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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第五章「メツァ大森林」

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第47話 ヘンリク 対 クロアークとサンマッコ

 ヘンリクは魔法使いだが、一人で戦うすべを心得ていた。


 一般的な魔法使いは呪文の詠唱時間が大きな隙となる。そのため、動きの速い敵とは相性が良くない傾向にあるが、ヘンリクにはそれを補って余りある経験があった。


 ヘンリクは黒いカエルのクロアークと緑のカエルのサンマッコに距離を詰められる前に自分の周りの地面、半径10m程を凍らせた。

 いつの間にか凍っていた地面でつるっと足を滑らせそうになった二体であったが、何とか持ちこたえてその場に止まることがことができた。二体の足に力が入る。


「どうした? これでおしまいかい?」


 ヘンリクは微笑みながら、カエル二体に氷の矢を放った。寸でのところでよけて、クロアークとサンマッコは氷の外へ脱出する。


「サンマッコ! 上だ!」


 クロアークが指示を出し、サンマッコが近くの民家の屋根に飛び上がって上る。


 サンマッコは頬を大きく膨らませて、口から緑の液体をヘンリクめがけて吹き出した。

 ヘンリクは自分の前に氷の壁を出して、液体を防ぐが液体によって氷が見る見るうちに溶かされてしまった。どうやら、毒か酸性の液体らしい。サンマッコは次々とは口から緑の液体をヘンリク目掛けて連射してくる。ヘンリクはそのたびに氷の壁を作って防がなければいけなかった。


「もらった!!」


 ヘンリクがサンマッコに気を取られているうちに、クロアークがヘンリクの背後へと回り込み、民家の壁を蹴ってヘンリクへ向かって飛んできた。カエルの跳躍力を使い氷の地面を踏まずにヘンリクまでの距離を一気に詰める作戦だった。


 クロアークはヘンリクに向けて剣を振り下ろしニヤリと笑ったが、ヘンリクの崩れない笑顔を見て一瞬嫌な考えが頭をかすめた。


「一匹おしまい」


 クロアークの腹には地面から生えた大きな氷の針が突き刺さっていた。どうやら、ヘンリクは最初からこうなることを予想して罠を張っていたらしい。


「不覚…… お主、名前を聞かせてくれぬか……」


「ヘンリクだ」


「覚えておこう…… 次は負けない……」


 クロアークはニヤリと笑いながら、黒い塵となって消えた。


「クロアーク隊長!!! おのれ!!」


 サンマッコは屋根の上からヘンリクに飛びかかろうと脚を縮めたが、そこでやっと自分の足が動かなくなっていることに気が付いた。地面の氷が民家の壁を伝い、屋根の上のサンマッコの足を氷漬けにしていたのだ。


 ヘンリクは動けなくなったサンマッコに氷の矢を浴びせた。サンマッコもクロアーク同様に黒い塵となって消えた。


「さて、クッカとアーロはどれくらい片付けたかな」




 * * *




 大量のカエルたちに囲まれていたクッカとアーロであったが、力を合わせて多くのカエルを倒すことに成功していた。


 生き残った少数のカエルがクッカとアーロに恐れを出したのか、にじりにじりと後退りを始めた。


「お! あと少しだね。ちょうど良かった」


 ヘンリクが駆けつけ、残ったカエルたちの足を氷漬けにして捕まえた。


「どうもこの魔物たちは言葉が話せるみたいだから、ちょっと聞きたいことがあったんだ」


 クッカとアーロは武器を下ろ、ヘンリクに任せることにした。


 ヘンリクがカエルたちに杖の先を向けるので、カエルたちは身震いしている。


「なぜこの町を襲った。お前達の目的は何だ?」


 カエルたちは武器を握りしめて口を開こうとしない。


 ヘンリクは一匹に氷の矢を浴びせて塵に変えた。


「早く答えろ」


 カエルの一匹が重い口を開いた。


「とある御仁を探している……」


「それは誰だ?」


「我々にとって、最も尊き御方だ……」


「答えになっていない」


 ヘンリクはもう一匹カエルを屠った。


「……魔王陛下だ」


「魔王?」


 クッカは魔王と聞くと頭が割れるように痛んで、ふらついて倒れそうになったが、アーロがクッカを支えてくれた。


「大丈夫か、クッカ!?」


「頭が痛い——」


 アーロはクッカを抱きしめて頭を撫でてくれた。アーロに撫でられると頭がズキズキするのが少しずつ治まっていった。


「魔王なんて物騒なやつはこの町にはいない」


「じゃあ、我々はこの町にもう用はない。殺せ」


 ヘンリクは残りのカエルたちにも氷の矢を浴びせた。カエルたちは残らず塵となって消えた。


「先生、さっきのカエルたちはなんだったんです? 死体も残らないし……何か変です」


 アーロはカエルたちとの戦闘を振り返った。


 ――剣で切ったときの感触には全く違和感がなかった。


「私もあんなの初めて見たよ。死ぬことを恐れていないようだったから、もしかしたら本体は別にいるのかもしれない。あくまで仮説だけどね。それより、クッカは大丈夫かい?」


 ヘンリクはしゃがんでクッカの顔を見た。クッカは額にびっしりと汗をかき、苦悶の表情を浮かべている。クッカの懐からヘルミが顔を出し、ぺろぺろとクッカの顔をなめた。


「大丈夫です。だいぶ落ち着いてきました」


「そうか、安心したよ」


 ヘンリクはクッカとアーロの頭を撫でた。


「二人とも、よく頑張ったな。あれだけの数を二人で対処できた事は本当に凄いことだ」


 クッカとアーロはヘンリクに褒められて嬉しいような恥ずかしいような、何とも言えないむず痒さを感じた。ヘンリクに褒められたことで改めて自分たちの成長を実感することができた。


 その後、三人は今回の事件を町役場に報告した。犠牲者の弔いや現場の調査なども行われたが、詳しい事は何も分からずじまいであった。


 クッカはアーロとの信頼を取り戻せたことに満足しながらも、カエルの言った『魔王』という言葉がなぜだか頭にこびりついて離れなくなってしまった。


 何か大切な事を忘れている——という思いが頭の中をぐるぐると回ってスッキリしなかった。




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