Epilogue
最終話です!
―――……一年後
(ついに、この日が来たのね……)
目の前に現れた、大きな扉の前で深呼吸を繰り返す。
「行くぞ、リディア」
「はい、お父様」
お父様の言葉に笑みを浮かべてその手を取れば、目の前の扉が開く。
扉の先には、拍手をしてくれる親族の姿があった。
そして、その正面に佇み静かに笑みを浮かべる、純白の衣装を纏った大好きな彼の姿を見て、自然と笑みが溢れる。
真っ青な空の下、明るく温かな日差しが降り注ぐこの日、私とイヴァンは、神の名の下に結ばれる。
イヴァンと結婚をすることを決めてから一年という月日が流れた。
その間に結婚の準備だけでなく、イヴァンが正式に辺境伯当主となる手続きも行っていたため、一年という時間を要した。
そして今日、無事に私達は結婚式を挙げ、イヴァンはこの日をもってノワール辺境伯様となる。
「……リディア」
彼が微笑み私の名前を呼ぶ。
私はその言葉に微笑みを返し、「イヴァン」と彼の名を呼べば、顔を見合わせ笑い合ったのだった。
親族のみの結婚式が執り行われた後、その親族を引き連れて邸のガーデンにてパーティーを行った。
ウエディングドレスから違うドレス……、銀地に金糸の刺繍が施されたドレスに着替え、彼もお揃いの衣装を身に纏ってガーデンへと向かうと、そこで待っていたのは私達を心から祝福してくれる温かな人達だった。
「っ、本当に素敵だわ……!」
「えぇ、本当に。 素敵な女性になったわね、リディア」
「ありがとうございます、お義母様方」
イヴァンのお母様と私のお母様が並び祝福してくれるのを見て、本当に結婚したんだなという実感が湧いてくる。
嬉しくて笑みを溢せば、隣のイヴァンはお義父様方に囲まれていた。
「イヴァン、リディア嬢を泣かせたら私達が飛んでくるからな」
「もし娘を悲しませたら連れ帰る」
「……気を付けます」
二人のお父様からの圧にたじたじになっているイヴァンを見て、助け舟を出すため、私はお義父様方に向かって声をかけた。
「大丈夫です、イヴァンはとっても優しいので」
「っ、お、おい」
私が彼の腕に抱きつきそう口にすれば、彼は慌てたように顔を赤くする。
その姿を見て両親の間に笑いが起こる。
両親と別れた後に声をかけてきたのは。
「お姉様〜!」
「レイラ!」
ギュッと手を握り合い笑みを溢せば、レイラは興奮気味に言った。
「本当に素敵だったわ!
ウエディングドレスも、今のドレスももちろん素敵! 本当におめでとう!」
「ありがとう、レイラ。
貴方のドレスもとても素敵ね。
……ところで、レイラはクラウス殿下とはどうなの?」
レイラはその言葉に目を見開いた後、少し離れたところにいるクラウス殿下とイヴァンの姿を見て首を振った。
「私は結婚したいと思っているんだけれど……、最近分からなくて」
「分からない?」
「えぇ。 本当にクラウスは私のことが好きなのかなって」
「!」
驚く私に、レイラは「お、お祝いの日に話すことではないわよね」と慌てたように言った。
私は言葉をかけようとしたが、やめた。
(私から見たら、クラウス殿下はレイラのことをとても好きだと思うけれど……)
レイラは気付いていないようだけれど、先程からレイラに視線を向けているし……、これは当事者の二人が話すべきこと、よね。
私は別の言葉をレイラにかけた。
「もう一度よく話し合った方が良いと思うわ。
私も、イヴァンと喧嘩してしまう時があるのだけれど、そういう時って大抵お互いにすれ違ってしまっている時だもの。
言葉を交わすことはとても大事だと思うわ」
「! ……そうね、最近彼は忙しいから話し合いが出来ていないだけかも。
ありがとう、お姉様。 もう一度話し合ってみるわ」
「えぇ」
私が頷いてみせれば、少し離れた場所にいた二人が私達の元に歩いてきた。
クラウス殿下は笑みを浮かべ、口を開く。
「改めておめでとう、イヴァン、それからリディア嬢。
ついに二人か結ばれて、幼馴染として、そして親友として嬉しいよ」
「親友……」
イヴァンはそう呟いたかと思うと、「そうだな」と小さく笑みを浮かべて言った。
「クラウスにもレイラ嬢にも、色々と迷惑をかけたな。
ありがとう、これからも宜しく」
「「……!」」
イヴァンの言葉に二人は顔を見合わせた後、笑みを浮かべて言った。
「ついにクラウスが私を親友だと認めたよ!」
「そうですね、私も初めてイヴァン様の笑っているお姿を拝見しました」
「お前らな……」
イヴァンは少し顔を赤くして怒る。
私はそんなイヴァンを宥めつつ、彼の言葉に同調した。
「本当に、レイラにもクラウス殿下にも感謝しております。
私とイヴァンを会わせて下さったのは、紛れもないお二人ですから」
「「「!」」」
イヴァンの顔を見上げ微笑む。
クラウス殿下は「そうか」と笑って言った。
「私達が恋のキューピッドになったというわけだね。
ふふ、嬉しいな」
「そうですね」
レイラとクラウス殿下も、顔を見合わせ笑い合う。
そうして笑い合うお似合いの二人に、私も心から二人が結ばれることを祈ったのだった。
そして。
「お疲れ様、リディア」
「イヴァンもお疲れ様」
静寂な夜の中、二人でワイングラスを片手に乾杯すれば、彼は一気にワインを煽った後、はぁーっと長く息を吐き椅子に腰を下ろした。
「怒涛の一日だったな」
「そうね……」
結婚式にお披露目パーティーとお祝いムード一色でとても楽しかったけれど、着替えや準備やらで息をつく暇がなかったというのもあり、終わってからドッと疲れが来た。
「今日は早めに寝るか?」
「!」
思わずその言葉に彼の顔を見上げれば、イヴァンはおかしそうに笑った。
「どうした、そんな顔をして」
「〜〜〜イヴァンの馬鹿! 知らない!」
揶揄う気満々だ、ということに気が付いた私は、火照った顔を見られないようそっぽを向けば、彼は慌てたように「嘘だ、冗談」と口にし、私のことを後ろから抱きしめた。
そして、耳元で言った。
「……この日が来るのを、ずっと待ち侘びていたんだ。
やっと、リディアを独り占めできる」
「そんな、私の心はイヴァンだけのものだよ? ……だけど」
「!」
私はそんな彼の頬に手を添え、じっと見つめて言った。
「私も、イヴァンの心が私のものだって、確かめさせて……?」
「! 〜〜〜全く、困ったお姫様だ」
そう口にするや否や、彼は私からグラスを取りそれをテーブルの上に置く。
そして、私を横抱きにすると、瞳の奥に秘かな情熱を灯して言った。
「仰せのままに、姫」
私はその言葉に、ギュッと彼の首に抱きついたのだった。
自分を卑下し、衝撃で前世の記憶を思い出した少女は、他者の痛みが分かる少女へと変貌を遂げる。
そのおかげで、周りの人々を救い、傷付いていた彼に寄り添い続け、結果愛する者と手を取り合うことが出来た。
勘違いから始まった恋愛は、本物の愛となり、少女は自ら幸せを手にしたのだ。
真実と愛を巡る二人の物語は、これからも続いていく……―――
第二章、いかがでしたでしょうか!?
これにて本編、全て完結です!
不器用な二人のすれ違い恋愛物語、書いているこちらもハラハラしました…(笑)
二人の恋愛模様、心の機微などが読者の皆様にも伝わっていると良いなと思います。
本編は完結しましたが、この後閑話2としてイヴァン視点、レイラ視点(クラウス殿下との恋愛模様も明らかに!)、それから番外編として後日談も予定しております。
マイペースの更新になるかと思いますが、もう少々お付き合い頂けたら嬉しいです。
改めまして、ここまでお読み下さった皆様、ブクマ登録、評価、誤字訂正など本当にありがとうございました!
2022.1.3.




