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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第八章「クッカの長い長い夢」

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第70話 スムの記憶

「クッカ、それは誰だ……?」


「海で拾ったのよ」


「貝拾ったみたいに言わないでくれ」


 クッカは海で拾った男の隣に椅子を持ってきて、寝ている男をじっと眺めている。

 私はそんなクッカの様子を見て眉をひそめてしまった。


「貝なんかよりずっと素敵。ずっと見ていられるかも。人間って、こんなにきれいな生き物なのね」


「……クッカ。この城はクッカの家だけれど、私の家でもあると思っていたが、勝手に人間を連れ帰ってきて何か私に言うことはないのか?」


「うーーん……ごめんね。駄目だった? スムは人間は嫌い?」


「……クッカの好きな物は、なんだって嫌いだ」


「何それ、変なの」


 クッカはこちらを振り返りもせずそう答えた。


「…………」


「怒らないでよ。何が駄目なの? 昔、ミミを拾ってきた時も、他のを拾ってきた時も怒らなかったでしょ?」

 

 私が何も言わなかったので、クッカはその時はじめてこちらを振り返った。


「ミミとその人間はクッカにとって同じか?」


「同じだよ。怪我してたんだもの。ほっとけないでしょ?」


 私は思わずため息をつく。クッカは元々よく怪我をした生き物を拾ってきていたが、今回も同じだとすんなり受け入れることができなかった。


 相手が男だからだろうか。


 自分でも、自分の気持ちがよく分からなかった。


「部屋に鍵はかけてくれ。何か問題を起こされたら困るからな」


「分かったぁ」


 気のない返事を返すクッカが本当に理解しているのか分からず、イライラする。


「…………ミミ、ちょっといいか」


「はい? どうかいたしましたか?」


 私はミミを連れ立って、人間が使っている客室の外へと出た。


「何故クッカがあれを連れて帰ると言った時に反対してくれなかったんだ」


 腕を組み、ミミを睨みつけると、ミミは大きな耳を下げて申し訳なさそうにしている。


「申し訳ありません。スム様がそんなにお怒りになるとは思いませんでした……」


 ミミに当たるのは、悪いか……


「……いや、私も悪かった。クッカが生き物を拾ってくるのは今に始まった事じゃない。ただ、あの人間が何か問題を起こさないかだけが心配なんだ。見張りを頼めるか? ミミ」


「承知いたしました。あの人間から目を離しません!」


 ミミはビシッと敬礼する。


「そうしてくれ。私は妖精族に呼ばれてしばらくここを留守にするから、頼んだぞ」


「クッカ様は連れて行かないのですか?」


「最近クッカは仕事を嫌がるからな。今回は川の治水に関する相談事だし、私だけも事足りるから行ってくるよ」


「そう、ですか……」


 理由は分からなかったが、ミミの声はどこか不満を含んでいるような気がした。


「何か問題でもあるか?」と聞き返してみたが、ミミはプルプルと大きく首を横に振るだけだ。


 私は魔王城の長い螺旋階段を上り、塔の頂上に待たせていたタイヴァスという名前のドラゴンに跨る。アイスブルーの羽毛に覆われたドラゴンで、私の直属の部下の一人だった。


「今日は陛下は一緒ではないのですか?」


「お前もクッカがいないと不満か?」


 さっきのミミの態度を思い出しながら、タイヴァスにそう返した。


「いえ、そういう訳ではございません……」


「なら、文句を言わずに早く飛べ」


 タイヴァスはフウと大きく鼻息を漏らしてから、空へと飛び立った。


 私はクッカのように転移魔法を自在に扱うことが出来なかった。クッカと同じ里の出身で、種族も同じなので全く使えないということはないのだが、使おうと思うと一週間は準備に時間を要するので、他の移動手段を使った方がはるかに効率がいいのだ。


 タイヴァスの背の上で風に仰がれながら、ふとクッカのことを考えてしまう。


 私とクッカは幼馴染だった。

 カノコ族と呼ばれる種族で、男は鹿の角が頭から生える身体的特徴を持つ。魔力量が多く、魔大陸の中でも特に魔法の扱いに長けた種族であった。

 カノコ族は魔大陸の中では珍しく争いを好まない種族で、森の中でひっそりと暮らしていたのだが、そんなカノコ族にも戦争の火の粉は降ってかかった。


 隣の里の小鬼族とトレント族の争いに巻き込まれたのだ。

 小鬼族がトレントを攻撃するために森に火を放ったことで、カノコ族の森にも燃え広がる。

 命辛々涙を流すクッカを連れて逃げ出した時、私は魔大陸から争いを無くし、クッカが平和に暮らせる国に変えようと固く決意した。


 一族の中で最も魔法を得意としていたクッカを大将に担ぎ上げ、魔大陸中の争いに仲介して回った。

 話し合いで折り合いがつくことはほぼなく、最終的にクッカの圧倒的な力で黙らせることが多かった。


 クッカは今まで率先して争いに参加することは一度だってなかった。すべて私がクッカに頼み込んでやってもらっていたのだ。

 私が計画し、クッカが実行に移すを繰り返しているうちに、今のような状態――魔王クッカに将軍のスムという風に周りからは呼ばれるようになった。逆ではないかと思うかもしれないが、魔族にとっては強いものが一番偉いのは常識だった。




「はぁ……」


 タイヴァスの背中の上でため息をはく。


「どうかされましたか?」


「いや…… クッカがまた生き物を拾ってきてな」


「あぁ、いつものことですね。私も卵のうちにクッカ様に拾っていただけて本当に良かったです。今では尊敬するスム将軍の部下として働けるのですから」


 タイヴァスも親が戦争で亡くなり、遺された卵であったのをクッカが拾ってきたのだ。


「今度は何を拾ってきたのですか? また、魔王軍の一員にまで育ちそうですか?」


「……人間だ」


「え……? 今なんと?」


「人間を拾ってきたんだ。全くクッカの行動には驚かされてばかりだ」


 移動の間中、タイヴァスに愚痴を吐き出してしまった。


ごめんなさい!コピペするとこ間違って、78話を投稿してしまいましたm(_ _)m

こっちが正しいやつです。話飛んでしまってすみませんでした!

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