表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と追放された〈戦後処理官〉、英雄たちの失敗を全部押し付けられていただけでした 〜戦争は勝ったのに滅びる国で、俺は“後始末”を任された〜  作者: 風牙シオン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/75

第49話 例外という言葉

 翌朝、ベルク本部の前には人垣ができていた。


「機構は解体しろ!」

「冷血官僚は帰れ!」


 石はまだ飛んでいない。

 だが、怒号は確実に増している。


 庁舎内。


「抗議デモ、三都市で同時発生」

「加盟国二か国が再編再審を要求」


 エレナの報告は冷静だが、その指先はわずかに強く紙を握っていた。


 会議室には、アレン、カタリーナ、クラウス、エリオット。


 重い沈黙。


「統計上、再編後の救急死亡率は低下しています」


 エリオットが口を開く。


「今回の件は、痛ましい。しかし――」


「例外?」


 カタリーナが遮る。


 視線が鋭い。


「あなたは今、それを言おうとしましたね」


 エリオットは、ためらわない。


「はい。例外です」


 空気が凍る。


「全体で見れば、救われる命は増えている。

 一件の悲劇で制度を揺らすのは非合理です」


 クラウスが、低く言う。


「その一件が、当事者にとっては全てだ」


「感情論です」


 エリオットの声は固い。


「国家は感情で運営できません」


 アレンは、ずっと黙っていた。


 やがて、ゆっくりと口を開く。


「例外という言葉は便利です」


 全員の視線が向く。


「例外と呼んだ瞬間、それは処理対象になる」


 エリオットが食い下がる。


「処理できなければ、制度は破綻します」


「ええ」


 アレンは頷く。


「だが、処理したという事実は消えない」


 沈黙。


 窓の外では、機構の旗が地面に落ちている。


 カタリーナが、書類を机に置いた。


「私は正式に倫理審問を要求します」


「……公開で?」


 エレナが確認する。


「ええ。隠せば、さらに疑念を招く」


 クラウスがアレンを見る。


「やるのか?」


 わずかな間。


「やります」


 アレンの声は静かだ。


「制度は、疑問に耐えられなければならない」


 その日の午後。


 ヴェルナーから声明が届く。


『悲劇に哀悼を。

 しかし国家再建は止めない』


 その一文が、新聞の見出しに躍る。


 世論はさらに割れる。


「冷酷だが正しい」

「正しいが冷酷だ」


 夜。


 アレンは一人、リオンの診療記録を読んでいた。


 発症時刻。

 搬送開始。

 到着。

 心停止。


 すべてが記録通り。


 不備はない。


 それでも。


「……四十分」


 彼は小さく呟く。


 数字が、重く胸に沈む。


 戦後処理官は知っている。


 例外は、必ず存在する。


 だが。


 例外を切り捨て続ければ、

 いつか制度そのものが、例外になる。


 公開倫理審問は三日後に決まった。


 群衆は待っている。


 正しさが裁かれる瞬間を。


(第49話 了)

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ