第8話 だぼだぼのローブ
大店の二階に上がってすぐのスペースに鎧やローブを着たマネキンがカッコいいポーズをとっていた。
クッカも鎧を着たマネキンと同じポーズをとって、凛々しい顔をしてみた。
(これで、ひげパパみたいにカッコよくなっているだろうか)
ということを真剣に考えていた。
「どうです? 先生、カッコいいですか?」
「プッ、ふふふ。カッコいいよ」
ヘンリクは口と腹を押さえて、大声を出さないように我慢している。
「まぁまぁ、可愛い娘さんですこと! ヘンリクさん、いつの間に子供ができたんだい?」
店の奥から、肩に巻き尺をかけた眼鏡のおばちゃんが出てきた。
「私の娘ではなく、弟子です。
ネウラ、この子が着るのにちょうど良いのを見繕ってください」
「あいよ! 任せときな! さぁさぁ、可愛いお弟子さん。こっちに来て、色々合わせてみましょうね」
おばちゃんはクッカを引っ張って試着室まで連れて行く。素早い動きで、クッカに合わせる装備を数点抱えて持ってきた。
「まだ、ちっちゃいから軽い方がいいよねぇ」
おばちゃんは独り言を言いながら、クッカに装備を当てていく。
「重くてもいいので、カッコいいのにしてください!」
「はいはい」
おばちゃんはクッカの意見を聞いてくれなかった。
おばちゃんが選んだのは白地に赤い糸で袖口に刺繍を施した服だった。おそらくクッカより大きな子が着る服なのであろう。襟がガバガバで袖もかなり長かった。裾に関してはワンピースのような丈だ。
「うん! 可愛いわぁ! 袖が邪魔だから、袖にゴムを入れてあげましょうねぇ。ちょっと待ってね、すぐに直すから」
着たばかりの服を剥ぎ取られ、クッカはシャツ一枚で試着室に取り残された。
しばらくするとおばちゃんが戻ってきた。今度はクッカが着ていた綿の白いシャツを脱がされ、黒のインナーを着せられる。その上からさっきの直したローブを着せた。さっきとは違い、袖の真ん中辺りにゴムが入っているので、長くて邪魔ということはない。ベルスリーブのローブになった。襟はガバガバだったけども、黒のインナーを着ているので、ちょっとおしゃれだ。
「ヘンリクさん、どうだい? 可愛くなっただろ?」
「流石はネウラだ。立派な聖女に見えるよ」
ヘンリクは拍手をしてネウラの技術を褒めたが、クッカは半信半疑だ。
「先生? カッコいいです?」
「か、カッコいいよ」
(なぜちょっと言い淀んだ?)
クッカは鎧を着たマネキンのポーズを再び披露した。
今度はヘンリクは声を出して笑った。
「クッカ! 笑わせないでくれよ!」
「自分はいたって真剣なのですが……」
ヘンリクはクッカの頭を撫でてから抱きかかえた。
「よし。恰好も決まったことだし、次は君のバディの顔でも見に行こうか」




