第24話 はじまりの港街タロ
上陸したのは大きな街だった。サタマの街と負けず劣らずの活気がある。違うところと言えば、サタマの建物はレンガ造りの建物が殆どだったが、ここは木造の建物が殆どだ。
アーロとクッカは船が着くと真っ先に船から飛び降りた。
「はぁ! やっと船から解放されるよ!」
船から降りたアーロは大きく伸びをして、深呼吸した。おもむろに四つん這いになり地面の匂いを嗅いでいる。
「あぁ……土の匂いだ…… こんなに土の匂いを嗅いで幸せに感じたのは初めてだ……」
アーロは船酔いが辛すぎて、ちょっとおかしくなってしまったらしい。
「何その遊び! 私もやる!」
アーロの横でクッカも四つん這いになり地面の匂いを嗅いだ。ついでにヘルミもクッカの横で地面をクンクンしている。
慌てて降りてきたヘンリクはフッと笑ってから二人を抱き上げて立たせ、膝についた土をはらってやった。
「魔大陸についてからが本番なんだから、しっかりしなさい」
ヘンリクは笑顔で二人にそう言った。
三人の後に船から乗客や乗組員たちがぞろぞろと降りてきていた。
「ヘンリクさん、お世話になりました」
風曲の二人だった。船を降りて挨拶に来てくれたらしい。プウがヘンリクに頭下げた。
「何もしてないよ。こっちこそ、子供たちが世話になった」
ラインは少し屈んでクッカとアーロの頭を撫でた。
「またどこかで会えるわね。元気でね」
「「はい!」」
クッカとアーロは揃って元気に返事した。
風曲の二人と手を振って別れるとヨーラさんも声をかけてくれた。
「次会う時は五年後か? 五年後は二人は何歳になってるんだ?」
「17です」「10歳!!」
「そうかそうか、それまで達者でな」
ヨーラも二人の頭を愛おしげに撫でてくれた。
「ありがとう。ヨーラも元気でね」
ヘンリクはヨーラと固く握手を交わした。
ヨーラと別れを告げた一行は街の中に入った。
街の入口には大きな案内板があり、街の地図が描かれていた。ヘンリクは案内板の前で二人に街の説明をしてくれた。
「ここは、魔大陸のヴオリ王国領の港街、タロだ。ヴオリ王国からの船が唯一停泊する場所だから覚えておきなさい」
アーロはすかさずメモを取る。クッカはアーロが何を書いているのか気になり、ジャンプして覗いたが、アーロの字は汚くてクッカには読めなかった。かなりの癖字だ。
「街の中には冒険に必要な店がひと通り揃ってるかな。武器屋に防具屋、薬屋、宿屋。あと飲食店もあるね。
魔大陸には沢山の国が自分たちの領地を持っていて、港街もそれぞれ持っている。他の国の領地には行かないほうがいい。睨まれるからね」
「先生、質問!」
クッカが勢いよく挙手した。
「はい、なんだい、クッカ」
「魔大陸には、港街以外にも街があるの?」
「あるよ。ただ、しばらくは二人に仕事のやり方を教えたいからタロに滞在する予定だ。このあたりに出没する魔物は弱い個体が多いので、練習にちょうど良いからね」
「ふむふむ」
「今日の仕事は、まず家探しかな。拠点に着いたら真っ先にやらなきゃいけないことがこれだ」
「先生、宿屋は使わないんですか?」
と今度はアーロが質問した。
「短期滞在なら宿屋でもいいんだけど、今回は最低でも一ヶ月は滞在しようと思っているから家を借りるぞ。アパートもあるけど、うちは小さい子供がいるから一軒家を借りような」
ヘンリクはクッカの撫でながらそう言った。
アーロは
「小さな子供がいる時は一軒家を借りる」
とぼそぼそ言いながらメモを取った。
そのメモは果たして必要なのだろかと、クッカは頭を捻った。
「不動産屋はすぐそこの大きな建物だ。カウッパ商会っていう、大きな商会がやっている不動産屋なんだ。カウッパ商会は魔大陸でも手広く商売しているから仲良くなっておいて損はないよ。
じゃあ、早速行ってみようか」
* * *
カランカラン
店の扉を開けると扉についていたベルが扉の開閉に合わせて鳴った。
店の中では眼鏡をかけたおじいちゃんと恰幅のいいおじさんの二人が話をしていた。ベルの音ですぐに眼鏡のおじいちゃんの方が接客に来てくれた。
「おやおや、ヘンリクさんではないですか。お久しぶりでございます。今日は部屋探しですかな?」
「こんにちは、ドラ。最低でも一ヶ月は借りられる一軒家を探してるんだ。私の弟子たちと一緒に住める家を紹介してくれるかな?」
眼鏡のおじいちゃんことドラはにっこりと微笑んでクッカとアーロを見た。
「承知致しました。今、ご紹介する物件の資料を持って参りますので、しばらくおかけになってお待ちください」
三人はドラに案内されたふかふかの長ソファに三人並んで腰掛けた。なかなかいいソファで座るだけでクッカはうとうとしそうだ。窓から差し込む温かな日射しも心地良い。
クッカが本当にうとうとし始めた頃、先程までドラと話をしていた恰幅のいいおじさんがクッカの顔を見て話しかけてきた。
「おや? 君は…… あぁ! やっぱりそうだ! 私の事を覚えているかな?」
「……ふぇ?」
クッカは眠たい目を擦りながら、おじさんの顔を確認した。




