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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第三章「船旅」

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第19話 いざ出航! 天国と地獄の旅

『本日は 魔大陸定期船にご乗船いただき、誠にありがとうございます。当定期船は、順調に航海が進めば一週間程で目的地の魔大陸へと到着します。風魔法を使えるお客様がいらっしゃいましたら、ご協力いただけますと目的地まで早く到着することができます。お近くの乗組員まで、お気軽に名乗り出てください。

 それではどうぞごゆっくり、お過ごしください』


 ブォーーー


 船の出航を知らせるアナウンスと角笛の音が響き、船尾甲板に立つヨーラが長い木の杖を構えて呪文を唱えた。すると船の帆に向けて強い風が吹き付けて、一気に船は前に進んだ。


「えぇ!! この船は風魔法で動いてるんですか!!」


 クッカは大興奮でヘンリクに質問した。


「自然の風に任せていたら、一週間じゃつかないんだ。全てそれで動いている訳ではないけどね。

二人は風魔法は使えるのかい?」


 クッカが頷き、アーロは首を横に振った。


「じゃあ、クッカはヨーラの手伝いをしてきなさい。勉強になるから」


「はーーい!」


 クッカは返事をすると、ヨーラのいる船尾へパタパタと走っていった。アーロの腕の中にいたヘルミはするりと抜け出し、クッカを追いかけて行ったのでアーロは手持ち無沙汰だ。


「先生、俺は何をすればいいですか?」


「アーロは魔法は何か使えるのかい?」


「初級ヒールならなんとか使えます。小さな切り傷くらいなら塞がるレベルです」


「じゃあ、状態異常を回復するキュアを教えてあげよう。船旅には必須だからね。早々に習得しないと地獄を見るぞ」


「?」


 この時、アーロはヘンリクの言っていることの意味が全く分からなかったが、一時間も船に乗っているとその意味を身を持って理解することとなった。



 * * *



「うぇ……」


「アーロ、大丈夫?」


 出すものを全て出し切ってしまったアーロは船の中の客室のベッドの上で動けなくなっていた。

 船酔いになってしまったのだ。海に向かって今朝とった朝食を吐きもどす姿を見たクッカは心配になったのか様子を見に戻って来ていた。


「……なんで、クッカは平気なの……?」


「ヨーラおじちゃんにもらった飴ちゃん舐めてたからかなぁ。気持ち悪くないよ」


 クッカはケロッとしている。


「俺だって舐めてたよ……飴ちゃん……」


 アーロの顔が青白くなっているので、クッカはアーロにキュアをかけてあげた。


「あ……それいい感じ……」


「早く良くなるといいね。ランチは魚のスープが出るってヨーラおじちゃんが言ってたよ」


「今、食べ物の話しないで……」


 アーロは自分の口を押さえて吐き気を我慢している。



「クッカ、ヘルミをアーロに貸してあげなさい」


 アーロと向かい側のベッドに腰掛けて本を読んでいたヘンリクがそう言った。

 クッカはヘンリクに言われた通り、懐からヘルミを出してアーロの横に置いた。ヘルミは大人しく丸くなっている。


「……気持ち悪くなくなってきたかも……」


 アーロの顔色が少しだけ良くなった。


「フェアリーラビットには自身と近くにいる仲間の状態異常を無効化する能力があるんだ。一緒にいれば、船酔いも感じない筈だ」


「神の使いか……もう二度とお前を離さない……」


 アーロはヘルミをぎゅっと抱きしめている。ヘルミは不快なのか、ちょっとだけ牙が出ている。


「私もヘルミがいないと船酔いしますか、先生?」


 クッカがヘンリクに聞いた。


「キュアを定期的に自分にかけていれば船酔いにはならない。私もそうしている。クッカは自分でできるね?」


「できます」


「じゃあ、そうしなさい。アーロの事は私とヘルミに任せて、クッカはヨーラの所に行きなさい。少しでも早く着いた方がアーロも嬉しいだろう」


「分かりました。アーロ、ゆっくり休んでね」


 クッカが小さな手でアーロの頭を撫でてから客室を出ようとしたが、ヘルミがアーロの腕の中からするりと逃げ出してクッカに付いていこうとするので、アーロは再び自分の口を押さえた。


「ヘルミ! め! アーロにくっついてなさい!」


「キュウ……」


 ヘルミは大きな耳をぺたんと下げてから、渋々アーロの腕の中に戻っていった。


「アーロの為に私たくさんお手伝いしてくるね!」


「ありがと……」


 クッカは元気のないアーロにニカッと微笑んでから、客室を飛び出していった。

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