第3話 ひげパパの斧術レッスン
今日も今日とて、私はひげパパと木こりの仕事をしに森の中に来ていた——はずであった。
「このぷにぷにほっぺ、可愛すぎ…… このほっぺには【魅了】の効果でもあるんじゃないだろうか…… 変な虫がこのお餅に引き寄せられないか、ひげパパ心配だぞ」
「……」
最近のひげパパは親バカに益々磨きがかかってきている。
ひげパパは仕事の休憩時間になると、クッカを膝の上に乗せてほっぺたをぷにぷにとするのが習慣になっていた。
ちょっと……いや、かなりげんなりする。
前世の知識があるせいか、普通の子供より遥かに大人びていたクッカはかなりイライラしていた。しかし最近では諦めてぷにぷにされている。
なぜかというと、ひげパパは機嫌がいいと、斧を使ったかっちょいい技を色々見せてくれるからだ。
父親としては置いておいて、一斧使いとしてクッカはひげパパを尊敬しているのだ。
「ひげパパ! 早く新しい技を教えてよ!」
「しかたがないなぁ、特別だぞ。こないだは斧を横に振る単発攻撃を教えたな?」
「うん。ひげパパのは檜の木も一刀両断できてすごい!」
「斧使いに大事なのは、攻撃の後にできるだけ隙を作らないようにすることだ。斧は重いから、力を込めて振るほど、その後の隙が大きくなりがちだ。言ってる事分かるか?」
クッカはうんうんと頷いて、相槌を打つ。
「体にも遠心力が乗っちゃって、次の攻撃に移りにくいよね」
「そういう事だ。本当に力を込めた一撃はここぞと言う時にしか使っちゃいけない。基本的には軽めの振りで相手を牽制しつつ、相手に隙ができるのをひたすらに待つ。相手に隙ができた段階で一撃確殺の技を叩き込むんだ」
「待ちの姿勢! かっちょいいよ、ひげパパ!」
「そうだろう、そうだろう。だが、待ち一辺倒の斧使いは二流だ。一流は自分で相手の隙を誘発する。どうするか分かるか?」
ひげパパは勿体ぶってなかなか教えてくれない。
「早く教えてよ!! ひげ!!」
「うん。パパをつけような」
「早く早く!! ひげパパ!!」
「いいだろう。やり方は幾つかあるが、今日は非力なクッカでもやりやすい技を教えてやろう。パパが手本を見せるから、クッカはパパに自分の斧で打ち込んでみてくれ」
クッカはひげパパの膝の上からひょいと立ち上がり、先日ひげパパからもらったばかりの小ぶりの斧を構えた。
「いつでも来い」
ひげパパは余裕の笑顔を見せながら、手招きをして挑発してくる。クッカはその挑発に乗った。
「そのひげ、たたき切ってやるよ!」
クッカは力一杯斧を振りかぶって渾身の一撃を叩き込む。
しかし、ひげパパはクッカの斧の柄肩を掴み、クッカの勢いも利用して前方に引っ張った。
「うわぁ!」
ひげパパの思いも寄らない切り返しに、クッカはバランスを崩して転んでしまった。そこにひげパパは静かに斧の刃を向けてくる。
「ふっふっふ。参ったか」
「ひげパパすごいよ! 相手の攻撃の勢いを利用して隙を作るんだね!」
「そういう事だ。この技は相手の攻撃が強力な程成功しやすい」
ひげパパが手を引っ張って、クッカを立たせた。
その時
「誰か!!助けてくれ!!」
という叫び声が遠くから聞こえてきた。
「よし! クッカ、実戦だ! ついて来い!」
「アイアイサーー!」
走り出すひげパパの後をクッカはウキウキしながら追いかけるのだった。




