第14話 アーロとお姫様はお友達!?
今日は待ちに待った任命式の日だ。
クッカは早朝から宿屋の女将さんに追い回されている。
女将さんが「男一人だと、女の子の準備は大変だろ?」と言って名乗り出てきたのだ。
「クッカちゃん! 髪、おばちゃんが結ってあげるからおいで! お城に行くんだから、そのままだと失礼だよ!」
「おばちゃん、大丈夫! 私、このままでも美しいから!」
クッカは髪をブラシで梳かされるのが、大の苦手だ。引っかかると痛いからね。
「クッカ、女将さんがせっかくやってくださるのだから、大人しくしなさい」
いい加減ヘンリクも苛々したのか怒られてしまった。
クッカは諦めて、鏡台の前に座る。
——鏡台の前で女将さんに遊ばれること数分。
「できたよ!」
クッカのウォームベージュの髪の毛を頭のてっぺんで括り、まるでパイナップルのようだ。
「これでは、逆に不敬では?」
クッカは思った事をストレートに述べた。
「そうかい? 私は子供らしくてかわいいと思うんだけど」
「私に……やらせてください」
ヘンリクもクッカと同意見だったようで、苦々しい顔をしながら女将さんと入れ替わった。ヘンリクはクッカの髪の毛を優しく梳かし、女将さんより低い位置でお団子にしてくれた。
「さすが先生! お団子が私の美しさを際立たせていますね!」
ヘンリクは満足気に頷いたが、女将さんは不満そうだった。
もう、女将さんに頭をやらせるのはこれっきりにしよう。
宿の呼び鈴がなったので、女将さんは下へ駆け下りて行って、すぐに戻ってきた。
「お城から迎えの馬車が来たよ! 行っておいで」
女将さんはしゃがんでクッカのほっぺを撫でたので、クッカは女将さんにぎゅうっと抱きついた。
「おばちゃん、行ってきます!」
「行ってきます」
クッカとヘンリクは女将さんに挨拶をして宿を出た。
宿の前にはお城から来た真っ白の馬車が止まっていた。馬車を引いている二頭のお馬さんまで真っ白だ。
ヘンリクが抱っこしてクッカを馬車に乗せてくれた。
馬車の椅子には赤いビロードの布が張ってあり、ふわふわで座り心地抜群だ。
クッカは椅子に座りながら、お尻でぴょんぴょんとバウンドした。
「クッカ、大人しく座っていないと危ないですよ」
ヘンリクに注意されたので、ピシッとお行儀よく座る。
馬車はゆっくりと三十分程かけて、王城に到着した。途中でクッカは眠くなり、ヘンリクの膝を枕にして寝てしまった。
「クッカ、着きましたよ。起きてください」
ヘンリクに起こされ、クッカは眠い目をこすった。うつらうつらしながら馬車から降りたが、目の前にそびえ立つ白亜の城を見るとその眩しさに一気に目が覚めた。
「白い!! 先生、お城が光ってるみたい!!」
「クッカ、お城の中に入ったら、お喋りは禁止です。守れますか?」
「守ります!」
クッカはビシッと敬礼する。
ヘンリクはクッカのほっぺをつついた。
「よろしい。では、行きましょう」
* * *
クッカはヘンリクと一緒に厳かに城の中を歩く。任命式の前に控室に集合するようで、移動中だ。
お喋りしないようにする為に、クッカは口の中に空気を入れて、ほっぺをパンパンに膨らませて歩いている。
長い廊下の先にアーロが誰かと話をしているのを見つけたクッカはアーロの近づくため走り出したが、すぐにヘンリクに首根っこを掴まれた。
「ぐふ!」
ほっぺの空気が一気に外に出る。
「クッカ、走るのも禁止です」
「……アイアイサー」
アーロはプラチナブロンドに碧眼の美しい少女と話をしていた。心なしかアーロの顔が赤い。
クッカはヘンリクに抱えられながら、二人の前まで到着した。
「お久しぶりです、王女殿下。おはよう、アーロ」
(ん!? 王女殿下!? じゃあ、この超絶美少女がお姫様!!??)
「ごきげんよう、ヘンリク」
「おはようございます。ヘンリク先生」
クッカは超絶美少女と目が合った。超絶美少女はクッカと目が合うとにっこりと微笑み、碧眼が一瞬紫色に変わった気がした。
「その子が新しい聖女のクッカですね。神託の通り、凄まじい魔力量です。活躍を期待していますよ」
クッカは超絶美少女に声をかけられ、嬉しさと恥ずかしさで顔が赤くなった。
「ありがとうございます!頑張りましゅ!」
緊張して、ちょっと舌を噛んだ。
「ふふふ、可愛らしいわ」
超絶美少女はアーロの手を取った。
「それじゃあね、アーロ。任命式で会いましょう」
「はい……ルノ様……」
超絶美少女はにこっとしてから踵を返して、長い廊下を歩いて消えた。
アーロはその間、ずっと頬を染めてぼぉっとしている。
「アーロは、お姫様の事が好きなんだね。お互いに名前で呼び合っちゃう仲なんだね」
クッカがそう言うと、アーロはバッと振り返り
「ち、違う! 幼馴染なだけ!」
と大声で返したので、ヘンリクに睨まれた。




