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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第六章「 迷宮都市」

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第51話 抜け道

「えええええ!!」

「クッカ離れて!」


 横にスライドしていく石壁に仰天していたクッカだったが、何かが出てくることを心配したアーロがすぐにクッカを抱き上げて壁から距離を取った。


 壁の向こう側から出てきたのは小さな部屋だった。明かりも窓もない部屋の床に金色に輝く魔方陣が姿を現した。淡い金色の光は発見者を祝福しているようにも見えた。


「こんなところに隠し部屋があるだなんて、今まで報告されていないわ」


「間違いないのか?」


 驚きの声を上げたラインにヘンリクが確認する。ラインは静かに頷いた。


「え! もしかして、お手柄?」


 わくわくした顔で大人たちを見渡すが、大人たちは腕を組んで考えこんでいるので、クッカは喜ぶに喜べない。


「もう! どういうことなのか私にも教えて!」


「罠かもしれない……」


 クッカの質問に答えたのはプウだった。


「わな?」


「ああ、そうだ。今までもこのダンジョンは転移魔方陣の行きついた先が罠の部屋だったことが何度かあったんだ」


「それはどうやって確かめるのです?」


「行ってみないとわからない」


「罠かもしれないのに?」


 プウは眉間にしわを寄せた顔で頷いた。


「そりゃ困ったねぇ」


 今度はクッカも大人たちと一緒に頭をひねった。


「ふっふっふ…… 皆さん、俺のことを忘れているようですね」


 アーロが得意な顔で腰に手を当てた。するとアーロの隣キヴィとトゥリチットゥがパット姿を現した。二体とも、アーロと同じ、腰に手を当てたポーズをしている。


「うちの精霊がこの先を見てきてくれますよ!」


「「「おおぉぉ!」」」


 大人たちは拍手喝采で、アーロをほめた。


「精霊は怪我したりしないの?」


「精霊は怪我をしないぞ。一定以上のダメージを受けると精霊界に帰る。精霊界に帰ってしまうと回復に丸一日かかるって感じかな。クッカ、何年一緒にやってるんだ?」


 ――そう言われれば、キヴィもトゥリチットゥも怪我をしているところを見たことがない。


「キヴィもトゥリチットゥもすっごーーい!!」


 クッカが二体を褒めたたえると二体はより一層ふんぞり返った。


「よし、じゃあキヴィ、トゥリチットゥ、見てきて」


 アーロの命令で二体が金色に輝く魔方陣の上に乗ると、二体の精霊は光に包まれてから消えた。


 アーロは目を閉じながら、両手を前に出して変な動きをしている。


「何してんの?」


「トゥリチットゥの視界を共有してるんだ。集中したいから、ちょっと話しかけないで」


 アーロの奇怪な動きはしばらく続いた。クッカはアーロの後ろから膝カックンをしたくなってしまって、そろりそろりとアーロの後ろに回ったが、クッカの怪しい動きに気が付いたヘンリクに阻止されてしまった。


「あ! 扉がありますよ!」


「ほんとか!? どんな扉だ?」


 アーロの発見にプウがすぐに質問した。


「かなり大きな青銅の扉みたいですね。精霊たちの力だけでは開きそうにありません」


「もしかして、目的のボス部屋では?」


 クッカは大発見の予感にわくわくが止まらない。


「よし、分かった。アーロ、一度精霊を呼び戻してくれ」


 アーロが目を開けると、キヴィとトゥリチットゥがアーロの隣に戻ってきた。


 プウは腕を組み悩んでいるようだった。


「プウ。子供たちのことは私が守るから大丈夫だ。迷わなくていい」


 ヘンリクは笑顔でプウの肩を叩いた。

 アーロは未だにヘンリクに子供として見られていたことを知り、複雑な心境だった。


「わかりました。ヘンリクさんと銀の彗星の二人を信じます。行こう!」


「そうこなくっちゃ!」


 クッカは意気揚々を斧を抜き、くるくると回してから構えた。全員が武器を構えてから、魔方陣の上に乗った。すると、先ほどの精霊たちと同じように光に包まれた。

 クッカはまぶしさで目を閉じ、開けた時にはさっきとは全く違く光景が目の前に広がっていた。

 ヘンリクはすぐに杖の先から光の玉を天井に向かって打ち上げた。


「わぁ! ほんとに違う場所に来ちゃったよ」


 転移した先は長い廊下のような場所だった。窓も明かりもないので空気が淀んでいる。ヘンリクが出した光源だけではこの廊下の隅々まで照らすことは不可能だった。天井が高いようで、一行の頭上には深い闇が広がっていた。


「行くぞ」


 プウを先頭にゆっくりと前へと進んでいく。


 しばらく歩くと、アーロが伝えてくれていた通りの青銅の大きな扉が一同の前に現れた。


「ボス部屋か確認しよう。みんな、手を貸してくれ」


「痛!」


 全員で扉を押そうとしたとき、ヘルミがクッカの肩に爪を立てた。何かにおびえているのか、ぶるぶると震えながら全身の毛を逆立てている。


「どうした?」


 プウがすぐにクッカの異変を確認する。


「ヘルミがすごく怖がってるの」


 クッカはヘルミを落ち着かせるためにヘルミの背中を撫でた。


「動物が本能的に怯えるってことは本当にボス部屋なのかもしれない。確認してみよう。少しだけ覗いたら、すぐに扉を閉めるんだ。いいな?」


 プウの問いかけに全員が強く頷いた。


「行くぞ、せーーの!」


 プウの合図で、全員で重い扉を押す。扉はゆっくりと動き、中の様子を覗くことができた。

 扉の奥の部屋は紫色の不気味な炎の松明がいくつも灯されている部屋だった。部屋の中央には何かわからないが黒い大きな靄のようなものが動いている。


 黒い靄がぐるんとこちらに振り返った。振り返ると黒い靄の真ん中には大きな目玉が浮かんでいた。クッカは目玉と目があった気がした。


 すると、目玉は紫色の瞳を光らせ、力をためているようなそぶりを見せた。


「やばい! 扉から、手を放せ!」


 プウの合図で一同が手を離すと扉はすぐにしまったが、ヴォン!!という大きな音と衝撃が扉から伝わってきた。どんな攻撃だったのかわからなかったが、もし当たっていたらひとたまりもなかったであろう。


「隊長、さっきのなに?」


 クッカはさっき目があった不気味な目玉が忘れられず、冷や汗をかいている。


「おそらくボスだろう…… とうとう見つけたんだ。俺たちの手でな」


 プウも額に汗をかきながらも微笑んで言った。クッカは底知れぬ達成感を感じ、心臓がばくばくと早く脈打つのを感じた。


 キィィ!!!


 クッカの肩にしがみついていたヘルミが悲鳴にも似た鳴き声を上げた。


 さっき歩いてきた廊下を振り返ると、そこには人間の三倍の大きさはあろうかという巨大な甲冑が三体武器を構えて立っていた。それぞれ盾、剣、杖を構えて今にも襲い掛かってきそうだ。


「どうやら、すんなり帰してくれる気はないらしいな」


 ヘンリクは杖を構えて、不敵な笑みを浮かべてそう言った。


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