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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第三章「船旅」

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第21話 クッカ、船旅に飽きる

 ヘルミがくっつくようになってから、アーロの船酔いは劇的に回復した。

 一日目の夜には、起き上がってクッカとヘンリクと一緒に食堂まで移動し、夕食を取ることができた。




 二日目のアーロはヘルミを頭の上に乗せて、本を読んでいた。



「今日はアーロもヨーラおじちゃんの所に行く?」


 クッカは今まで子供の友達がいなかったので、本当はアーロと仲良く遊びたいのだ。


「ごめん。今日の午前中は教科書を読むんだ」


 アーロは教科書のページをめくりながら答えた。


「じゃあ、午後からは?」


「午後からはヘンリク先生にキュアの練習に付き合ってもらう予定」


 どうやら、アーロは忙しいらしい。

 クッカはぷにぷにほっぺを膨らませた。


「もういいよ! アーロが本を読んでるうちに、私は天気も操る風使いになっちゃうからね!」


 そんな事は無理だということはクッカ自身が一番よく分かっていたが、アーロに相手にしてほしくて大きな事を言ってみたのだ。


「あぁ、頑張ってね」


 アーロはクッカの目も見ずにそう言った。

 クッカは益々ほっぺをパンパンにして客室から飛び出していった。

 ヘンリクはやれやれとため息を吐く。


「昨日はちょっと意地悪を言って悪かったよ。クッカと遊んできてもいいんだぞ」


 ヘンリクがそう言って、初めてアーロは顔をあげ、ムスッとしている。


「仕事で来てるんですから、遊んだりしませんよ」


 そう答えるととアーロは再び教科書を読み始めた。

 アーロは自分がクッカと同じ子供のように扱われるのが嫌だった。自分の中では、どちらかというとクッカよりヘンリクに近い大人に一歩足を踏み入れた状態だと思っているからだ。

 しかし、ヘンリクから見たら、アーロはクッカと同じ子供なのだ。どうしたらいいかヘンリクは少しだけ考えて


「ま、ヨーラがいれば大丈夫か」


 と考えるのをやめた。



 ※



 クッカが甲板に出ると先客がいた。

 プウだった。ヨーラの代わりに風を操っているようだ。


「おはようございます。今日はヨーラおじちゃんじゃなくて……放屁のプウさんが風使いなんだね」


「風剣な! 誰が放屁だ」


 クッカの失礼なジョークも軽く流してくる。やっぱりプウさんはいい人のようだ。


「で、ヨーラおじちゃんはどこに?」


「昨日はずっとヨーラさんがやってただろ? 交代でやった方が早く着くから、交代してもらったんだ」


「ヨーラおじちゃんは天気をよみながらやってるって言ってたよ。プウさんはできるの?」


「出来るわけないだろ。あれは風使いの専売特許だ。俺はコンパスを見ながら、ただまっすぐ船を進めてるだけ。天気が悪くなってきたらヨーラさんが出てきてくれるんだ」


「ふーーん。私もやってみたい」


「ちびっこは風魔法が使えるのか?」


「うん、できるよ」


「よし、じゃあ見ててやるからやってみろ」


 クッカはプウと立ち位置を交代して、船尾中央に立った。両手を上げてから一気に振り下ろすと強風がマストに吹き付けた。


「うわ!」


 急に船の速度が上がったから、プウはバランスを崩して尻もちをついた。


「プウさん、しっかり掴まっててね。アーロも遊んでくれないし、もう船飽きちゃったから、早く魔大陸に行きたいんだ」


「ちびっこ! そんなに一気に魔力を使ったらすぐに倒れるぞ!」


 プウは船の速さで立つことができず、手を甲板についたまま飛ばされないようにしている。


「このくらいなら大丈夫。一時間はもつと思うよ。その後はプウさん交代してね」


「一時間!?」


 プウは信じられないといった表情だ。


「クッカ!」


「あ! アーロ!」


 慌てた様子のアーロが甲板まで出てきた。船の速さで立っていられず、四つん這いになりながら近づいてきた。ヘルミは風で飛ばされないようにアーロの背中に潜り込んだ。


「船の揺れが急に大きくなったから、先生が様子を見てこいって! これ、ちょっと弱めて!」


「いいよ」


 クッカが両手を小さく上下に振り下ろすと風が小さくなり、船の速さが元にもどった。


「流石は五歳で聖女に選ばれるだけあるな……お見逸れしたよ」


 とプウは一人で感心している。


「アーロ、せっかく来たから一緒に遊ぼう、お願い」


 クッカはアーロに駆け寄って縋り付いた。クッカが潤んだ瞳で見つめてくるので、アーロは諦めた。


「仕方ないなぁ、ちょっとだけだぞ」


 アーロはしゃがんでクッカのほっぺを両手でぷにぷにして微笑んだ。


「やったぁ!!」


 クッカはアーロに抱きついて大喜びだ。

 


 二人は乗組員に釣り竿を貸してもらい、日がな一日海釣りを楽しむのだった。



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