表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と追放された〈戦後処理官〉、英雄たちの失敗を全部押し付けられていただけでした 〜戦争は勝ったのに滅びる国で、俺は“後始末”を任された〜  作者: 風牙シオン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/75

第70話 条件

 条件は、翌朝には届いていた。


 アウストリア政府からの正式文書。


 厚い紙。簡潔な文面。


『再設計案の試験導入を一部地域で認める』


 エレナが静かに読み上げる。


「対象地域、二カ所。

 期間、三か月。

 結果により、本格導入を判断」


 クラウスが鼻で笑う。


「ずいぶん上からだな」


「当然です」


 アレンは答える。


「こちらは信用を失っている」


 カタリーナが確認する。


「条件はそれだけ?」


「いいえ」


 エレナが続ける。


「“治安措置には一切干渉しないこと”」


 沈黙。


 つまり。


 ヴェルナーのやり方には触れるな、という意味だ。


「……線を引かれたわね」


 カタリーナが呟く。


「ええ」


 アレンは頷く。


「ですが、十分です」


 その一言に、全員がわずかに反応する。


「本気?」


 クラウスが問う。


「はい」


「相手のルールで戦うことになるぞ」


「最初からそうです」


 短い返答。


 エリオットが口を開く。


「試験導入で失敗すれば、完全に終わります」


「ええ」


「成功しても、主導権は向こうにある」


「それでもです」


 アレンは視線を上げる。


「証明は、必要です」


 その言葉には、もう迷いはなかった。


 その日の午後。


 試験対象地域が発表された。


 ――山間部再編地区(旧医療遅延地域)

 ――都市周縁部(治安不安定区域)


「……最も難しい場所を選んできた」


 エレナが言う。


「当然です」


 アレンは答える。


「成功しても意味がある場所」


 現地。


 山間部の町。


 閉鎖された病院の前に、新しい設備が搬入されている。


「また来たのか」


 住民の声は冷たい。


「今度は何だ」


 疑い。


 当然だった。


 前に来たとき、守れなかった。


 アレンは、その視線を受け止める。


「……試験です」


 短い言葉。


「今度は、止めるために来ました」


 住民は、すぐには信じない。


 だが。


 誰も追い返さない。


 それが、今の距離だった。


 ベルク。


 カタリーナが準備を進める。


「影響予測モデル、再確認」

「搬送シミュレーション、三重検証」


 エリオットは、少し離れた位置から見ている。


「……やるつもりか」


「やります」


 アレンは即答する。


 エリオットはしばらく黙り、やがて言う。


「条件がある」


 全員が彼を見る。


「合理監査を私が担当する」


 空気が変わる。


「あなたの設計が甘くないか、確認する」


 カタリーナが言う。


「つまり監視ね」


「検証です」


 短い応酬。


 アレンは、少しだけ考えた。


 そして。


「……受けます」


 その言葉で、三者が揃った。


 合理。

 倫理。

 設計。


 だがそれは、まだ机上だ。


 現実は――


 もっと不確定で、もっと厳しい。


 戦後処理官は知っている。


 再設計は、書けば終わりではない。


 動かした瞬間に、試される。


 そして今。


 その試験が、始まろうとしていた。


(第70話 了)

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ