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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第六章「 迷宮都市」

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第52話 脱出不可能!?絶対絶命のピンチ!!

 ヘンリクが三体の甲冑の動きを止めようと、甲冑の足を凍らせたが、甲冑が足踏みすると足の氷が砕け散ってしまった。


 剣を持った甲冑がどしんどしんと音を立てて、剣を構えて走ってくる。

 ラインが素早く弓を構え、兜の隙間目掛けて矢を放つ。ラインの放った矢は兜の目の部分吸い込まれるように刺さったが、甲冑は動きを止める様子はないし、痛がる素振りも見せなかった。


「どうやら、中に巨人が入ってる訳じゃなさそうね」


「えぇ!? じゃあどうやって動いてるの!!??」


 甲冑が剣を横に薙ぎ払うように振ってきたので、全員で何とか避ける。誰もクッカの質問に答える余裕がない。


 風曲の二人は左側に避け、銀の彗星とヘンリクは右側に避けた。


 続いて杖を持っている甲冑の杖から、火の玉が連続で放たれた。クッカを目掛けて飛んで来たので、防御魔法を展開し、何とか防ぐ事ができたが周りの空気まで燃えるように熱くなり、大量の汗が一気に噴き出す。


「こっちで敵の注意を引き付ける!! 奴らの弱点を探してくれ!!」


 プウはそういうと自分の小型盾に剣を打ち付けて音を出し、ラインは三本の矢を一緒につがえて剣を持つ甲冑に降らせ撃ちをした。

 剣を構えた甲冑と杖を構えた甲冑の視線が風曲の二人に移り、二体は走る二人を追いかけ始めた。


 ここで、アーロはあることに気が付く。


「盾を持っている奴が動かないですね」


「攻撃してみよう。私が頭部を狙うから、アーロは中段、クッカは足元を狙ってみてくれ」


「「了解!」」


 ヘンリクの氷の槍が盾の甲冑の頭部、トゥリチットゥの火球が盾に命中する。クッカはひげパパ直伝の『大木断』を甲冑の足首に叩き込んだ。

 魔法は全くダメージが入らず、クッカの渾身の一撃も足首の金属を少し凹ませることしかできなかった。


 しかし、甲冑は足元をちょろちょろするクッカが嫌なようで、盾を使ってクッカを追い払おうと振り回してくる。

 クッカはバックステップで距離を取り、敵のシールドバッシュを何とか避けた。


「なんだか、足元に近寄られたくないみたいです!」


「了解! クッカは引き続き足元に弱点がないか探してくれ! アーロはクッカのフォローだ!」


 ヘンリクの氷とトゥリチットゥの火球が甲冑の足を集中して攻撃する。甲冑は大きな盾を使い足元を庇っているようだ。


 アーロとキヴィがクッカと合流したころ、クッカは甲冑の足元に赤黒い何かで描かれた魔方陣があることに気が付いた。


「見つけた! きっとあれだよ!」

「クッカ、まて!!」


 アーロが止めるのも気にせずにクッカは甲冑の足元にある魔方陣まで走って飛び乗った。

 甲冑はクッカを蹴り飛ばそうと脚を払ったが、その攻撃が当たる前にクッカは別の場所に飛ばされたのか消えてしまった。


「クッカ!!!」


 アーロも甲冑の足元の魔方陣に向かって走った。甲冑はさすがに二人目は通さないと思ったのかアーロに向かって蹴りを放ったが、キヴィがそれを受け止め、アーロはスライディングで魔方陣の上に乗った。キヴィが耐えられるダメージ量を超えてしまったのか、金の光の粒になって消え、アーロもなんとか転移に成功しその場から消えた。





 クッカとアーロが転移した先は壁が緑色に輝く密室の部屋だった。部屋の中央には長くて黒い禍々しい杖を構えたリッチが一体立っていた。


「アーロ、こいつが甲冑たちを動かしてたんだよ! 二人で倒そう!!」


 クッカがリッチを睨みつけると、リッチは黒いフードの内側から緑色に光る眼を覗かせ甲高い声を上げた。


 キェェェェェ!!!!


 アーロが前に出た。精霊たちがいない状況ではアーロが前衛でクッカが後衛になることは、今までにも何度かあったシチュエーションだった。


 アーロが双剣でリッチに攻撃するが、リッチはするりと逃げ出し宙を舞う。

 クッカが水魔法で水の刃をいくつか飛ばすが、それもひょいひょいと躱されてしまった。


 リッチは杖の先から緑色の炎を出し、アーロを狙った。アーロほとんど避けたが、炎の先が少しだけアーロの太ももを掠った。


「ぐあぁぁぁぁ!!」


 アーロは叫び声をあげて倒れた。少しだけしか当たらなかった炎が太ももに引火してしまったのだ。火を消そうと腕で叩いてみたが今度は腕にも燃え広がり消えない。どうやら一度ついたら消えない火のようだ。


「アーロ!!!!」


 クッカが悲痛な叫びをあげたのを見て、アーロは「逃げろ、クッカ……」とだけつぶやいて気を失ってしまった。


「あぁ……」


 クッカは頭が呆然とした。心臓がドクンドクンと大きく脈打ち、アーロが傷付けられたことへの怒りで頭に血が上るのを感じた。


 クッカの緑の瞳が金色に色を変えた。


 クッカが指をパチンと鳴らすとリッチの周りに丸い防御魔法が展開され、リッチが閉じ込められる。リッチはその閉じ込められた空間から逃げ出そうと杖で叩いてみたり、魔法を放ってみたりと抵抗したが、クッカの防御魔法はびくともしなかった。


「リッチ…… お前も随分偉くなったみたいじゃないか…… かつての主を忘れたのか?」


 クッカのその声で初めてリッチはクッカの目を見た。クッカの目を見るとリッチは震えあがり、杖を捨てた。杖を捨てると、アーロについていた緑色の炎も消えた。

 リッチの様子を見てクッカが防御魔法を解くと、リッチ大きな体を極力小さくたたみ、クッカの前に跪いた。


『陛下、お許しください…… まさか、あなた様がこのような小さなお姿に変わっていたとは、全く気が付かず』

「言い訳は聞きたくない。私のアーロが怪我をした。お前は取返しのつかない過ちを犯したのだ」

『ああ! どうかお慈悲を!!』


 リッチの命乞いを無視して、クッカは指先に白い光の玉を出した。そこから白い光線が出て瞬時にリッチの額を貫いた。

 目の光が消え、リッチはばたりとその場に倒れた。少しずつ黒い塵となって消え、そこには何も残らなかった。


 クッカはアーロに駆け寄り、火傷でただれた箇所に息を吹きかけた。アーロの火傷はまるで何事もなかったかのように治った。


「あれ……? なにこれ……」


 クッカは自分の中に知らないもう一人の人物がいることにこの時初めて気が付いた。さっきはまるで、自分の体がそれに奪われてしまったかのように言うことを聞かず、勝手に動いて勝手にしゃべっていたのだ。


「ぐ!!」


 自分のもう一つの人格ともいえる存在のことを考えるとクッカは頭が割れるほど痛くなり、気を失ってその場に倒れてしまった。

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