第34話 クッカとアーロ、バディ名が決まる
「お疲れ様です! アーロ、クッカ組の今月の総獲得額は8547万イルの総合順位は148位です!」
街役場の探索課の職員たちから大きな拍手と喝采が上がった。
クッカとアーロは月300個の魔石納品のノルマは軽々と達成し、初月の最終納品を終えた所だった。
「先生、8500万イルってどれくらいなのです?」
確かヴィオレットの話では4万イルが大人一人分の一ヶ月の食費だという話だったが、桁が違い過ぎてクッカにはよく分からない数字だった。
「そうだな…… ヴオリ王国民の一人当たりの平均年収がだいたい460万イルだったかな…… だから、その18倍位か?」
クッカとアーロは二人揃ってぽかんと口を開けた。二人の顔を見たヘンリクは笑った。
「こんな額で驚いてたら大変だぞ。トップを走ってる奴らもっと稼いでるからな。それに、うちの国の決まりでは稼いだ額が自分たちの懐に入る訳じゃないからな。あくまでランク毎の固定給とその他の援助だけだ。ちなみにお前たちEランクの固定給は月に500万イルだ」
「そう聞くと少なく感じますね」
クッカは腕を組んで考えている。
「まぁそうだな。でも、食費も生活費も装備代も全て国が出してくれるし、500万イルはまるまる貯金しておけるんだから、私は悪くないと思ってるよ。最低のEランクでも任期の5年勤め上げれば、その後の人生は働かなくていいくらいの貯金になるんだからな」
「なるほど、確かにそれは魅力的ですね」
つまり、この五年の任期が終われば、エリサとひげパパと一緒に森で暮らせるのだ。それはクッカにとって何にも代え難い幸せのように感じた。
「さぁ、明日からは拠点移動の準備だ。忙しくなるぞ」
ヘンリク曰く、ケト平原での狩りにも大分なれたので、次はもう少し難易度の高い狩場へ拠点を移すのだそうだ。その分獲得賞金も上がるので、昇級しやすいということらしい。
街役場を出た三人は、今借りている家の解約の為にカウッパ商会の不動産屋を訪ねた。
不動産屋に入るとドラとカウッパ会長、あと初めて見る女性が店内で話をしていた。
三人が入店するや否や、カウッパ会長がホクホク顔で話しかけてきた。
「あぁ、いらっしゃいませ! 丁度今皆さんの話をしていた所だったんですよ! どうぞ、座ってください!」
三人は前回と同じようにふかふかソファに三人並んで座った。
「会長、ここでの狩りにも慣れたので、明日にでも拠点を移動しようと思っています。今借りている家の解約手続きをお願いします」
とヘンリク。
「承知致しました。ドラ、書類の準備を頼むよ」
カウッパ会長がドラに指示を出すとドラはペコリと頭を下げて店の奥へと退いた。
「実は私どももアーロ君とクッカちゃんに用事がありましてね。いやぁ~、二人が旅立つ前に間に合って良かった! 二人がデビューして丁度一ヶ月になるから、ぜひ取材をしたかったんだ」
一ヶ月ぶりに見たカウッパ会長は相変わらずぽよんぽよんのお腹をしていて、お腹を弾ませながら楽しそうに話した。
「紹介します。こちらが、我が商会で発行している雑誌の記者をしているレヘテアだ」
後ろに控えていた女性が一歩前に出て頭を下げた。首からはストラップのついたカメラを下げている。
「レヘテアと申します! こんな可愛らしい勇者様と聖女様を取材できるだなんて! 私、お二人の専属記者に立候補させて頂きましたので、以後よろしくお願いいたします!」
レヘテアはアーロとクッカの手を取り、ぶんぶんと握手をした。
「よ、よろしくお願いします……」
アーロがレヘテアの勢いに押されながらも挨拶を返した。
「本日はお二人を紹介するページに掲載するお写真を撮らせて頂きたいのと、幾つか質問させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
アーロとクッカはうんうんと頷く。
二人を見てレヘテアは満足気に微笑み、肩掛けの鞄からノートとペンを取り出した。
「ありがとうございます! では、お二人のバディ名から聞かせてください」
「「バディ名?」」
クッカとアーロは顔を見合わせた。
「あれ? もしかして、まだ決まってませんでした?」
「それって…… プウさんとラインさんの『風曲の刃』みたいなやつですか?」
「そう! それです! いやぁ~、アーロ君、もしかして風曲の二人のファンなんですか?」
レヘテアはなぜかニヤニヤしている。
「そうです!!」
クッカが勝手に答えてしまった。
「分かりますよ~、風曲のお二人はお子様のファンが多いですからね」
レヘテアはノートに、二人は風曲のファン、とメモした。
アーロは自分がお子様扱いされたようで不満だ。
「俺は決めゼリフとか、決めポーズとか、絶対にやりませんからね!」
「えぇ!! や、り、た、い!!!」
「やだ! こればっかりは絶対に負けてやらないからな!」
クッカはほっぺをパンパンにして不機嫌になってしまった。クッカのローブからヘルミが出てきて、ここぞとばかりにアーロに牙を剥き出している。
身の危険を感じたアーロは小石精霊キヴィを出してヘルミの相手をさせた。
二匹はもみくちゃになってテーブルの上を転がった。最終的にはヘルミがキヴィの頭に噛み付いている。
「まぁ! 可愛らしい精霊とフェアリーラビットですね! お二人の可愛さにばっちりマッチしてます!!」
レヘテアはキヴィとヘルミの写真をパシャパシャと何枚か写真に収めた。
「あぁ、話がそれてしまいましたね。それでバディ名は未定との事ですが、どうでしょう、ここは一つ私に考えさせていただけませんか?」
それはいい考えだ。文章のプロが考えたら、きっといい名前を考えてくれるに違いない。
クッカとアーロはレヘテアの提案を受け入れた。
「『銀の彗星』とかどうです? お二人の武器の色と新星であるお二人をイメージしてみました」
「かっちょいい!!!」
クッカは気に入ったようで、ふわふわソファの上をお尻でバウンドした。
アーロはひとまず『風曲の刃』みたいな子どもっぽい名前にされなかった事に安堵した。
「俺もそれでいいです」
「じゃあ決まりですね! お二人は今この時から『銀の彗星』のお二人です!」
レヘテアはノートに大きく『銀の彗星』と書き加えた。




