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無能と追放された〈戦後処理官〉、英雄たちの失敗を全部押し付けられていただけでした 〜戦争は勝ったのに滅びる国で、俺は“後始末”を任された〜  作者: 風牙シオン


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第69話 提示

 再設計案は、静かに世界へ送られた。


『戦後復興管理機構 再設計草案』


 かつてのような注目はない。

 報道も、小さい。


 それでも。


 必要な場所には、届く。


 ベルク本部。


「反応は?」


 アレンの問い。


「限定的です」


 エレナが答える。


「関心は低い。

 信頼が戻っていない」


 当然だった。


 一度壊れた制度は、簡単には戻らない。


 カタリーナが資料を閉じる。


「でも、ゼロじゃない」


「ええ」


 小国二つが、再参加を検討。


 理由は単純。


 自力での再建が、限界に近いから。


「……必要だから戻る」


 クラウスが呟く。


「信じてるわけじゃない」


「それで十分です」


 アレンは答える。


 その日の午後。


 一通の正式な要請が届いた。


 差出人――

 アウストリア政府。


『再設計案について協議を希望』


 短い文。


 だが意味は重い。


「……来ましたね」


 エレナが小さく言う。


「ええ」


 アレンは頷く。


 場所は指定されている。


 中立都市ベルクではない。


 アウステル。


 ヴェルナーの本拠地。


 数日後。


 アウステル、政庁。


 高い天井。

 整えられた空間。


 無駄がない。


 ヴェルナー・クライストは、既に席に着いていた。


「ようこそ」


 穏やかな声。


 以前と変わらない。


 だが。


 立場は、完全に逆転している。


「再設計案、拝見した」


 彼は資料を軽く叩く。


「興味深い」


「ありがとうございます」


 アレンは座る。


 沈黙。


 短いが、重い。


「……だが」


 ヴェルナーは言う。


「遅い」


 その一言。


「あなたは、一度壊した」


「はい」


 否定しない。


「その責任は、重い」


「承知しています」


 ヴェルナーは、わずかに目を細める。


「それでも、続けるのか」


「はい」


 即答だった。


 その迷いのなさに、ほんの一瞬だけ空気が動く。


「なぜだ」


 問い。


 アレンは答える。


「止めれば、もっと壊れる」


 短い。


 だが、十分だった。


 ヴェルナーは、少しだけ笑う。


「……ようやく現実を見たか」


「最初から見ていました」


「いや」


 首を振る。


「見ていなかった」


 その言葉は、責めるものではない。


 ただの事実。


「あなたは“守ろうとした”」


 静かな指摘。


「だが国家は、守る対象ではない」


 アレンは、目を逸らさない。


「では何ですか」


 ヴェルナーは答える。


「維持するものだ」


 短い。


 そして明確。


「維持のためには、切る」


 沈黙。


「それができないなら、任せるべきではない」


 アレンは、わずかに息を吐く。


「……その通りです」


 初めての肯定。


 だが。


「だから、切り方を変えます」


 ヴェルナーの目が、わずかに動く。


「ほう」


「これまでは、“結果として切っていた”」


 アレンは続ける。


「これからは、“事前に見て選ぶ”」


 資料を指す。


「影響予測監査」


 ヴェルナーは、しばらくそれを見ていた。


 やがて言う。


「……甘いな」


 しかし、その声にはわずかな興味がある。


「すべては救えない」


「はい」


「それでもやるのか」


「はい」


 短い応酬。


 やがてヴェルナーは椅子に背を預けた。


「一つ、認めよう」


 その言葉で、空気が変わる。


「あなたは前より強くなった」


 アレンは何も言わない。


「だが」


 続く。


「国家は待たない」


 その一言。


「我々は進む」


 それは、宣言だった。


「あなたの設計が間に合うかどうか」


 視線が交わる。


「試してみるといい」


 会談は、それで終わった。


 帰路。


 エレナが静かに言う。


「……受け入れられたのですか」


「いいえ」


 アレンは首を振る。


「試されているだけです」


 戦後処理官は知っている。


 敗北の後に与えられるのは、

 チャンスではない。


 条件付きの猶予だ。


 そして今。


 その猶予は、静かに始まっている。


(第69話 了)

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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