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無能と追放された〈戦後処理官〉、英雄たちの失敗を全部押し付けられていただけでした 〜戦争は勝ったのに滅びる国で、俺は“後始末”を任された〜  作者: 風牙シオン


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第59話 分裂の宣言

 声明は、内部から出された。


 それが最も深い亀裂だった。


『機構は合理性を最優先とすべきである』


 簡潔な文面。

 だが署名は重い。


 若手職員を中心とした二十七名。

 そしてその筆頭に――


 エリオット・ハーグ。


 ベルク本部。


「……正式な手続きを踏んでいる」


 エレナが書面を確認する。


「内部提言として受理せざるを得ません」


 会議室は静まり返る。


 クラウスが吐き捨てる。


「反乱だな」


「提言です」


 エリオットは訂正する。


 その声は、落ち着いている。


「機構の方向性に対する、正当な意見表明です」


 カタリーナが視線を向ける。


「あなたは“合理”を掲げた」


「はい」


「では、リオンの件も合理だったと?」


 わずかな間。


「はい」


 はっきりとした答え。


 空気が、凍る。


「全体として救われた命は増えている。

 一件で制度を否定することはできません」


 アレンは、その言葉を黙って聞いていた。


 やがて、口を開く。


「あなたは、迷いがない」


「迷いは不要です」


 即答だった。


「迷いは判断を遅らせる」


「遅らせるべき時もある」


 アレンの声は低い。


 エリオットは首を振る。


「その遅れが、今回の暴動を招いた」


 否定できない。


 アレンは、沈黙した。


 その沈黙が、答えになってしまう。


「……あなたは、変わりました」


 エリオットが言う。


「以前のあなたは、もっと冷静だった」


 カタリーナが割って入る。


「違う。彼は初めて“見た”のよ」


「何を」


「制度が人を傷つける瞬間を」


 エリオットはわずかに眉をひそめる。


「それは前から存在していました」


「見ていなかっただけです」


 静かな応酬。


 その夜。


 合理派の職員たちは、小さな会議室に集まっていた。


「機構は弱くなった」

「政治に引きずられている」

「アレンは揺らいでいる」


 エリオットは、その中心に立つ。


「我々が軸になる」


 その言葉に、頷きが広がる。


「合理を取り戻す。

 それが機構の使命だ」


 一方、別室。


 カタリーナはアレンと向き合っていた。


「あなたは、止められると思う?」


「止めるつもりはありません」


 即答。


「では?」


「通す」


 短い言葉。


「合理も、倫理も」


 カタリーナは首を振る。


「それは無理よ」


「ええ」


 アレンは認める。


「だから、設計を変える」


 だが、その声にはわずかな迷いがあった。


 その迷いを、彼自身が自覚している。


 翌日。


 新たな報告が届く。


「加盟国二カ国、追加で再検討表明」


 エレナの声が重い。


「機構の方針が不明確との理由」


 クラウスが笑う。


「分裂が外に見え始めたな」


 窓の外。


 ベルクの空は曇っている。


 戦後処理官は知っている。


 制度が割れる時、

 それは外から壊されるのではない。


 内側から、正しさ同士が衝突する。


 そして今。


 その衝突は、もう止まらない。


(第59話 了)

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