煉獄
彩都に抱えられていて、俺も今は落ち込んでいる場合じゃないと自分で立って一緒に走る。
上を見ると、なんと9人集の女の子が空を飛びながらこちらに火や雷等を放ってくる!?・・・魔法だ。これが異世界なのか。
(ちょっとくらい黒色だからって、なんで嫌われなくちゃいけないんだ!これじゃあ、昔と同じ・・・いやそれ以上!?)
足元の大理石は、空に浮かぶ彼女達の居場所をくっきりと映し出してくれていた。やはり、魔法には詠唱動作が必要なわけで、『青龍フォーンの加護のもと、霊獣フェンリルのすべてのフィールドを・・・』なんてしゃべっている。
しかし、まるで戦国時代の織田信長が長篠の戦いで用いた鉄砲の縦列隊のように、詠唱している3人をかばうように、他の6人が魔法や、太刀、薙刀、槍、両手斧等、武術で戦う人もいるようで、今彩都が結界を貼ってくれている。
各武器でこちらへ接近しようとした女の子たちは、予想外の結界の強さに弾き飛ばされ、ひとりは大神官の方へ飛ばされたが、それをレイナさんが受け止めた。
レイナさんという人を、俺はどこまで信頼していたのだろう。たった数時間の出会いなのに。俺はアホだ。
彼女の冷たい視線から逃れたくて走ったが、そういえばここは2階だったことに今更気付く。
「まあ結界のことは気にするな・・・」とわらって言う彩都。ともかくこいつも『魔力』というのを使っているんだろう。
「ここから降りれるのか?」
「ほかにどこに逃げ道がある?いくぞっ!」
「ライトニング・バースト!!」
(レイナさんの声・・・、やっぱり彼女は敵だったんだ)
「くっ、空中だと・・・」
それは一瞬の出来事だった。レイナさんの魔法は、簡単に俺らを包んでいた結界をぶっ壊した。
しかし彩都は、最初から壊されると読んでいたようでなんとか直撃は避けれた。あと地面まで3、4メートル程だったが、草むらだったのでなんとか衝撃は和らげられたか・・・?
「下がコンクリートじゃなくてよかったな」
「今はそれどころじゃないだろって!・・・でもレイナさん以外なら俺の防御結界はっ!」
「待ってください、彩都様、そして修希殿」
「今は・・・、私に下ってください。私を信じてください・・・、あなたがたはこんなところで死んでいい人たちじゃない!!」
「レイナさん・・・。ふふっ。いつものドSキャラが崩れてる・・・。しかし、俺らはあなたにはかなわない。・・・・・・あんたにゆだねるさ」
「ありがとうございます・・・。フフフッ、それでこそ彩都様。そのあきらめのいいところ、良いですよ」
「けっ!言っとけ」
(本当にこの人を信じてもいいのかな、とは思う。でも今はどう動いても彼女の手の中のような気がしてならない)
ふと周りを見ると、この学園の男女の生徒と教員が20名程度、まるで俺のいた世界風に言うなら、全員銃を構えて俺らをいつでも撃てる状態になっていた。
どれだけ彩都の力をあてにしているのかは、自分でも惨めだと思う。
それでも、一緒に居てくれて、まず『ありがとう』っていうべきだろうな。
そして、俺らには手錠をかけられようとされたが、手錠が腕に触れただけで消滅してしまった。
あの大神官は「クソッ!この異端児がああぁぁぁぁ!!!」なんてほざいてたし、9人集の女の子からは全員・・・でもないけれどほとんどの女の子から汚物や蝿を見る目つきで見つめられ、「異端者近寄るな」、「平穏に過ごせると思うな」
、「見つめるな・・・うわああ!目が腐るうううう」、「耳も腐りますわ」、「クズ・・・は死ね!」、「同じ息を吸わないで」・・・とか次々と言いたい放題だった。
「危ねえよ!」
「痛えええ!!ぐああ」
石を投げつけてくる子供。罵声とこういう暴力が、今の俺たちのこの世界の最初の挨拶だというのか。
彩都がバリアを貼る。子供の投げた石はすべて結界に吸収されて、消える。
「うわっ、あいつら逃げやがった!臆病者っ、おとなしく出てこい!」
「今は何もしねえよ。だが、今投げた合計21個の石、忘れねえからなっ!!」
彩都が怒鳴った。しかもこれは本気の表情・・・。
ひっ・・っと後ずさる子供。その中の女の子が何人か泣き出した。
(何泣いてんだよ)
俺はこの時、どんな表情をしてるんだろう・・・。少なくとも哀れんではいないから・・・。
泣いた子供をあやす人。こちらを悪い悪魔だと言いつけながら。
その中で、体格のいい男が出てきた。怒ってるように見える。
「てめえ!よくも俺の妹を泣かしたな・・・。いいか?結界破りなんか簡単なことだ。我らが鋒高校の生徒会兼、『魔術連盟機関』通称「真恋華」がいる限りお前らに自由はねえ!」
(魔導連盟風紀課・・・真蓮風華か。覚えとくか)
俺がその『真恋華』の方へ目線を向けると、「視線があった・・・目が・・・痛い」とかいうような反応がほとんど。
ただ、黒い髪のポニーテールのお姉さんと、黄色い髪の、少し胸が薄い女の子は、終始何も悪口を言わず他のメンバーに、暴言を言うのをやめるようにとがめてくれてた。・・・いい人、なのか?
まあ、ポニーテールのお姉さんは目は合わせてはくれなかった。黄色の髪の少女は、逆にじっとこちらを睨んできている。
レイナさんはこの光景を見て言った。
「皆さん、そこまでです。話が進みません。これ以降、一般人の一切の言動や暴力を禁じます」
「レイナさん・・・?」
「大神官様。この子たちを学校に通わせることを進言します」
「はあ!?・・・番号2番。もし、こいつらが学園に危害を与えたらどうする?万が一死傷者や、黒の呪いで不運な事故が起きてしまったら・・・」
今、レイナさんのことを『番号2番』といったな。・・・ますますあのじじいが気になる。
周囲の学生たちは皆嫌そうな表情で、中には吐いた人までいた。
「それは迷信です。そもそもなぜ黒なのでしょうか?風や炎でもそれならよろしいではありませんか」
「口の聞き方を忘れるな2号!!」
同時に、彩都がレイナさんを結界で守る。なにやら黒いモヤモヤがその結界の上でうごめいている。あれは違うのか・・・?あれもあいつらの言う黒魔法じゃないのか!?
彩都も同じことを思っていたそうで、大声で叫ぶ。
「おい!!その魔法はなんだ?おーい見たか皆さん。あの結界の上で蠢く黒いモヤモヤを!」
これで一発だろう。だんだん消えていくが、十分確認できる大きさだ。
観衆の意見を待った。黒魔法はあいつも使ってたって!
あれ・・・。少しくらいリアクションしてもいいと思うけど。
「見えないのか!!あのモヤ・・・」
「うぜーんだよっ異端児。なに勝手に勝ち誇った表情してんだ。てめえらの視線の方がおかしいんじゃないか?どう見たって白色の白蛇の霊獣だぞ!?しかも大神官様の霊獣を殺す気かっ」
白くみえるのか。おかしいな・・・・。
「うるさいっ。俺は・・・」
「大丈夫です、彩都様」
スパッ・・・・。彼女の右手一つで彩都の結界が途切れ、白蛇を取り押さえてあのじじいの元へ持っていく。
そして言う。
「彼らはこの大陸にはいないタイプの能力者です。もしその彼らをあなたの管理下に置けば、さらに『鋒高等学校』の名が全国へ轟くことでしょう。どうかお許し下さい」
と、頭を下げてくれた・・・、一応、俺らのために?
俺らも頭を下げる。彩都は剣道をやっていたので、綺麗に斜め・・・大体30度暗いにぴしっと止めて礼をしている。俺もそれに習う。
じじいは集まっている生徒・職員の顔を、ゆっくりと優しい視線で見つめ、最後にレイナさんに向き直ると、目を大きくさせて言った。
「私が心配なのはこの学園の生徒たちに悪い影響がでないかということだけだ。異端児、そして最後まで異端児につく『蒼井家』の嫡子よ。2号の管理下であれ。ただし逃げようと考えないほうがいいぞ?まあ、わしから逃げようと考えもおこさんようにしてやる・・・ハハハハハ、まあ、あの手錠が効かん以上、呪いで縛っておくのは無理だったが・・・」
こうして、俺らはこの高校の生徒となった。




