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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第六章「 迷宮都市」

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第48話 兄姉との再会

「うわ! デカい騎獣だな……」


 とある冒険者パーティが一仕事終えて街に帰ろうとしていた時、大きな黒い騎獣が颯爽と前を横切っていった。騎獣の上にはこの辺では見かけたことのない三人組が乗っていた。


「あれって、今話題の銀の彗星じゃないか!? 今週の『魔大陸冒険誌』で見たぞ。ヴオリ王国出身のバディだっていう——」


「え!!!! 今のが銀の彗星!!?? まじかよ、サインでも貰っておけばよかったかな」




 * * *



 クッカはふふんと鼻歌を歌うように笑った。


「どうしたんだ? クッカ」


 当初の魔獣屋の予想に反して大きくなったムスタに跨ったアーロは、自分の前に乗っているクッカの顔を覗き込んで聞いた。


「やっと迷宮都市クルホに着いたんだなって思うと感慨深くてね」


 とクッカは答える。


 クッカとアーロとヘンリクは、魔大陸の至る所を転々とし、任期も残り半年を残すのみとなっていた。

 年齢も上がり、クッカが10歳でアーロが17歳である。アーロはすっかり背が伸びて、ヘンリクより背が高くなっていたし、クッカも五歳の頃から比べると格段に大きくなっていた。

 クッカのほっぺのプニプニはまだ健在であったが、最近ではいつまでも子供っぽい顔なことがクッカの悩みの一つになっていた。

 勇者と聖女の任務に関してはランクもぐんぐん上がり、二人はとうとうCランク——つまり上位30組の中に食い込むまで成長していた。


 一行はヘンリクの勧めで、最後の半年は初めてのダンジョン攻略に挑戦することにしていた。その為、まだ攻略されていないダンジョンがある迷宮都市クルホを目指していたのだ。

 迷宮都市クルホは謂わば、魔大陸攻略の最前線――世界中の冒険者たちが、この土地の権利を得る為にしのぎを削っている場所であった。


「二人とも、この五年間、本当によく頑張った。自信を持ってダンジョン攻略に励みなさい」


「「はい!」」


 クッカとアーロは自信と期待を胸に、新天地の迷宮都市クルホに向けてムスタを走らせた。ムスタの頭の上には白いふわふわヘルミも風に仰がれながら前方を見据えていた。




 




 山を登りきり、下を見下ろすとそこには大きな街が広がっていた。

 魔大陸を探索していた中で一番大きな街であることは間違いないだろう。町の中央に大きな穴がぽっかりと開いている。


「二人とも、あそこに見えるのが迷宮都市クルホだ。中央に空いている穴が現在攻略中のダンジョンだ」


 クッカは目を細めて、中央の穴を凝視したが、ここからはただの大きな穴にしか見えない。


「周りの都市部は5カ国の連合攻略隊が攻略したんですよね? 先生もその時のメンバーだったと本で読みました」


 アーロは目を輝かせながらヘンリクに質問した。


「もう10年近く前の話だよ。クッカの父親も同じ隊のメンバーだったんだぞ」


「ひげパパ、かっこいい!!」


 クッカは若き日のひげパパを想像して大興奮だ。


「都市部を攻略してから10年経つが、中央部分は未だにダンジョンボスの姿すら確認されていない。それだけ攻略が難航しているダンジョンだ。気を引き締めていこう」


 一行はいよいよ迷宮都市クルホへと足を踏み入れた。



 



 ムスタを街はずれの厩舎に預けた一行は、ヴオリ王国の町役場に入った。旅の道中で入手した魔石や素材を納品するためだ。


 クルホの街役場は他の役場よりも大きく、中は勇者や聖女でごった返していた。大きな掲示板には『スケルトンメイジの杖、買取価格上昇中』などの情報が張り紙になって貼られていた。


 他の人を避けながら進んでいくと長い黒髪の聖女がアーロの顔を見て声をかけてきた。


「あっれぇ、もしかしてアーロじゃない?」


「姉さん…… 兄さん……」


「え! 姉さん、兄さん!?」

 

 クッカはアーロの声で振り返り、驚きの声をあげた。

 声をかけてきたのは、黒髪にアーロと同じココア色の瞳の美女だった。美女の隣に立つ男もそっくりの見た目で兄妹である事が一目で分かる容姿だった。

 心なしかアーロが震えている気がして、クッカは不安になった。


「こないだお前の事を『魔大陸冒険誌』で読んだぞ。随分活躍してるらしいじゃないか。『銀の勇者』とか言われて持て囃されて、ちょっと調子に乗ってるんじゃないか?」


 黒髪の男の方が歪んだ笑顔でそう言った。


「お前は所詮俺たちの出涸らしなんだよ。どうせこれ以上大した功績を残す事なんかできないんだから、諦めて大人しくしていたらどうだ?」


 アーロは何も言い返さなかった。額に汗をかき、ただただその時間が過ぎ去るのをじっと我慢しているようにクッカには見えた。


 クッカがアーロと黒髪の兄妹を交互にキョロキョロと見る。

 そんなクッカの様子を見て、黒髪の男の方が鼻で笑った。


「随分とかわいらしいバディじゃないか。まるで子供のお守りだな! 昔からちっちゃい精霊ばかり連れて歩いていたお前にぴったりのバディだ」


 黒髪の兄妹は二人で声を上げて笑った。


「黙って聞いてれば!」


(よし、頭頂部だけ斧でハゲにして、街を歩けなくしてやろう)


 クッカはアーロの事を馬鹿にする黒髪兄妹にいい加減に腹が立ち、背中の斧に手を伸ばしたが、アーロがクッカの前に出て、それを制した。


 ここではじめてアーロは兄妹の事を鋭い眼光で睨んだ。


「……俺のことを馬鹿にするのは構わない、けどクッカのことまで馬鹿にするのは絶対に許せない。早くどこかへ消えろ。俺も昔のままじゃないんだから」


 アーロの横にキヴィとトゥリチットゥが姿を現した。金色の光を放つ大きな精霊を見て、兄妹は一歩後ろに下がった。


「行こ、兄さん。アーロの相手するだけ時間の無駄だよ」


「あ、あぁそうだな…… アーロ、言っておくが調子に乗るのもここまでにしておけ! 俺たちはクルホのダンジョンでボス部屋に続くと思われる通路を見つけたんだ。先にダンジョンを攻略して、国の英雄になるのは俺たちの方なんだからな!」


 そう言い残すと黒髪の兄妹は街役場を出ていった。


(次、馬鹿にしてきたら、迷わず頭頂部ハゲにしてやる)


 クッカはアーロの横からひょっこり顔を出して、兄妹にあっかんべをした。


「随分と兄妹と仲が悪いんだな……」


 ヘンリクは心配そうにアーロに声をかけた。


「……はい。ご迷惑おかけしました」


「別に迷惑だなんて思ってないよ。あんなの気にするな。私はお前の血の滲むような努力を知っている」


 ヘンリクは笑顔でアーロの背中を叩いた。


「ありがとう——ございます」


 アーロはヘンリクの優しさに目が潤み、言葉が詰まった。


「私もいるよ!」


 クッカはアーロの顔を見上げて、ぴょんぴょんとジャンプした。

 アーロはフッと笑みをこぼした。


「あぁ、頼りにしてるよ、クッカ」


「違う違う!」


 クッカの言いたい事が分からずにアーロは首を傾げた。


「兄妹なら、私がいるでしょってこと! 前にアーロが言ってくれたじゃん。『バディで、妹で、友達だ』って。アーロの妹は私! 私のお兄ちゃんはアーロ! それで十分でしょ!」


 クッカはアーロにニカッと微笑んだ。




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