第25話 終焉の魔女は勘違いする
「――アスタさん……っ! 貴族の女の子の知り合いなんか居たんですか!?」
リアは玄関から戻ってくると、すぐに悲鳴のような声を上げた。
「……貴族の女の子?」
そんな知り合い、居たっけ……?
ギルド関係の人か?
……うーん、わかんねえ。
「とりあえず、俺が出るよ」
俺はすぐに着替えて、玄関に行くと――
「――あ、アスタ!」
玄関には見知った人物がいた。
貴族みたいな高級感あふれる服に身を包み、肩まで優しい緑色の髪を伸ばしたこいつは――
「なんだ、誰かと思ったらラスティか」
「もう……! 折角、元パーティメンバーがやってきたのに、『なんだ』って……いや、それよりも――」
ラスティはズカズカと俺に近づいてくると、肩を掴み――
「あ、アスタ! いつの間にかに子供なんて作ったの!?」
そう言って前後に俺の肩を揺さぶってきた。
「お、落ち着いてくれ……!」
「落ち着いてなんて居られないよ……! 相手は? 相手は誰なの?」
「相手なんて居ねえよ……普通に拾ったんだよ」
俺がそう告げると、ラスティはハッとした表情を浮かべ、ようやく肩から手を離してくれた。
「なんだ、拾っただけか……アスタのお人好しは未だ健在ってことね」
ラスティは安心?したのか、胸を撫で下ろした。
「なんで安心してるんだよ……」
「いや、だってアスタなんかに先を越されたくないし?」
「おい」
ラスティは俺の反応を見て、くすくすと笑った。
そうして俺たちが会話に花を咲かせていると、リアが小さく俺の服の裾を摘み耳元で囁いてきた。
「……あ、あの……アスタさん、この人は元パーティメンバー……なんですか?」
「うん。ラスティは貴族なんだけど、昔、長いこと一緒にパーティを組んでたんだ」
「……ふーん、へぇー」
リアは不機嫌そうに口元を歪めると……
「やっぱり……女の子を侍らせてるじゃないですか……」
何かを言った。
――次の瞬間、俺のお腹はつねられて鋭い痛みが走った。
「い、痛いよ、リア……どうしたんだ?」
「なんでもないです」
リアはぷいっと顔を背けた。
「……ふぅん、なるほどね。この子も大変だねぇ……」
「なんだよ、ラスティ……」
「なんでもないよ。それよりも、立ち話もなんだから家に上げてくれない? 長旅だったから、疲れちゃったんだよね」
「そうだな……!」
俺はラスティをリビングに案内した。
そして俺とリア、机を挟んでラスティという形で座った。
「さてと……それにしても今日はラスティ1人なのか?」
「うん、他の3人は今も元気にモンスターを狩ってるんじゃないかな」
「……他の3人? ラスティさんはもう冒険者じゃないんですか?」
リアは不思議そうに首を傾げた。
「流石に貴族だからね……アスタが辞めた時に一緒に辞めたよ」
「ふぅん……そういえば、アスタさんはどうして冒険者を辞めたんですか?」
「ッ……」
その話かぁ……。
あまり、話しても面白くは無いし、誤魔化すか。
「――スタンピード。いわゆる巨大なモンスターの群れが街を襲った後、アスタは冒険者を辞めたんだよ」
リアの質問に答えたのは俺ではなく――ラスティだった。
「おい、ラスティ……その話は……」
「どうせアスタは誤魔化そうとしてたんだろ? ……自己開示をしなさ過ぎるのは君の悪い癖だよ?」
「くっ……」
確かに、リアは全然、俺のこと知らないもんな……。
仕方ない、ここはラスティの口車に乗せられておくか。
「別に面白い話じゃないんだけどな……」
俺は昔、自分が主人公だと信じていた。
ゲームの主人公という意味ではなく、この世界の主人公だ。
だって、やっていたゲームの世界に転生する……なんて、まるでライトノベルや漫画の主人公みたいじゃないか。
だから俺は冒険者として活躍し、あわよくばアリシアと……と考えていたわけだ。
でも、あの日――俺は自分が主人公じゃなくて、ただのモブだって気づいた。
突然、現れたゲーム内最強クラスのネームドキャラ。
彼は俺が苦戦していたモンスターを瞬殺し、幾千ものモンスターを一掃し、瞬く間に英雄となった。
そして彼は……俺よりも若かった。
結局……モブはチートみたいな知識があっても、モブだったのだ。
俺の心は折れてしまった。
以降、俺は冒険者をやめてギルドの副ギルドマスターとしてモブらしく生きていた。
俺はほぼ同じ内容を2人にゲームの話とアリシアについてを伏せながら語った。
「……そうですか、そんなことが……」
「まあ、よくある話だよ。調子に乗った若者が現実を知っただけだって」
すると、ラスティが真剣な眼差しで俺を見つめてきた。
「――でも、君が調子に乗った若者だとは今でも思わないけどね」
「なんだよ急に……どうしたんだ?」
「別になんでもないよ、少なくともボクはそう評価してるだけ」
「……ボク?」
リアはラスティの言葉に首を傾げた。
「ん? 何かおかしかったかな?」
「い、いえ……なんでもないです」
ラスティの言葉を聞いても、リアは少し不思議そうにしていた。
どうしたんだろうか?
ラスティが『ボク』というのは何も変じゃないと思うけど……。
だってこいつ――男だし。




