカを助けに行きたいはずだ。その気持ちを必死に押さえているのだろう。

 アーロはイェレの背中を叩いた。


「必ずクッカのことを助け出す。イェレはイェレのできることをやればいいんだ」


「はい…… アーロさん、クッカを頼みましたよ」


「任せろ」


 アーロは自分の背中にはクッカの命だけでなく、クッカを思うたくさんの人の願いを背負っていることに気が付き、決意を新たにした。前方には雲の隙間から魔大陸の大地が見え始めていた。



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