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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第三章「船旅」

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第20話 クッカ、天気を操りたくなる

「ヨーラおじちゃん!」


「おお! クッカ、相方は大丈夫だったか?」


 ヨーラは杖で風を操りながら、走って甲板まで出てきたクッカに声をかけた。


「大丈夫ではなかった! ベッドでぐったりしてたよ!」


「ははは、そりゃ気の毒だな」


 ヨーラは笑っているが、どこか他人事だ。


「ヨーラおじちゃんも子供の頃は船酔いになった?」


「いんや、俺は15からこの船で風使いをしているけど、船酔いになった事は一度もないな。理由は分からんが、自分で船を動かしているからじゃないかと思っている」


(だから、ちょっと他人事なのね)


 クッカは可哀想なアーロの事を考えた。


「アーロも風魔法を使えるようになったら、船酔いしなくなるかな?」


「こればっかりは分からないな。他の船で風使いをしているやつと話した事があるが、そいつは船に慣れるまで一年はかかったと言っていた。

 誰にでも得意不得意があるのさ。クッカの相方も船が苦手な分、何か得意な事があるはずさ。わざわざ、苦手な物を得意にする必要なんかないんだ。

 今はいい薬もたくさんあるから、船酔いなんか薬飲んじまえばいいんだよ」


「ふーーん」


 ヨーラは何か哲学的な事を言ったような気もするが、あまり苦手な事のないクッカにはよく分からなかった。


「次、船に乗る時は薬師の所に寄ってから乗ることだな。サタマの街にも、これから行く魔大陸のヴオリ王国領にもいい薬師がいるからな」


「なるほど…… 先生も知ってただろうに、どうしてアーロに教えてあげなかったんだろう?」


「さぁな。ヘンリクの考えている事は俺には分からん」



 * * *



「へっくし!」


 ベッドの上に座っていたヘンリクはくしゃみをした。


「先生…… 船酔いのこと、どうして教えてくれなかったんですか……」


 アーロは泣きながらヘンリクに恨み言を言った。


「逆にどうして知らなかったか、私の方が知りたいくらいだ。学園では、船で移動する時の注意も授業している。その辺の基礎的な事は初等部を卒業している君なら履修済みのはずだよ」


 アーロはかつて座学の授業を真面目に聞いていなかった事を酷く後悔した。


「いらない授業など一つもないのだから、これからは心を入れ替えて勉強しなさい。

 ラシットが君の事を心配して、初等部の教科書を一式私に持たせてきた。魔法鞄に入れてきたから重くはなかったけど、おかげで他に入れたかった物を幾つか置いてくるはめになったよ。もしもの時の酔い止めもその一つだ。

 船酔いが落ち着いたら、少しずつ教科書を読み返しなさい」


「……はい……」


 アーロは力なく返事を返す事しか出来なかった。



 * * *



「ヨーラおじちゃん、風使いは普通の魔法使いとは違うの?」


「うーーん、難しい質問だなぁ」


 ヨーラは空いている方の手を自分の顎に当てて考えた。


「うちの国には風使い以外にも専門職の魔法使いがたくさんいるんだ。医療機関には回復魔法専門の治癒術師がいるし、魔道具を作る魔道具師も大きな括りで言ったら魔法使いだ。

 クッカの言う、普通の魔法使いっていうのがよく分からないけど、一般的に風魔法が得意なやつが風使いになることが多いかな」


「ふむふむ」


「あとは、天気をよむ技術も風使いには必要だ」


「天気? どうやるの?」


「風の動きが分かるようになるとある程度天気が予想出来るようになるんだ。

 例えば、風と風がぶつかっているような所は雲ができて天気が荒れやすい。風使いはそういうところを極力通らないように避けて行くことができる。

 船が耐えられそうにない嵐には突っ込まないで、迂回しなければいけない。そういう判断は風使いの判断だ」


「すごく責任重大なお仕事って事はよく分かったよ…… ヨーラは私たちの命を預かってるんだね」


「そういうことだ。

 どれ、クッカにも風のよみ方を教えてやろう。両手を広げて、目を閉じて立つんだ」


 クッカはヨーラに言われた通りにした。


「風を感じるか?」


「感じるよ。脇の下とか、顔の横を風が通っていくのが分かる」


「その時の温度や湿度の感じを肌で覚えるんだ。その時の天気の特徴を自分の中で積み重ねて覚えていくんだ」


「一朝一夕で身に付くものじゃなさそうだね」


 クッカは気が遠くなった。


「風を完全に読める風使いは天気をも操作できると言われてるんだ。どうだ? ロマンがあるだろ?

 クッカも聖女引退後にやってみたくなったら、弟子にしてやるからいつでも言うんだぞ」


「ひげパパには森の管理を引き継ぐように言われてるから難しいかな。でも、天気は操作出来るようになってみたいから、風の勉強は続けてみるよ。ありがとう、ヨーラおじちゃん」


 クッカは久しぶりに自分のできない事を見つける事ができて心が躍るのを感じた。

 こんな気持ちになったのはいつぶりなのか、思い出そうとしたが頭がズキンと痛むだけだった。


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