玄関の前で
「そういえばさ、綾音ちゃんと、光は?」
「今から行くところにいるよ。でも、いつまで居られるかな・・・」
「・・・・・・、やっぱり、俺の中の『黒』のせいだよな。さっきの人たちの反応で分かるよ。少しぶつかっただけで『この世の終わり』みたいな顔してた」
「修希、別にみんなはな・・・。ただ教えられてきただけなんだ。昔、『黒』の因子を持った毒のトゲを持った魔物を生け捕りにしたんだ。『素手』でその毒の部分を触ってしまっただけの不注意なのだが、それで当時の第2王女が一瞬で溶け出して死んだ。まあ、その毒を持っている範囲が広かったのも原因だが・・・、捕らえてきた人たちは、分厚い手袋をしていたため助かった。それ以降、『黒』の因子を持つ生物には猛毒があるって、教えられてきたんだ・・・」
たどり着いたのは、学校からそんなに遠くないところにあった一件の家の前。
どうやら、彩都は俺より何日か早くこの世界に来たようで、早急に住処を探していたようだ。どうやら、本人が言うに、ここは彩都が住んでいた地域ではないらしく、数100キロも離れているらしい。昔からの知り合いだった彩都の父さんの部下がこの街で不動産を営んでおり、ひとまず安い家に身をおくことにしたらしい。
町並みは、いつかテレビで見たことのあるオランダ・・・、ペルギーだったか?
ともかくヨーロッパ風の町並みだ。イマイチわからないという人は、今からヨーロッパの旅番組をご覧いただきたい。両脇に店、屋外テーブル。昼には多分多くのお客さんで賑わうことだろう。
俺自身、黒が悪だとはまだ認めていなかった。だから、明日レイナさんに言われたとおり学校に行く・・・か?
「気にすんな・・・。確かに歴史はあるが、今日のはまるで人種差別だ。またなんか言われたら俺がぶん殴ってやる。それが教師でも女子でも」
俺の不安な表情が読み取られたのか、彩都はそんなことを言う。
異世界まで来た・・・、いやもういっそ『逃げた』でいいよ・・・。両親もいたのに、俺は彩都の手を振り払わずに巻き込まれた。だれも俺らのことを知らない世界があるなら、そこで新しくやっていけるのだと、あの属性を調べる水晶玉の前で思ったんだ。
だからこそ、俺は言う。本当はそうであって欲しくないと願いながら。
「お前、俺のそばにいたらさ・・・。その・・・ま、また・・・みんな、に・・・・・」
最後まで俺のそばにいてくれた彩都だが、別に彩都には関係のない問題だったはずだ。と、考えると、余計に目の前が夜の闇以上に暗く見える。
それに、綾音ちゃんや、まだ小学生の光まで、迷惑がかかるのではないか。綾音ちゃんも、光も、彩都の兄弟だというのなら、この世界の学校に通ってたはず。
不安なはずだ。それなのに、俺は彼らを便りにしようとしてしまう。
「大馬鹿者だな、お前。俺はもう、親友は見捨てねえって誓ったし、それ以前にお前は絶対見捨てねえ。・・・信じてくれ。・・・言いたいことはそれだけ。ほら、早くドアノブ回せよ」
言われたとおりの、ちょっと古そうな家。なんか、日本で言う昭和3、40年代位?かはわからんが、その時代を舞台にした映画やドラマで、使われていた家のセットと形が似ていた気がした。
「2人はいるんだよな?」
「何度もしつこいぞ?ほら、夕食の支度するから手伝え」




