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第28話 終焉の魔女は質問する




「――でも、ごめん。やっぱり、俺は誘いに乗れないよ」


 俺は――ラスティの誘いを断った。


「ど、どうして……? 好きな人に近づくためには少しでも地位を上げた方がいいはずでしょ!?」


「……そうだな。いや……そうだったよ」


 もしも――数日前に同じことを言われていたら、絶対に頷いていた。


 しかし、アリシアはもう家から追放されたも同然……つまり、貴族じゃない。

その上、聖女の力も奪われているので聖女でもないのだ。


だからアリシアと結ばれるために今、するべきことは地位を上げることじゃない。


――彼女を探して……会って、その支えになることだ。


すると、ラスティが諦めたような苦笑を漏らした。


「……そっか、断られるかぁ……これ、最後の切り札だったんだけどね……」


「悪いな、ラスティ……状況が変わったんだよ。それに――」


俺はさっきまでリアが座っていた椅子に視線を移した。


「――やっぱり、リアが嫌がってるのに引越しなんて出来ないよ」


「……リアちゃんのこと、凄く気にかけてるんだね……」


「まあな。俺はリアの……保護者だからさ」


「ふぅん? 随分と大切にしてるじゃん」


ラスティは揶揄うような口調でニタニタと笑みを浮かべた。


「うっせ。俺にとってリアは……幸運の女神みたいなもんなんだよ」


思えば、リアと出会ってからアクシデントも多いが、色々なことが上手くいっている気がする。


そう言った時だった。


「――ふぅん? アスタさんは私のこと、そんなに大切に思ってくれてるんですね……!」


突然、後ろから抱きつかれた。


「り、リア……!? いつの間に……」


「ふふっ、トイレから帰ってきたら私の話をしていたので盗み聞きしちゃいました……!」


リアはちろりと舌を出した。


「ま、マジか……ちなみに、どこから……?」


「『リアが嫌がっているのに〜』からですね……! アスタさん、私のこと、そんなに大切に思ってくれてたんですね……!」


リアは嬉しそうに、ぎゅっと抱きしめる力を強めた。


「あはは……こりゃあ、ボクの完敗だな」


「ふふんっ! アスタさんを私からを奪おうなんて百年早いんですから……!」


リアは俺の後ろから顔を出してラスティを軽く睨むと、ぷくっと頬を膨らませた。


「ラスティも……ごめんな。せっかく、好条件で誘ってくれたのに……」


「いいよ、いいよ! ボクも別に通りかかるついでにアスタを勧誘しただけだし!」


ラスティは取り繕ったような笑顔で言うと――


「じゃあ、この話は終わり! でもさ……代わりに一つ、お願いしてもいい?」


「なんだ?」


「ボクさ……今日、宿取るの忘れちゃって……一日だけ、ここに泊めてくれないかな?」


「なんだ、そんなことか! いいに決まってるだろ」


そもそも、この家はラスティを含め、みんなでお金を出した買ったのだ。


俺が許可なんてしなくても、自由に使っていいのに……。


「ありがとう、アスタ……! リアちゃんもいいかな?」


「まあ……アスタさんが良いと言うなら……。でも! 絶対に部屋は別ですからね!?」


「勿論だよ……!」


「あと、変なことしようとしたら絶対に容赦しませんから……」


リアはムッと唇を尖らせながら、ラスティを警戒する。


恐らく……人間不信なのだろう。

俺のことは信じてくれるようになったものの、やっぱり、他の人には警戒してしまうんだな……。


俺はラスティに近づくと、こっそり耳打ちする。


「すまんな、ラスティ。リアは過去に色々あって、人間不信気味なんだよ……」


「そ、そうなの……? ……でも、人間不信にしてはアスタには懐いてるよね」


「まあ……なんか、懐かれた」


「そんな、野良猫に懐かれたみたいな……」


ラスティは苦笑いを浮かべると――


「ま、まあ、それじゃあ、今日はよろしくね」


握手のためにリアに手を差し伸べるのであった。


対してリアは数秒迷った末に……ラスティの指先をちょびっと摘んだ。


これ……握手なのか……?




――◇――◇――◇――



「おおっ、凄い美味しいね、このグラタン……!」


ラスティはリアが作ってくれたグラタンを口にすると、感嘆の声を漏らした。


「お口に合ったのなら良かったです」


「リアちゃん、ボクには冷たくない?」


「そんなことありませんよ。これが通常運転です」


リアは真顔でそう言った。


今度は俺もグラタンを口運ぶと――


「――おおっ、リア、このグラタン本当に美味しいね」


「本当ですか……!? それなら良かったですっ!」


リアは満面の笑みで言った。


「――いや、明らかにアスタとボクで反応が違うんだけど!?」


「まあ……そういうこともあるよ、ラスティ」


ラスティは美少年だし、いつもはラスティの方が断然、女の子にはモテるんだけどな。


……イケメンざまぁみやがれ。

と思わないでもない。


「……アスタ、汚い笑みが溢れてるよ?」


「おっと……悪い悪い」


「もう……二人してボクをいじめて……」


ラスティは悲しげな表情を浮かべるのであった。






そうして、何だかんだで食事の時間は楽しく過ぎていき……


夜。


「――アスタさん……今日も、一緒に寝てもいいですか……?」


案の定、リアはベッドに潜り込んできた。


「勿論」


「ありがとうございます……! ところで、一つ訊きたいんですけど……」


リアは一瞬、不安げな表情を浮かべると――


「――ラスティさんとは本当に、ただの元パーティメンバー……なんですよね?」


いつもより鋭い瞳が俺を見つめた。


……どういうことだろうか。



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