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20話 専門用語でTS幼女と呼ぶそうです

 秋が過ぎて、すっかり冬のはじまりです。

 ある朝、Dr.ヒラガが言いました。


「エレキテル、あたらしい体ができたぞ」


 そういえば、40日ほど前にそんなお願いをしたような気がしますね。

 電気属性の必殺技が出せるようにしたいって頼んだんでしたっけ。決して忘れてたわけじゃないんですよ?


 錬金術で錬成された新しい肉体に、現在持っている記憶や知能部分……つまりボクの脳のデータを移せば作業は完了します。


「手から電気が出るんですよね!?」

「うむ、希望どおり体そのものを帯電体質に調整したのだ」


 わくわく。

 ちょっと忘れてた……じゃなかった、うっかり意識の彼方になっていたとはいえ、本当に実装されるとなるとわくわくするのです。


「体同士をコードで繋いで、と。よし、通電によるデータ移行開始だ」


 大きなカプセルはもやもやになっていて中身は見えませんが、ここにボクのあたらしい体が眠っているはず。生まれてきたときと同じで懐かしいです。

 今より毛艶が良くなってたらいいですねぇ。


 びびびっと感電するみたいな感覚があって、一瞬視界が真っ暗になります。

 そして、目覚めると──



「わぁ、あたらしい体です! さっそく必殺技を試して──」



 手が!!

 肉球がない!!

 毛もない!!



「ちょっと、ドクター、これ……。もしや、ニンゲン型の外装では!?」



 カプセルのガラスに映ったボクの姿は、ニンゲンの子供になっていました。

 しかも女の子。ボク、オスのはずなんですけど!? 


「すまん。失敗した」

「違いすぎて絶対もっと早い段階で気づいてましたよね!? 失敗したのに躊躇なく脳を移した理由は!?」

「まあ電気さえ出ればいいのかと思って、外装デザインが大きく変わったことはさして気にせず進めた」


 えええええ。

 レアな三毛のオスであることが、電気よりも重要なボクのアイデンティティだったんですけどー!?



 ***



 前の体は生体機能停止によりお亡くなりになったので、もう一度ネコに戻してもらうまで──さらに40日間待たなければいけません。

 それまでのあいだ、ボクはニンゲンの女児として過ごすはめになってしまいました。


「エレちゃん、こっちの生地はどうですか? リボンもしていいですか?」


 なぜかヒナギクさんはとっても嬉しそうです。

 ミシンのアタッチメントで縫った着物を、次々とボクに着せて遊んでいます。


「赤い着物ならお揃いですね。これを着ていっしょにお買い物へ行きましょう」

「ううう、ボク、まだ二足歩行に慣れてないのですよ」

「わたくしが抱っこしますから大丈夫です。ニンゲン型なら、ステルス迷彩を施さなくてもスーパーに入れますね」


 ニンゲンになった感想。

 まず、歩きづらいです。次に、全身が硬いです。それに聴覚や嗅覚があまり敏感じゃないから、ソワソワして落ち着かないのですよ。ヒト科のみなさん、よく耐えられますねぇ。


 しかも……。

 今回のお願いだった肝心の必殺技は、いつでも自在に出せるわけではないようなのです。手に力を込めたり、念を込めたりしてみたのですが、なにも起こりません。

 ドクターは帯電体質にしたって言ってたはずなんですが、こっちも失敗したんでしょうか? 


 玄関の外へ出ると、ヒナギクさんと仲良くしている近所の奥様たちが話しかけてきました。


「あら、ヒラガさんち、お子さん増えたの。おめでとう」

「奥さんが外国のかただから、ハーフよね。だから髪が3色なのね」


 いやいやいやいや。そんなハーフいます?

 というかこんな短期間でお子さん増えるわけないでしょう。鮭の稚魚じゃないんですよ。もっと疑問を抱いてください!


「エレちゃんです。とても可愛いです」


 なんでちょっと誇らしげなんですか、ヒナギクさん。


 う~ん、彼女が嬉しそうなのは悪くないですが……。不便だし、ネコ型のほうが圧倒的に可愛いし、はやく元の体に戻りたいのです。


 いろいろ考えているうちに、スーパーに到着しました。

 ここに来るのは2回目ですが、今回はあまりテンションがあがりません。なぜかというと、あんなに大好きだったニャオちゅ~るのことを想っても心が躍らないのです。


 むしろ食べるのを想像するだけでウッってなります。

 ニオイがきつくてちょっとむりです。悲しいにもほどがあるのです。


「しかたないですね……。40日間の辛抱なのです。あっ、扉はボクが開けたいです!」

「はいはい、どうぞ」


 まあせっかくなので、ネコのときに出来なかった行動をバンバンやって楽しむことにしましょうか。


 扉を開けるのもそのひとつです。襖は前脚で開けられたのですが、押したり引いたりするタイプのやつは苦手だったんです。

 だから我が家の物置にも侵入できませんでした。いつもムキになって爪でカリカリしてはドクターに怒られていたので、この機会に開けまくってやるのですよ!



 バチッ



「いたたた! なんですか!? 敵襲ですか!? フー!」

「エレちゃん、落ち着いてください。ただの静電気です。わたくしのスキャニングで確認したところ、エレちゃんはかなりの帯電体質のようですね。冬は金属製の物に手で触れないほうがいいと思われます」



 帯電体質って、そういう……!? 手から電気って……!?


 違う、そうじゃない。

 あのヤブマッドサイエンティスト!!

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