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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第七章「帰国」

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第65話 誕生祝賀パーティー -3-

——時は少し巻き戻り、クッカとイェレが王宮の大広間に着いた頃



「うわぁ…… 凄い人だね」


 王宮の大広間についたクッカはその人の多さに驚いた。


「我が国の貴族、豪商、勇者に聖女。今年活躍した人が全員招待されています」


 イェレは微笑みながら、クッカに今日の招待客について説明した。


「あ! 会長だ!」


 クッカは少し離れた所にカウッパ会長を見つけて手を振った。会長はカウッパ夫人と腕を組み歩いている。会長と夫人もクッカとイェレに気がつき近寄ってきてくれた。


「クッカちゃん、こんばんわ。今日は息子のパートナーを引き受けてくれて、本当にありがとう」


「いえ、私も会長の息子さんにエスコートして頂けて光栄ですわ」


 クッカは営業スマイルとトークで会長と接する。


「もう少しで、王女殿下も入場の予定だから前の方に行って見てきたらいいよ」


「はい、会長。では失礼します」とイェレ。


 イェレはクッカの手を引いて会長と別れた。

 イェレが自分の父親を『会長』と呼ぶので、クッカは不思議に思う。


「会長の事は『パパ』とか『お父さん』って呼んだりしないの?」とクッカ。


「公式の場では『会長』と呼んでいます。仕事では上司にあたりますからね」


「そ、そうなんだ……」

 

 クッカには、イェレとカウッパ会長の関係が異文化過ぎて、ちょっと理解できなかった。

 イェレに手を引かれながら、クッカは周りをきょろきょろと見た。知ってる人が結構いる。風曲の刃のプゥにライン、ボス討伐戦のリーダーだったビオルノもいる。


(あとで挨拶しに行かなきゃ)


「あ、クッカ、殿下が出てきましたよ」


 イェレの声で前を向いたクッカはルノ王女の美しさに目を見開いた。ロイヤルブルーのドレスに身を包んだ王女はまるで絵本の世界から飛び出してきたお姫様のような美しさだった。アーロの手を取り歩く姿は一枚の絵画のようですらある。

 クッカは数日前にイェレに言われた『あなたが彼の結婚相手に選ばれることは万に一つもない筈です』という言葉を思い出した。


 ルノ王女は演台に立ち、堂々と挨拶をしている。クッカは自分と王女の差を感じ、唇を噛んだ。そわそわして勝手に体が動いてしまう。


「クッカ、どうかしましたか?」


 そわそわしているクッカをなだめようとイェレはクッカに声をかけたが、クッカは王女に勝てない悔しさでいてもたってもいられない。


「だって、王女殿下がすごく綺麗だから、私……」


 クッカの目が涙ぐみ、イェレは慌てた。


「あなたは十分に綺麗です。殿下とは年も違いますから、魅力の種類が違うだけではないですか?」とイェレは言ったが、「うぅ、イェレも私がおこちゃまだって言うのね! うぅ、早く大人になりたいよぉ」と言いだし、火に油だった。


 その時、振り子のように揺れていたクッカの頭を後ろから鷲掴みにする人物が現れた——ヘンリクだ。

 クッカはヘンリクからあふれ出す冷気を感じ、ひゅっと息をのんだ。


「クッカ…… 王宮では静かにしていなさいと何回言えば覚えるんだ……」


「ひ!!」


 クッカから短い悲鳴が出る。恐怖で涙もどこかへ引っ込んだ。


「せ、先生…… こんばんは……」


 クッカは引きつった笑顔でヘンリクになんとか挨拶をした。


「パートナーを困らせるんじゃない。今日のお前のパートナーはアーロじゃなくてイェレだろ。お前の態度はパートナーを引き受けてくれたイェレに対して失礼だ」


「はい、大変申し訳ありません……」


 クッカはヘンリクの前でぶるぶると震えている。


「私じゃなくて、イェレに謝りなさい」


 ヘンリクに肩をつかまれ、グイっとイェレの方に向きなおされる。


「イェレ…… ごめんね……」


「いいですよ! 許します! ただし——」


 イェレはにこっと笑ってクッカの手を取り、引き寄せた。


「もうよそ見禁止ですからね。今日は私だけを見てください」


「う、うん……」


 間近に迫った顔でイェレに念を押され、クッカはそれしか返せなかった。


「向こうに軽食があるみたいですから、見てきませんか? クッカ、お腹空いたでしょ?」


「うん、ありがとう、行く」


 クッカとイェレが仲良く手を繋いで移動する様子を見てヘンリクはやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。隣でラシットはヘンリクを見てくすくすと笑っている。


「あれ? 先生、クッカはどこに行きました?」


 そこにクッカを探しているアーロが人ごみをかき分けて現れたもんだから、ヘンリクはまた眉間に皺を寄せた。


「全く、お前たちは…… クッカはイェレの相手で忙しいからもう探すな」とヘンリクは厳しい口調で釘を刺した。


「そうよ、アーロ。それに、五年ぶりに会った恩師への挨拶がまだなんじゃない?」


「あぁ、ラシット先生、お久しぶりです。背、縮みました?」


「あなたの背が伸びたのよ!」


 アーロはクッカのことが気になり、きょろきょろしながらラシットに適当な返事をした。するとまたヘンリクから冷気が漏れ出てきたので、アーロは慌てて姿勢を正す。


「ラシット先生のおかげで、無事に任務を終えることができました!」


「よろしい。頑張りましたね」


 ラシットはアーロの頭を撫でたいらしく、背伸びをして手をのばすので、アーロはラシットの手が届くところまで自分の頭を下げた。そこまでして、やっとヘンリクの冷気が収まったので、アーロはほっとする。


「お! いたいた! アーロ! 元気にしてたか?」


「プゥさんにラインさん! お久しぶりです。むちゃくちゃ元気です!」


 アーロのところにはその後知り合いが代わる代わる集まってきて、アーロは完全にクッカを見失ってしまうのであった。



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