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おもしろき あの世で異端者  作者: 大地 チイダ
第2章 黒い現実
17/22

登校前夜

  まず驚くべき光景といえば、この世界は俺が勝手に思ってるだけかもしれなかったが、魔法がある世界だとばかり思っていた。

 しかし今、信じられない物を目にしている。

 まず初めに、『ガスコンロ』だ。皆さんも、家庭でたこ焼きとか鍋料理をする時があるだろう。その時に使うやつだ。ちゃんとガス缶をセットしてスイッチをひねる。結果火が出る・・・当たり前だ。しかし、もし魔法の世界なら、ガス缶の中身は魔力で、それを原料にして火が出るとかありそうだ。

 でも、箱を見てみると、作ってる企業や原料までちゃんと表記されていた。大きく『危険』とも書いてある。

 もしかすると・・・、と思った俺は彩都に聞く前に色々この家の中を調べてみることにした。

 今日はキムチ鍋風な鍋料理なので、野菜が煮込むまでの間、俺は『トイレに行く』と言い残して茶のリビングを去る。

 

 リビングルームからでると、少し寒く感じる。さっきまで鍋のそばにいたのでなおさらだ。

 しかし、ストーブのような類の家電はなかったよな・・・。もしかすると、彩都が魔法で部屋を温めているのかもしれない。

 トイレに行くには玄関を通らなくてはいけないのだ。これは元の世界の俺の家でも同じだった。ただ、靴が俺のを合わせて合計8足並んでいる。そんな光景を見るだけで俺は一人じゃないって思えてきてしまう。

 玄関を抜けると、洗面所があった。鏡に映る俺。ふふふ・・・、結構だらしねえな、とかやつれてるなあ、とか思う。

 念のため、蛇口をひねってみる。俺が少しひねってみただけで、水がチョロチョロと、細く出始める。

 隣には洗濯機があった。その洗濯機の後ろには、かなりの量の埃が溜まっている。なんか太いホースのようなのが洗濯機に刺さっているし、プラグのある所だけ埃が綺麗に取り除かれていた。プラグがあるということは、電力を受け取って動く、電化製品の可能性がとても高い。もしかすると、魔力を受け取るためのプラグかもしれないが。

 

 トイレは、洗面台のすぐ右で、俺は普通に用を足した。風呂は逆に洗濯機の左側。ボイラーのような機械がある。

 気づいたが、脱衣所がなかった。風呂屋の脱衣所にある脱いだ衣服を入れておく入れ物があっただけで、すぐ風呂場のドアがあるだけ。歯を洗面台の前で俺が磨き続けていれば、俺は目をつぶらない限り脱衣する瞬間が拝められるというわけだ。綾音ちゃんのために、後でカーテン替わりになる布を、何とかしてかけておく必要があるな。そりゃ女の子の裸や着替えに興味はあるけれど。

 「おーい!もう出来るぞ!!」

 彩都だ。玄関の方へ移動しながら、

 「すぐ行くぜ?ほらっ」

 リビングへのドアを開けながら言う。ちなみにリビングが明るいのは彩都の光系の魔法のおかげで、まるでLEDのような優しい黄色い光が俺らの食卓風景を包みこむ。キムチの香りが食欲を出させる。

 友達がいるっていいことだと、俺は何度思ったか。もし、一人だったら食欲なんて湧いてきただろうか・・・、なんて考えながら白菜とネギ、ぶなしめじに豆腐を汁と一緒におたまでよそった。

 光は俺の倍以上取ったし、綾音ちゃんは野菜中心だ。やはり鍋は肉ではなく野菜が中心だろうと俺は考えている。今回はなんかキムチみたいだし。

 「うめえ・・・」

 「そうですね、修希さん。辛くて美味しいですね」

 「はふはふはふ・・・・・」

 「ほふほふはふ・・・・」

 「ハグッ・・・!はふはふあふ・・・」

 うむ・・・。やはり人は旨いものの前には無口となると言うけど・・・。

 お玉で鍋の中の野菜が掬いやすくなった位の時に、彩都が言う。

 「どうだ?少しは元気でたか?」

 「まあな。少し。・・・・でも足りねえ。俺は全くと言っていいほど何も出来ない。俺が学校に行って、マジメに教えてくれる先生がいると思うか?レイナさんに期待するさ。もし彼女がなにも明日、俺らに干渉して来なかったら・・・」

  

 俺は学校に監禁されたと判断して、即刻あてのない旅へでるだろう。それでも、俺の人生は俺のものだ。きっとどこかで戦闘員候補として、『黒』の因子を持つ俺を使ってくれるだろう。

 あれだけ人に気持ち悪がられた属性だ、きっと戦いでも役に立ってくれるはず。


 そしてスキを見て、クーデターでも起こしたり、あるいは脱走してもいい。

 ただ、彩都はどうするのかって、思った。


 「即刻逃げるのは、早すぎると思います!」綾音ちゃんがすぐに俺に反応してくれる。

 「せめて3日間は滞在するのをオススメします!説明は受けましたか?この学校では魔物と戦える人員を育成し、代表的な就職先へ向かわせることが裏の目的です。まあ、日本で言う自衛官を養成する大学のような機関がありましたよね?主に『ルイン』や『ゴート』、『ラビット』という、大企業の幹部候補生としての勉強をします。表向きには魔法を使えるということを活かして、さらにそれぞれ専門的な勉強をします」

 なにが言いたいのか、俺にはわからなかった。ただ、あの時居た三人組が言ってたな。なんやら『特別クラス』というのがあると。てか、裏の目的をそう簡単に初対面の人に話すわけもないだろうが。

 「何が言いたいんだ?」と、言葉に出して俺は言う。

 「その特別クラスに入るか入らないかを決める魔力量のテストが、明日行われます」

 「はあ?俺は万が一選ばれても絶対辞退だ」

 「それは大丈夫です。魔力量がすべてを決めるわけではありませんので。しかし、今のご時世、なかなか『黒』の因子を持った人なんていませんし、魔物ぐらいです。なので、これから修希さんの魔力量を図らせてくれる機会は、滅多にないと思います。魔力を持ってる人は私たちがいた時と比べて増えました。なので、魔力の需要は増えます」

 なんか、回りくどい言い方だが、要するにこうか?この先いろんな人たちと出会うにつれて、魔力量のことを聞かれることが多いってか?

 俺は自分で抱え込まず、彩都に助言を頼む。

 「ようするに・・・だ。これからお前には『魔力保有量書』を発行してもらうってことだ」

 俺だって馬鹿じゃない。やはり、悪魔のように思われてる『黒因子』と、あまり関わりたくないそうだ・・・。

 だから、魔力保有量を証明できるものがあれば、それを見せればいい。ただ、俺がもし、本当に魔力もない『ただの危険生物』だと判断されて、利用価値がないので捨てられる・・・、可能性もあるのではないか。


 「まあ例え少なくとも、俺は修希から離れないぜ?それに、『黒』は色々とな、鍛えれば面白い能力もあるんだよ・・・」


 この、彩都の発言の中で『面白い能力』のところの時、彼が少し怖い顔をしていたのだが・・・、それは俺も同じだろうな。

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