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無能と追放された〈戦後処理官〉、英雄たちの失敗を全部押し付けられていただけでした 〜戦争は勝ったのに滅びる国で、俺は“後始末”を任された〜  作者: 風牙シオン


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第71話 試験開始

 試験導入は、静かに始まった。


 宣言もない。

 拍手もない。


 ただ、現場が動く。


 山間部再編地区。


 仮設医療拠点が設置され、搬送ルートが再構築される。


「中継点、稼働確認」

「人員配置、完了」


 エレナの報告は簡潔だ。


 その隣で、カタリーナがチェックリストを見ている。


「影響予測、更新」


 項目は増えていた。


 天候。

 交通。

 人員疲労。

 複数同時発生。


「最悪ケース、搬送六十五分」


 彼女が言う。


「まだ危険域ね」


 アレンは頷く。


「だから追加します」


「何を」


「待機医療班」


 クラウスが眉を上げる。


「コストが跳ねるぞ」


「はい」


 短い返答。


「だが、ここは削れない」


 一方。


 エリオットは別の資料を見ている。


「……非効率だ」


 その言葉は小さい。


 だが、明確だ。


「冗長性が高すぎる」


「意図的です」


 アレンは答える。


「最悪ケースを潰すため」


「そのために、全体効率を落とすのか」


 エリオットの視線は鋭い。


 カタリーナが静かに言う。


「今回は“落とす”のが目的じゃない」


「では何だ」


「“見落とさない”」


 短い沈黙。


 その言葉は、以前なら衝突していた。


 だが今は――


 完全には否定できない。


 同時に、都市周縁部。


 治安不安定区域。


 こちらは別の問題を抱えていた。


「集会、再び拡大傾向」


 報告。


「情報の拡散速度、上昇」


 スクリーンには、断片的なデータが流れる。


 再び、同じ兆候。


 分断の火種。


「……ここが本番です」


 アレンが言う。


 エリオットが即座に返す。


「情報統制を提案する」


「却下します」


 即答。


「前回、それで燃えた」


「今回は違う。選別する」


「選別は、誰がする」


 短い応酬。


 沈黙。


 カタリーナが言う。


「今回は“説明”よ」


 全員が彼女を見る。


「公開と同時に、前提と限界を説明する」


「そんなもので止まると思うか」


 クラウスが言う。


「止まらないわ」


 カタリーナは認める。


「でも、歪みは減る」


 アレンが頷く。


「……やります」


 その日の夜。


 初の試験対応が発生した。


 山間部。


 急病通報。


「搬送開始!」


 時計が動く。


 以前と同じ。


 だが今回は、違う。


「中継点、起動!」


 途中で医療班が引き継ぐ。


 処置が早まる。


「心拍、安定」


 報告。


 到着。


 生存。


 短い記録。


 だが。


 確実に違う結果。


 ベルク本部。


 エレナが報告する。


「……成功事例」


 誰もすぐには喜ばない。


 たった一件。


 それでは足りない。


 だが。


 ゼロではない。


 アレンは、静かに言う。


「……次です」


 戦後処理官は知っている。


 証明は、一度では足りない。


 繰り返して、初めて意味を持つ。


 そして今。


 その最初の一歩が、踏み出された。


(第71話 了)

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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