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無能と追放された〈戦後処理官〉、英雄たちの失敗を全部押し付けられていただけでした 〜戦争は勝ったのに滅びる国で、俺は“後始末”を任された〜  作者: 風牙シオン


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第68話 再設計

 機構本部、第三会議室。


 かつて満席だったその部屋には、今や数人しかいない。


 アレン。

 エレナ。

 カタリーナ。

 クラウス。


 そして、少し離れて座るエリオット。


「……再設計案を提示します」


 アレンが静かに言う。


 机の上に、一枚の図が置かれる。


 以前より、シンプルだ。


「三層監査制度」


 短い言葉。


「合理監査。

 倫理監査。

 影響予測監査」


 カタリーナが目を細める。


「影響予測?」


「例外を“事後”ではなく“事前”に扱う」


 アレンは続ける。


「搬送時間の最大値だけでなく、

 “最悪ケースの連鎖”をシミュレーションする」


 エレナが資料をめくる。


「……複数条件分岐」


「はい」


「災害、交通遅延、人的不足を重ねる」


 クラウスが呟く。


「面倒だな」


「必要です」


 即答だった。


 エリオットが口を開く。


「非効率です」


 空気が少し張る。


「すべての例外を考慮すれば、決定は止まる」


「すべてではありません」


 アレンは首を振る。


「“致命的な例外”のみです」


 カタリーナが静かに言う。


「つまり、“切り捨てないための線引き”ね」


「はい」


 短い肯定。


 エリオットは腕を組む。


「その線は誰が引く」


「機構です」


「結局同じだ」


 鋭い指摘。


「人が決める以上、偏りは消えない」


 沈黙。


 アレンは、その言葉を受け止める。


「……消えません」


 認める。


「だから、公開する」


 エリオットの目がわずかに動く。


「判断基準と、シミュレーション結果」


「また透明性か」


「前とは違います」


 アレンははっきり言う。


「今回は“解釈込み”で公開する」


 カタリーナが頷く。


「データだけじゃなく、前提も出す」


「はい」


 エリオットは、しばらく黙った。


 やがて言う。


「遅い」


「ええ」


 アレンは否定しない。


「ですが、これが必要です」


 短い間。


 エリオットは、視線を落とした。


「……一つだけ認めます」


 全員が彼を見る。


「あなたは、前より正確になった」


 それは、肯定ではない。


 だが否定でもない。


 その夜。


 試験シミュレーションが行われた。


 対象は、再び医療再編。


 同じ条件。


 同じ地域。


 だが――


「最悪ケース、搬送七十分」


 エレナが報告する。


「複数遅延を重ねた場合」


 沈黙。


 前回は見えていなかった数字。


 カタリーナが言う。


「これなら、止められた」


「はい」


 アレンは静かに答える。


 クラウスが笑う。


「ようやく“見えた”な」


 アレンは、ゆっくりと頷く。


「……はい」


 戦後処理官は知っている。


 正しさは、単純ではない。


 合理だけでは足りない。

 倫理だけでも足りない。


 必要なのは――


 “見落とさない仕組み”。


 その第一歩が、今、形になった。


 だが。


 これはまだ、机上の設計に過ぎない。


 問題は――


 これを、世界が受け入れるかどうかだった。


(第68話 了)

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