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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第五章「メツァ大森林」

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第35話 アーロの焼き餅

「さぁ! 出発しますよぉ!!」


 新天地のメツァ大森林に向けて出発した一行の先頭を意気揚々と歩いていたのは、まさかのレヘテアであった。



 なぜ、このような不思議な状況になってしまったのかを説明するためには、しばらく時間を遡って説明する必要があるだろう。




 昨日のカウッパ不動産での取材を終え、一通りの旅支度を終えたクッカとアーロとヘンリクは予定通り翌日の朝には一軒家を立ち退いた。

 立ち退きにはドラだけが立ち会うものとばかり考えていたが、ドラと一緒にレヘテアも現れたものだから三人は驚いた。


「なんでいるのです?」


 クッカがそう言うと、レヘテアはカメラを構えて首を傾げているクッカの写真を撮った。


「昨日まとめた記事を編集長に送信したら、『銀の彗星について行ってどんどん新しい記事を書け!』と申し付けられましてね! 新天地への旅、同行させていただきまっす!」


 レヘテアはクッカに向かってビシッと敬礼した。


「レヘテアは戦えます? 魔物出ますよ?」


 クッカはさっきより首を傾けて、レヘテアの顔を下から覗き込んだ。


「もちろん! 戦えません!」


 なぜかレヘテアは胸を張りえばっている。


「ですが、御三方の近くにいれば何処よりも安全であろうと踏んでおります! 護ってください! 全力で!」


 そんな訳でレヘテアが旅の仲間に加わり、新天地メツァ大森林に向けての旅が始まったのであった。







「レヘテアさん、危ないので先頭は歩かないでください。クッカかアーロの後ろを歩いてください」


 先頭を歩く危なっかしいレヘテアにヘンリクが呆れた顔でそう言った。

 レヘテアはヘンリクの横まで後退する。


「ヘンリク様、私のことはどうぞレヘテアとお呼びください。敬称は不要でございます。敬語もなしで、気楽に話しかけてくださいませ」


「分かったよ……レヘテア。じゃあ、私のこともヘンリクでいい。レヘテアも敬語は無しだ」


「分かったわ、ヘンリク」


 大人二人は後ろでなんだか和気あいあいと話をしている。




「なんか、あの二人、いい感じの雰囲気じゃないか?」


 後ろを歩くヘンリクとレヘテアをチラチラと見ながら、アーロはクッカに耳打ちした。クッカは口を押さえて笑った。


「ププッ! ヘンリク先生はラシット先生と付き合ってるんだよ。ちょっと距離が近い男女を見るだけで関係を疑うだなんて、アーロはまだまだおこちゃまね」


「まじか!? なんで、クッカはそんな事知ってるんだ?!」


「ふふふ、ヘンリク先生の恋文をちょいと覗いた事があるのだよ。今度、アーロも盗み読みしてみたらいいよ。ヘンリク先生は手紙ではかなり情熱的なんだよ」


 クッカはニヤニヤしながらそう言った。

 アーロは情熱的な手紙とは一体どんな内容が書かれているのか空を見上げて想像してみた。しかし、アーロには手紙の内容は見当もつかず、必ず盗み読みしようと固く決意した。


「クッカ! いつの間に人の手紙を見たんだ! ちょっと来なさい!」


「きゃーー! 先生が怒ったぁ! 逃げろぉ!」


 クッカはニヤニヤしながらケト草原の中を逃げ回るのだった。



 * * *



 ケト草原の横断は平和だった。天気は良く、遠足のように気分は晴れやかだ。たまにスライムやステップウルフが一行に襲いかかったが、クッカとアーロにとってはもはや朝飯前だった。




 一行はテントを張り、野営をしながら進んだ。

 テントの前で火を起こして、全員で火を囲みながら夕食を取った。


 クッカはレヘテアにぴったりとくっついて、レヘテアと一緒に飯盒の飯を食べた。二人で故郷や家族の話などをして、クッカは上機嫌だった。


 レヘテアが仲間になって良かった事は、クッカの身の回りの世話係がアーロからレヘテアに代わったことだろう。

 タロで家を借りていた時は、風呂に入るのも、着替えをするのも、クッカの事は全てアーロが世話していた。

 クッカとしては、体は子どもだが、前世の知識があるので頭脳は大人のつもりである。

 要するに、アーロに何もかもやってもらうのは恥ずかしくて嫌なのだ。自分の裸を見られる事にも抵抗感があるし、アーロの裸を見るのも抵抗感がある。クッカとしては、そんな感覚だった。

 自分で出来ると主張しても、小さいから一人で風呂は危ないだの、一人で着替えをさせていたら時間がかかるだの言ってアーロがやってしまう。アーロという奴はとことん世話焼きな性格なのだ。


 そんな訳で、クッカとしてはレヘテアが仲間に加わってくれて嬉しいのだ。

 クッカはすぐにレヘテアに懐いて離れなくなった。




 アーロはそんなクッカを複雑な心境で焚き火越しに見つめていた。

 クッカの世話をしなくてよくなったのだから、喜ぶべきだとは思ったが、アーロは自分に懐いていたクッカがレヘテアの所に行ってしまったのを見るとなぜだか苛々してしまうのだ。


「クッカ、マショマロを焼いてあげるから、こっちにおいで」


 お菓子を使ってクッカを誘き寄せてみる。


「レヘテアにしてもらうからいい」


 クッカはレヘテアにぎゅっと抱きついて離れない。


 アーロがレヘテアを睨んでいる事に気がついたレヘテアとヘンリクは顔を見合わせて笑った。


「クッカ、私はマショマロを焼くのが苦手なんです。いつも焦がしてしまうので、アーロにやってもらってね」


 レヘテアはクッカを抱き上げて、アーロの隣にクッカを座らせた。

 アーロはクッカのぷにぷにほっぺをつんつんしてから、火の精霊トゥリチットゥの火でマショマロを炙った。


「おお! マショマロ焼くのは、焚き火よりトゥリチットゥの火の方がいいね!」


 こんがり焼けたマショマロを見たクッカは大喜びだ。


「そうだろ? レヘテアにはできないからな」


 クッカとアーロを仲良く二人で焼きマショマロを食べた。


 レヘテアはそんな可愛らしい二人の様子を見てシャッターを切った。



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