第7話 クッカ王都で初めての買い物をする
「スゴぉ!! デカぁ!!」
クッカは王都近郊の小高い丘の上から王都を見下ろしていた。王都のあまりの大きさにクッカは語彙力が低下中である。
クッカのそんな様子をヘンリクは口を押さえて笑っていた。
王都は高い城壁に囲まれた広い草原の真ん中に位置する都で、王都の中央には白い大きな城まで建っている。
クッカはエリサが読み聞かせてくれた絵本を思い出していた。
「先生! あのお城には王様がいるの? おひげの生えた?」
「そうですよ」
「王子様もいる?」
「王子はいませんが、王女殿下がいらっしゃいます」
「お姫さま! どんな人?」
「歳はクッカの六つ上ですね。まだ子供ですが、お美しい方ですよ」
「へぇ! 見てみたい!」
「任命式の時に会えますよ。楽しみにしていてください。それではそろそろ行きましょうか」
※
王都に入ると先ずは厩舎にヘンリクの馬を預ける。ヘンリクの馬は国所有の馬らしく、勇者や聖女、引退した元勇者や元聖女も自由に借りて使えるらしい。
クッカは長旅を共にした、馬に別れの挨拶をした。
王都の中はとにかく人でいっぱいだった。クッカのような小さな子供は気が付かれずに踏まれてしまいそうだ。
ヘンリクがクッカを気遣って肩車をしてくれた。ヘンリクの肩の上に座ると人より目線が高くなり、街の中がよく見えた。実家の家とは比べ物にならないくらい高い建物が道沿いにびっしりと立ち並んでいる。
「クッカ、落ちないようにしてくださいね」
クッカが建物の上ばかり見るからバランスが悪かったのだろう。ヘンリクに遠回しに注意された。
「はーーい」
クッカはヘンリクの迷惑にならないように、ヘンリクの頭にがっちりしがみついた。
王都に着いて、ヘンリクが先ず最初にクッカを連れてきたのは、王都の南側に位置する大店だった。店舗と工房が一つの建物の中に入っていて、かなり大きな店構えの武器屋と防具屋が一体となった店だった。
ヘンリクがクッカを降ろして、二人で店の中に入る。店の中には沢山の種類の武器が吊るされていた。
「スゴぉ!」
壮観な眺めに、またもやクッカの語彙力が低下した。クッカは目をきらきらさせながら、武器を見上げた。
「これはこれはヘンリク様。本日はどんな物をお探しですか?」
一人の店員がヘンリクとクッカに気が付き、接客しに来てくれた。どうもヘンリクはこの店の常連らしい。
「クッカ、例の紹介状を出しなさい」
クッカはヘンリクに言われるがままに、ひげパパから持たされた紹介状を店員に渡す。紹介状を見た店員が驚いた顔をした。
「これは! すぐに工房長に見せてきますので、少々お待ちください!」
店員は紹介状を持って店の奥へと消えた。
しばらく待っていると赤毛の髪の大男が店の奥から出てきた。
「よう!ヘンリク!紹介状を見たぞ!
アイツの娘はどこだ?」
大男は小さなクッカが視界に入らないらしい。
クッカはぴょんぴょんとジャンプして、自分の存在をアピールした。ジャンプするたびにぷにぷにのほっぺがバウンドする。
大男はクッカに気がついたのか、しゃがんでクッカの顔をまじまじと観察した。
「お前さんがアイツの娘だぁ!? あんまり似てないな」
大男は顎に手を当てて、首を傾げている。
「クッカはどちらかと言うと母親似ですよ。ヴァサラ」
とヘンリクは、不思議そうにクッカを眺めるヴァサラという大男に説明した。
「アイツに似なくて良かったわい! 女の子だと可哀想だ!」
「私はひげパパみたいになりたい!」
クッカはひげパパを馬鹿にされたと思ったのか、ヴァサラを睨んだ。それを見たヴァサラは豪快に笑った。
「あっはっは! よし、分かったぞ! 父ちゃんに負けない立派な聖女になれるように武器を作ってやるからな! 任せとけ」
ヴァサラはごつごつした大きな手でクッカの頭を撫でた。
「して、この子は何が出来るんだ? ヘンリク」
「得意なのは魔法のようですが、どうも杖なしでも使えるようです。あとは斧術も使えます」
「じゃあ、ひとまず細めの斧でも持たせておくか。最初の武器だから、既成の物を嬢ちゃん用に調整しといてやるよ。一週間かかるが問題ないか?」
「大丈夫です。それでお願いします。請求はいつものように国に出しておいてください」
ヘンリクが慣れた様子でテキパキと注文してくれた。
「分かった。防具も好きに見てってくれ。嬢ちゃんに合うサイズのがあったかな? 学園の生徒用のもいくつかあるから、それなら大丈夫かもしれん」
「ありがとう、見てみるよ。クッカ、おいで。防具は2階だよ」
クッカはヘンリクに手を引かれて店の階段を登る。
ヴァサラを見るとニカッと笑って手を振ってくれたので、クッカもニカッと笑って手を振り返した。




