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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第三章「船旅」

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第23話 バディで初バトル おまけのヘンリク

 三人はより霧の濃い方を目指して歩いていた。恐らくそこに人魚がいて、三人を待ち構えている筈である。


「人魚楽しみだなぁ。綺麗なお姉さんなのかなぁ」


 呑気なことを言いながらスキップしているクッカに、アーロは呆れた。


「呑気だな。緊張とかしないのか」


「しないねぇ。アーロもしてなさそうだけど?」


「俺は、元々頭とか使うタイプじゃないの。考えるより動きたい」


「ほほぉ……」

(馬鹿ということかな?)


 クッカは失礼な事を事を考えていた。

 ニヤニヤして考えが顔に出ていたのか、アーロに肘で小突かれる。

 クッカはアーロに構ってもらえてより一層上機嫌だ。


「二人とも、遊んでないで気をつけなさい。そろそろだ」


 先頭を歩くヘンリクがそう言った時、クッカの肩に乗っていたヘルミの爪がクッカの肩に食い込んだ。ヘルミも何かしらの気配を感じ取っているらしい。クッカはヘルミに頬ずりをして落ち着かせた。




 しばらく歩くと前方に大きな岩礁が見えてきた。岩礁の上には髪の長い人魚が三匹腰掛けている。海藻を連想させる茶色の髪。三匹とも個体差はほぼ無く、コピーしたかのように同じ背格好で皆一様に美しかった。

 一番右手にいる一匹の人魚が長く息を吐き、口から霧を出している。

 人魚を見たヘルミはクッカのローブに潜り込んだ。


「私があの霧を出してるのからやる」

「じゃあ俺は左からだ」


 クッカは斧の柄を強く握りしめてにやりと笑い、アーロは肩を回して軽くストレッチをした。


「分かった。じゃあ、クッカとアーロで好きなようにやってみなさい。危なかったら助けてあげるからね」


 ヘンリクは二人の実力を見るためにあえて手は出さないことにした。


 クッカとアーロは顔を見合わせて頷きあってから同時に動き出した。


 二人が走りだすと、人魚たちは海に飛び込んでしまった。海の中までは追いかける事ができない。


 クッカは自分の足下に黒い影が近いている事に気配で気が付き、ジャンプして岩礁まで避けた。人魚が飛び出してきて、悔しそうに水面を叩いている。


 アーロも自分の足下に人魚が近いている事に気がついていたが、あえて向かい撃つため双剣を構えた。


 人魚がアーロの両足をがっしりと掴んだ。アーロは双剣で人魚の両手を斬ったが、引っ張られ海の中に引きずりこまれてしまった。

(しまった!!)

 アーロがそう思った時には既に遅い。アーロの顔の前には人魚の美しい顔が微笑みかけていた。人魚の魚のようなギラギラした目で見つめられるとアーロは金縛りにあったように動けなくなってしまった。

(……息が苦しい!)

 水中の中でパニックになったアーロは何とかして抵抗したかったが、人魚に見つめられると体が言う事を聞かない。

 人魚の顔がゆっくりアーロに近づき、今にも口づけされるのではないかと思ったその時、人魚とアーロは周りの海水と一緒に宙へと浮き上がった。人魚とアーロを包むように丸い海水の球体になっている。


 それをしたのはどうやらクッカだったようだ。岩礁の上でニヤニヤしながら、左手を掲げている。


「アーロ、人魚のお姉さんとチューしようとしてる」

「ちがっ!ごぼごぼ」


 アーロは否定しようとして、盛大に海水を飲み込んだ。このままだと窒息死してしまう。

 クッカはすぐに高く跳び上がり、アーロを捕まえている人魚を一気に切った。

 人魚は頭から一刀両断され、泡となって消えた。人魚がいた所には赤色の魔石が一つだけ残った。


 クッカが左手を下げると海水の球体は海へと音を立てて落ちた。

 水上歩行の術で海上に残されたアーロは咳き込んで海水を吐き出した。

 クッカはすぐにアーロにヒールをかけて回復させた。

「アーロは綺麗な顔をしてるから人魚のお姉さんもアーロが好きなのかもね。この調子で人魚さんの餌係をしてくれるかな? 名付けて『美少年で人魚を釣る作戦』だよ」

「え……?」


 アーロは嫌な予感がして顔の血の気が引いた。


 クッカは跳び上がって岩礁まで避難する。

 もう一匹の人魚が息絶え絶えのアーロを海中へと引きずりこんだ。


「ふふ、よくかかる餌だねぇ」


 クッカは先程と同じ要領で人魚とアーロを海上へと持ち上げ、人魚を切った。


 アーロは咳き込みながら苦しそうにしているので、クッカはアーロの背中を叩いてあげた。


「はぁ、はぁ…… もう一匹は?」

 アーロがクッカに聞くとクッカは何も言わずに指を指した。


 もう一匹の人魚はヘンリクの前で氷漬けになっていた。ヘンリクが人魚入りの氷を杖で叩くと氷は粉々に割れて、赤色の魔石だけが残った。


「二人とも良くやった。魔石を回収して戻って来なさい」


 クッカが足下に落ちている魔石を二つ拾い、アーロの手を引っ張って立たせた。


「はい、アーロにあげる」


 クッカは二つとも魔石をアーロに差し出した。


「いらない! 人魚を倒したのはクッカだろ?」


 アーロは何もできなかった自分に腹をたてていて不機嫌だった。


「トドメを刺したのは私だけど、アーロがいなかったら倒せなかったよ。私、泳げないから。危険な役回りをやってくれて、ありがとう」


 クッカはアーロにぎゅっと抱きついた。


「お、おぅ…… 仕方がないな…… クッカには危なくて囮役なんかさせられないもんな」


 アーロはクッカと目を合わせないようにしながら、クッカの頭を撫でた。アーロは少しだけ機嫌をなおしたようだ。クッカがアーロに魔石を渡すと、今度は何も言わずに受け取ってくれた。


 クッカとアーロは仲良く手を繋いで、ヘンリクの所まで戻った。ヘンリクはそんな可愛らしい二人の頭を撫でてやった。


「ほら、見てごらん。あれが、魔大陸だよ」


 人魚がいなくなったので、海の霧が少しずつ晴れてきていた。霧の間からは大きな島が見えた。



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