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無能と追放された〈戦後処理官〉、英雄たちの失敗を全部押し付けられていただけでした 〜戦争は勝ったのに滅びる国で、俺は“後始末”を任された〜  作者: 風牙シオン


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第56話 発火点

 暴動は、予告なく始まったわけではない。


 前日から、呼びかけは出ていた。


『機構は弾圧の共犯か、否か』

『監査を名目に国家を縛るな』


 両極の声が、同時に広場へ集まる。


 ベルク本部前。


 午前十時。


 群衆は、これまでで最大規模に膨れ上がっていた。


「弾圧を止めろ!」

「内政干渉をやめろ!」


 同じ場所で、真逆の叫びがぶつかる。


 庁舎内。


「警備増員は?」


 アレンの問い。


「最小限に抑えています」


 エレナが答える。


「武装を強めれば、緊張が上がる」


 その判断は、アレンのものだった。


 ――機構は軍ではない。


 ――武力で守る姿を見せるべきではない。


 それが彼の考えだった。


 正午。


 最初の衝突。


 押し合い。


 罵声。


 誰かが瓶を投げる。


 割れる音。


 それが、合図だった。


 機構の旗が引きずり下ろされる。


 それを止めようとした若手職員が殴られる。


「やめろ!」


 警備が前に出る。


 だが装備は軽い。


 盾もない。


 石が飛ぶ。


 窓ガラスが一斉に割れた。


 庁舎内に悲鳴が響く。


「負傷者発生!」


 エレナの声が硬い。


 クラウスが叫ぶ。


「増援を呼べ!」


「待ってください」


 アレンが制止する。


「武装部隊を入れれば、機構は完全に政治化する」


「もう政治化している!」


 クラウスの怒声。


 その瞬間、入口が破られた。


 数十人が雪崩れ込む。


「共犯者を出せ!」


 混乱。


 机が倒れる。


 書類が散乱する。


 エリオットが前に出る。


「落ち着け! 我々は――」


 拳が飛ぶ。


 彼は床に倒れた。


 カタリーナが職員をかばう。


「医療班を!」


 アレンは、一瞬だけ動かなかった。


 ほんの一瞬。


 その判断の遅れが、決定的だった。


 警備が崩れ、内部に火が入る。


 小さな炎。


 だが煙は濃い。


「退避を!」


 クラウスが叫ぶ。


 ようやくアレンは命じた。


「外部治安部隊、要請」


 だが遅い。


 到着まで十分。


 その十分で、負傷者は二桁に増えた。


 夜。


 庁舎は鎮圧された。


 治安部隊が入り、数十名を拘束。


 だが映像は既に世界に広がっている。


 ――機構庁舎、暴動

 ――負傷者多数

 ――治安部隊投入


 会議室。


 沈黙。


 エリオットの額には包帯。


「……あなたが遅れた」


 その声は震えている。


「最初に増援を呼ぶべきだった」


 誰も否定しない。


 カタリーナが、静かに言う。


「あなたは、武装を避けた」


「はい」


 アレンは答える。


「それが、火を大きくした」


 初めて。


 彼ははっきりと言った。


「判断を誤りました」


 沈黙。


 重い、重い沈黙。


 クラウスが息を吐く。


「……珍しいな」


「ええ」


 アレンは視線を落とす。


「合理ではなく、理念を優先した」


 エリオットが低く言う。


「甘さです」


 その言葉は、刃のようだった。


 外では、さらに声が上がる。


「機構は解体しろ!」


 戦後処理官は知っている。


 正しさだけでは守れない。


 だが。


 正しさを曲げれば、もっと壊れる。


 今、機構は両側から燃えている。


 そしてその発火点は――


 彼自身だった。


(第56話 了)

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