表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と追放された〈戦後処理官〉、英雄たちの失敗を全部押し付けられていただけでした 〜戦争は勝ったのに滅びる国で、俺は“後始末”を任された〜  作者: 風牙シオン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/75

第45話 正当化

 アウストリアからの最初の案件は、迅速だった。


 件名――

 『地方自治体再編に伴う財政監査要請』


 提出書類は完璧に整っている。


「赤字率、三十七%。

 人口減少、加速。

 補助金依存、八割超」


 エレナが読み上げる。


「数字だけ見れば、再編は妥当です」

「ええ」


 アレンは、資料をめくる。


「問題は、対象地域です」


 地図が広げられる。


 削減対象は、反政府色の強い三地区。


「……露骨ですね」


 クラウスが呟く。


「表向きは財政合理化」

「実質は、政治整理か」


 だが、数字は嘘をついていない。


 赤字は事実。

 補助金依存も事実。


 ヴェルナーは、すでに次の一手を打っていた。


 公開演説。


「我々は、感情ではなく持続性を選ぶ」


 拍手。


「国家を守るため、必要な再編を行う」


 その背後に、機構の名が添えられる。


 ――戦後復興管理機構の監査に基づく判断。


 アレンは、その記事を読みながら静かに言う。


「……早い」


「何がですか」


「正当化が」


 まだ正式な勧告は出していない。


 だが、“監査予定”という言葉だけで、世論は動く。


 数日後、正式な監査団が派遣された。


 アレンは、直接立ち会うことにした。


 現地は、小さな工業都市。


 閉鎖予定の工場。

 削減対象の病院。


「これが、非効率か」


 老人が呟く。


「数字の上では」


 アレンは、事実として答える。


「では、私たちは何だ」


 返す言葉がない。


 夜、監査団の宿舎。


 若手職員エリオットが、興奮気味に言う。


「正しいですよね」


 彼は、目を輝かせている。


「無駄は切るべきです。

 国家のために」


 アレンは、彼を見る。


「“国家”とは何ですか」


「持続する仕組みです」


「人を含みますか」

「……当然です」


「では、今日会った人たちは」


 エリオットは、一瞬言葉を失う。


「……犠牲です」


 その声は、迷いが少ない。


 アレンは、わずかに目を伏せた。


 数日後、監査結果が出る。


 再編妥当。


 条件付きで補助金削減承認。


 ヴェルナーは、すぐに発表した。


「機構の判断を尊重し、再編を実施する」


 抗議デモが起きる。


「機構は冷酷だ!」

「外から口を出すな!」


 矛先は、政府ではなく――機構へ向かう。


 ベルク本部。


「……想定内です」


 アレンは、静かに言う。


「政治的責任の回避」

「利用されているな」


 クラウスが吐き捨てる。


「ええ」


 エレナが、資料を握る。


「でも、判断は間違っていません」

「はい」


 アレンは、はっきり答える。


「間違ってはいない」


 それが、最も厄介だった。


 夜。


 ヴェルナーから書簡が届く。


『感謝します。

 国家は一歩、持続へ近づいた』


 その文字は、美しい。


 アレンは、ゆっくりと封を閉じる。


 戦後処理官は知っている。


 正しさは、刃になる。


 だが今。


 その刃は、自分の手ではなく、

 他者の手で振るわれている。


 そしてそれを――


 完全には、止められていない。


(第45話 了)

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ