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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第五章「メツァ大森林」

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第43話 クッカとネリの秘密の特訓

「どうしたの、クッカ。今日は随分と元気が無いじゃない」


 クッカは朝からキンチャと遊ぶためにキンチャ一家の宿を訪れたが、あいにく今日キンチャは父親の仕事についていっているらしく、部屋には母親のネリしかいなかった。親切なネリはクッカを帰さずに部屋に招きいれてお茶を入れてくれた。


 クッカは昨日アーロと言い争いになってしまったことをネリに打ち明けた。


「うーーん、私はアーロの気持ちはよく分かるかな。私も夫が怪我して帰ってきたりしたら、狩場を変えるように説得するだろうし…… まぁでも、うちの夫はそういうことはないかな。ペイン共和国の冒険者ギルドも一応ランクがあるんだけど、うちの夫はそこまでランクにこだわっていないのよ。家族で食べていければ十分だって人なのね」


 ネリはクッカの向かい座り、お茶をすすりながらクッカの相談に乗ってくれた。


「私、アーロともっと冒険がしたいの。一緒について行って、色んな景色を一緒に見たいんだ」


 クッカは実家の森を出てから、今までの冒険を思い出した。ヘンリクやアーロがいてくれたから、初めての場所でも楽しく過ごせていたのだとクッカは感じていた。実家にいたままでは、こんな特別な経験は決してできなかったであろう。


「どうしたら、アーロは私とまた一緒にいてくれるかな?」


 しょげているクッカの頭をネリは撫でた。


「よし、じゃあ私がクッカの特訓に付き合ってあげましょう。クッカもレベルアップすれば、アーロの気持ちも変わるかもしれないでしょ?」


 ネリはクッカにウィンクした。



 * * *



 ネリに連れられて、クッカは町の空き地に来ていた。ネリは懐から、15㎝くらいの長さの短い杖を取り出した。


「こう見えても、私も冒険者の端くれ。特に私は防御魔法の達人なのよ」


 ネリは猫耳をピンと立ててえばった。ここでクッカはふと疑問が湧く。


「ネリはいつも宿にいるけど、キンチャやキンチャパパとお仕事にはいかないの?」


「ふふ、実はね、おなかの中にキンチャの弟か妹がいるんだ。だからしばらくお休みしているのよ」


「ええ! じゃあ、こんなことしてて大丈夫なの?!」


 クッカは急にネリの体調が心配になった。


「少しくらいなら大丈夫よ。あんまり怠けていると太っちゃうしね」


 ネリはしっぽを振って微笑んだ。


「じゃあ、お手本を見せるから見ててね」


 ネリは呪文を唱えて、自分の前に透明な壁のようなものを出した。


「これが防御魔法よ。やってみて」


 クッカは見様見真似でやってみた。クッカの前に透明な壁を出すことができたが、ネリの物より明らかに厚さが薄くて、面積も小さい。


「これ、苦手かも」


(たぶん、これ初めて使う魔法だ…… 前世ではこんなの使ったことない)


「なら、良かったじゃない。クッカはまだまだ強くなれるわ。こっそり練習してアーロとヘンリクを驚かせましょ」


「うん!」


 クッカは頭の中でアーロの驚くところを妄想した。




 ――きっとアーロならこう言うに違いない。


『クッカすごい! こんなこともできるようになったのか!』


 アーロは私のことを抱きしめて、頭をわしゃわしゃ撫でてくれるんだ。


『俺が間違ってたよ。やっぱり、俺にはクッカがいないとダメなんだ。一緒にまた仕事してくれ』


『いいよ! ずっと一緒だからね!』


 大サービスでアーロのほっぺにちゅうしてあげよう。アーロはどんな顔をするだろうか。


 クッカは頭の中に妄想を広げてにやついた。




「ちょっと、クッカ! にやにやしてないで集中だよ! 防御魔法がへにゃへにゃになってるよ!」


 ネリの声でクッカは我に帰った。クッカの防御魔法はくにょくにょになって、風に仰がれていた。


「まずは、防御魔法を大きく展開する練習からするよ!」


「イエス! マム!」


 クッカはビシッと敬礼した。

 この日からネリ先生とクッカの秘密の特訓が始まったのだった。



* * *



 宿の部屋の戸をノックする音が聞こえた。


「はいはい」


 ネリが返事して戸を開けると、そこにはアーロが立っていた。


「……すみません、うちのクッカがお邪魔してませんか? まだ、家に帰ってきていなくて……」


 アーロはネリと話しをするのが気まずいのか、目を合わせずに自分の手を見ながら聞いた。そんな様子のアーロにネリは優しく微笑んだ。


「来てるわよ。遊び疲れて寝てしまったの。連れて帰るの大変でしょ? 今日はうちで預かるわ。キンチャもその方が喜ぶだろうし」


 キンチャの名前を出すとアーロの表情が少しだけ変わるのをネリは見逃さなかった。


「いえ、ご迷惑でしょうから、連れて帰ります」


 この時初めてアーロはネリの顔を見て愛想笑いを浮かべた。アーロはそそくさと部屋に入り、ソファの上に寝ていたクッカを起こさないようにそっと抱き上げた。


「お邪魔しました。失礼します」


 クッカを回収したアーロはネリにお辞儀をしてから、さっさと帰っていった。ネリは部屋の戸を閉めた後に、ふふっと笑った。


「キンチャはクッカをお嫁さんにするのは、あきらめないといけないかもしれないわね」


 ネリは一人でそうつぶやいた。


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