第18話 クッカ、モフモフとお友達になる
「仕留めるって、あのモフモフを殺しちゃうの?」
クッカはモフモフが殺されるとは思っていなかったので、慌ててプウに聞いた。
「あれは、魔大陸に住む生物だ。捕まえてその辺に逃がしたら、生態系のバランスが崩れる可能性がある。狩るのが最適解だ。可哀想だが、仕方がない」
プウは冷たい声でそう言い放った。
「……だめ…… 私が魔大陸までしっかりお世話する!」
「クッカ!!」
クッカはアーロが止めるのを無視して、するするとお猿のようにマストを登り始めた。
「危ないわよ! 降りてきなさい!」
ラインの声も聞こえたが、クッカは止まらず、あっという間にモフモフがいる高さまで登ってしまった。
クッカがモフモフを見ると甲板からは分からなかったが、小さく震えて怯えているようだ。
「こっちにおいで、なにも嫌がることはしないよ」
クッカが声をかけるとモフモフは初めてこちらを見た。
大きな丸い耳に、黒い目。白くてふわふわの体に短い手足。ウサギだと言うから、長い耳を想像していたが、丸い耳なのでちょっとネズミみたいだ。
モフモフは短い手足で自分顔をくしくしと撫でると、お鼻をぴくぴくさせてからゆっくりクッカに近づいてきた。
きゃわいいいいい!!!
クッカは心の中で小躍りする。
クッカが手を伸ばすとモフモフはクッカの手の匂いをクンクン嗅いでから、クッカのだぼだぼの襟からローブの中にすっぽりと収まった。襟から頭だけ出してクッカをクンクンしている。
「かわいすぎるだろぉぉぉ!!!」
クッカは心の声が盛大に漏れ出ている。
(あぁ……早く降りて、このモフモフを堪能しよう……)
クッカはもうモフモフにメロメロだ。
シュシュっとマストから滑り降り、クッカは華麗に着地した。
「信じられない……野生動物がそんなにすぐに人に慣れる筈ないのに…… ちびっこは【魅了】のスキルでもあるのか?」
とプウは聞く。
「よく言われるけど、たぶんないよ。
この子のお世話、私がちゃんとするから殺さないでくれる?」
風曲の刃の二人は見つめ合ってから頷いた。
「しっかりお世話するのよ」
ラインがクッカの頭を撫でてくれた。
「クッカ! アーロ! 来なさい!」
ヘンリクが呼ぶ声がしたので、アーロはクッカを抱っこして、風曲の刃の二人に頭を下げた。
「師匠が呼んでいますので、失礼します」
「あぁ、何か困ったことがあればいつでも頼ってくれていいぞ」
「ありがとうございます!」
風曲の刃は結構いい人たちだった。
アーロはクッカを抱えてヘンリクのもとまで走った。クッカは、風曲の刃の二人に手を振った。
ヘンリクは腕組みをして二人の事を待っていた。
「先生……この子、魔大陸まで飼ってもいいですか?」
クッカとモフモフは潤んだ瞳でヘンリクにアピールした。
ヘンリクはため息を吐いた。
「クッカに随分懐いているようですからいいですよ」
「やったぁ!!」
クッカは襟からモフモフを出して、ぎゅうっと抱きしめた。モフモフの毛からはナッツのような香ばしい香りがした。
「ちょっとだけ触らせて」
アーロが羨ましそうにモフモフに手を伸ばしたが、
「シャー!!」
と牙を剥き出して威嚇した。
「なんで!?」
とアーロ。
「どうやら、クッカにしか懐いてないみたいだね」
ヘンリクは苦笑いだ。
「こら、シャーは駄目でしょ? アーロは私の大切なバディなんだから仲良くして」
クッカがモフモフにそう言うと、モフモフはクッカの言葉が分かるらしく、すぐに牙をしまった。
アーロが恐る恐る手を伸ばすとモフモフは素直に撫でさせてくれた。
「やば……ふわふわだ。かわいい!」
アーロもモフモフにメロメロになってしまったようだ。
「そうだ! 名前をつけよう!」
「一緒に考えてやる! クッカに任せると『毛玉』とか変な名前つけそうだからな」
「ぎくぅ!!」
(なぜ『毛玉』にしようとしていた事が分かったんだ……)
アーロはクッカの扱いに慣れてきたようだ。
「じゃあ『綿あめ』は?」
「却下」
「『雪だるま』!」
「だーめ」
「『耳かきのふわふわ』!!」
「明らかに呼びにくいだろ!!」
「えぇぇ、じゃあアーロは何だったらいいと思うの?」
アーロは腕組みしてしばらく考えた。
「ヘルミ(真珠)はどうだ?」
クッカはアーロの抜群のネーミングセンスにたじろいだ。
「お、おう。なかなか高貴な感じがしていいね」
「よーーし! 今日から、お前はヘルミだ!」
アーロがヘルミを撫でると、ヘルミはぺろりとアーロの手を舐めた。ヘルミも名前を気に入ったらしい。
その後、クッカとアーロはどちらがヘルミを抱っこするかでしばらく揉めた。




