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幼女聖女 〜ぷにぷにほっぺ聖女の冒険譚〜  作者: ポムの狼
第三章「船旅」

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16/22

第16話 クッカ、初めての海

「ひっろぉ!! すっごぉ!!」


 初めて見る海にクッカの語彙力は低下中だ。大きく息を吸い込み、塩の匂いを体いっぱいに吸い込んだ。


 背中に銀色の斧を背負ったクッカは右手で眩しい日射しを除けながら、港で海を眺めている。


「あんまりぎりぎりに立つと落ちるぞ」


 腰に二本の短剣を刺したアーロが、海に落ちそうなクッカの首根っこを引っ張ってヘンリクの元へと連れ戻した。


 クッカとアーロとヘンリクは、いよいよ魔大陸に出発するため、港街のサタマに来ていた。ここから魔大陸行きの船に乗り、魔大陸へと渡るのだ。




「魔大陸へは港街サタマから定期船が出ています。我々もその船に便乗しますよ」


 ヘンリクはクッカとアーロの二人に丁寧に説明した。アーロは小さな革表紙のメモ帳に熱心にメモを取っている。


「このくらい、メモしなくても覚えられるのでは?」


 クッカがアーロに聞いた。


「ラシット先生が『教えられた事は全てメモしなさい!』って新しいメモ帳をくれたんだ」


 アーロがくいっと眼鏡をあげるラシットのモノマネをしながら答えた。

 バディ制度の事を理解していなかったアーロへの、ラシットなりの戒めなのかもしれない。


「勇者としての活動をレポートにして学園に提出すると、それで単位が取れて卒業資格が貰えるらしいんだ。俺は、もう勇者になったから、卒業資格なんかいらないと思うんだけど、親も『取れる資格は取っとけ』って言うからさ」とアーロはぶっきらぼうに言う。


「私もその意見には賛成だな。学園の卒業資格は取っておいた方がいい。勇者引退後の再就職に役立つからね。

それにメモを取るのは良いことだよ。その調子で頑張りなさい、アーロ」


 ヘンリクに褒められて、アーロは頬を少し染めた。


「さぁ、じゃあ早速船に乗ろうか。あそこに見える一番大きな船が目的の定期船だよ」


 ヘンリクが指さす先には一際大きな船が停泊していた。高さのあるマストが何本も立っているのが見える。


「よーーし! 私が一番に乗っちゃうよ!」


 そう言うとクッカは一目散に走り出した。ヘンリクはクッカの暴走に慣れてしまったのか、もはや慌てない。


「アーロ、クッカを捕まえなさい。クッカ一人では門前払いでしょうから」


「はい!」


 ヘンリクに命じられアーロはクッカを追いかけた。学園での徒競走のタイムは同年代で一番速かったアーロだが、クッカの速さは異常だった。あっという間に目の届かない場所に消えてしまった。


(こんな所で最年少聖女の実力を発揮しないでくれよ……)


 アーロはクッカを追いかけながら悪態をついた。





 アーロが定期船にたどり着いた頃には、ヘンリクの予想通り、船に繋がる階段状のタラップの前で、船の乗組員と思しき大男にクッカが通せん坊されていた。


「お嬢ちゃん迷子かい? パパやママはどこかな?」


「私は魔大陸開拓の任で派遣された聖女です! 早く乗せてください!」


 大男は腰に手を当てて豪快に笑った。


「お嬢ちゃんが聖女だって? 面白い冗談だね。

それで、パパとママはどこ?」


 クッカが言っている事に一切の間違いはないのだが、アーロは大男の気持ちがよく分かるので当然の反応だと感じた。


 アーロは息を切らしながらクッカに駆け寄った。


「すみません……うちのバディがご迷惑をお掛けしました。これが、国王陛下から出されてた正式な証書です。勇者のアーロと聖女のクッカです」


 アーロはウエストポーチの中から、王城で発行された証書を大男に見せると大男は目を見開いた。


「それじゃあ、このお嬢ちゃんが本当に聖女なのかい?」


「だから、そう言ってるでしょ!!」


 クッカは腰に手を当ててご立腹だ。


「今、指導役の先生も来ますので、三人で乗せてください」


 大男は大きな手でクッカの頭とアーロの頭を撫でた。


「いやぁ、こんなに幼い子供たちが勇者と聖女だなんて思わなかったよ。すまなかったな。

 俺の名前はヨーラだ。この船の乗組員をしている。よろしくな。これ、酔い止めの飴ちゃんだ。船で食べるといい」


 ヨーラはお詫びの印なのか、飴が沢山入った小袋をアーロに渡した。


「お気遣いありがとうございます。いただきます」


 アーロがヨーラにお礼を言っていると、やっとヘンリクが二人に追いついた。


「やぁ、ヨーラ、久しぶり。二人とも私の弟子なんだ。かわいいだろ」


「おお、ヘンリクじゃないか! お前いつの間に弟子を取ったんだ!?」


 二人の様子を見る限り、ヨーラとヘンリクは知り合いらしい。


「つい最近だよ。ちなみに、このクッカはパルタの娘だ」


「えぇ!!?? ……あんまり似てないなぁ」


 ヨーラは今日一番の大声を出し、再びクッカの頭を撫でた。


「ヨーラさん! 早くお船に乗りたいです!」


 クッカは兎にも角にも、早く船に乗りたくて足踏みをした。


「分かった、分かった。さぁ乗っていいぞ。落ちないように気をつけろよ」


「任せろーー!」


 クッカは一目散にタラップを駆け上がった。


「やっぱり、パルタに似てるわ。あの猪突猛進な感じがそっくりだな」


 ヨーラとヘンリクは顔を見合わせて笑った。

 アーロは大人二人の話を聞いて、まだ見ぬクッカの父親の姿を想像した。



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