第25話 クッカとアーロ、スポンサーがつく
「ほら! 私が盗賊に襲われていたところを君が助けてくれたじゃないか!」
と恰幅のいいおじちゃんは言う。クッカは腕を組んで考えてみた。
「ん? あぁ! うちの実家の近くで襲われてたおじちゃん?」
クッカは4歳の時にひげパパと商人の親子を助けた事を思い出した。
「そうそう! あの時はありがとうね! おかげでこうしてまた商売ができているよ」
おじちゃんが近づいてきて手を差し出したので、クッカは立ち上がっておじちゃんと握手した。
ヘンリクとアーロが状況を飲み込めず、困った顔をしていたので、クッカは簡単に過去の出来事を二人に説明した。
「あの時お礼をしたかったんだけど、君と君のお父さんはすぐにいなくなってしまっただろ? ずっとお礼をしたくて探していたんだよ。
自己紹介をさせてくれ。私はカウッパ商会の会長をしているイルマ・カウッパだ」
まさかあの時助けたおじちゃんが大きな商会の会長だとは、クッカは思っても見なかった。
「クッカです。聖女でヘンリク先生の弟子です。よろしくお願いします」
「まだ小さいのに聖女だなんてすごいね! ぜひ応援させてほしい! 良ければうちとスポンサー契約を結ばさせておくれ」
「スポンサー契約?」
クッカは知らない話が出てきたので首を傾げた。なんだか話が大きくなってしまったようだ。クッカはどうしたらいいかヘンリクの方を見て助けを求めた。
「カウッパ会長、クッカはまだスポンサー契約の事をよく知らないので、私の方から説明してもいいでしょうか」
とヘンリク。
「あぁ、もちろんですよ」
「ありがとうございます。
じゃあ、クッカ、アーロ説明するのでよく聞いて」
クッカはふかふかソファに座り直し、アーロはメモ帳とペンを構えた。
「追々説明しようと思っていたのだけど、我が国の勇者と聖女には収入を得る手段が大きく分けて二つある。何か分かるかな、アーロ」
ヘンリクはアーロに質問した。アーロは急に当てられてドキッとしながらもなんとか答えた。
「国から毎月一定額の給金が出る……と任命式の時に陛下が仰っていました……」
「正解。ちゃんと話を聞いていてえらかったね」
ちなみにクッカは全く覚えていなかった。
アーロはヘンリクに褒められて頬を染めて嬉しそうだ。
「勇者と聖女には活躍に応じたランク付けがされ、ランクごとに給料が決まっている。
上から、S、A、B、C、D、Eランクまでの階級があり、君たち二人は任命されたばかりなのでE級だ。ここまではいいかな?」
アーロはメモをしながら頷いた。
「先生はちなみに何級なのです?」
クッカが聞くとヘンリクは笑顔を崩さず
「A級だよ」
と言った。
(あれだけ強いのにA級…… ということはS級なんて物はあってないような物か…… もしくは化け物みたいなのがいるのかもしれない)
それが昨日の人魚とヘンリクの戦闘を見たクッカの感想だった。
「話を戻すよ。勇者と聖女はランクに応じた給料が貰える話まではしたね。
じゃあ、残るもう一つの収入源の話をしよう。それがさっきカウッパ会長が勧めてくれたスポンサー契約だ。国民から人気のある勇者や聖女、もしくはこれから人気が出そうだと見込まれる勇者と聖女は自国の商会とスポンサー契約を結ぶ事ができる。
契約を結ぶと契約金が発生し、スポンサーが契約者に金銭を払ったり、自商会の商品を提供してくれたりするんだ」
「勇者と聖女はスポンサー契約の見返りに何をするのです?」
とクッカは質問する。
「契約を結んだ勇者と聖女はスポンサーに頼まれた仕事をやる。主に商会の宣伝活動だね。新聞や雑誌の取材に答えたり、商会の商品を使用している写真を撮ったりって感じだ。人気のある勇者や聖女が実際に使っている商品というだけで、かなり売り上げが上がるんだ。勇者と聖女は国の英雄だからね。宣伝効果があるんだよ」
「なるほど、よく分かりました。ありがとうございます」
クッカはヘンリクにニコリと微笑んだ。
「それで、どうする? うちと契約するかい?」
カウッパ会長は目を輝かせながらクッカに詰め寄った。
(余程私の活躍に期待しているのか——もしくは、単に見た目や年齢で判断しているのかもしれない。
最年少聖女というだけで、かなりの宣伝になりそうだし、私の見た目は自分で言うのもなんだがプニプニほっぺがチャーミングだ)
クッカは自己評価が高めだった。
「会長、契約を結ぶのはいいのですが、お願いを聞いていただけますか?」
クッカはあどけない子供らしい顔で会長におねだりした。
「なんだい? うちは是が非でもクッカちゃんと契約したいから、なんでも言っていいよ」
クッカはそれを聞いてにっこりと笑った。
「やったぁ! ありがとうございます!
では、私と一緒にアーロともスポンサー契約を結んでください。私一人良い思いをするだなんて考えられません」
会長は輝く笑顔を浮かべ喜んだ。
「それはこちらとしても願ったり叶ったりだ! 二人とも若くて可愛いから、きっと人気がでるよ! ぜひそうしよう! アーロ君も、それで構わないかな?」
アーロはうんうんと頷いた。
「よし! じゃあ、早速契約書を作るからね!」
そう言うと会長は猛ダッシュで店の奥へと消えた。
アーロはコソッとクッカに耳打ちした。
「クッカ、ありがと」
「なにが?」
「スポンサー契約の事だよ。もし、君だけ契約するなんて事になってたら、俺はたぶん嫉妬に狂ってたと思う」
クッカはふふんと笑った。
(分かってたよ)
アーロもクッカの扱いに慣れてきていたが、クッカも同じくアーロを大分理解しつつあるのだった。




