第24話 終焉の魔女は管理したい
「ふぁ〜……アスタさん、おはようございます……」
目を覚ますと、すぐ側からリアの声がした。
視線を落とすと……俺のお腹を枕にしながら寝転がっているリアの姿があった。
「リア……俺のお腹は枕じゃないぞ?」
「でも……こうすれば、アスタさんを1番感じられるじゃないですか」
「そう……なのか?」
「はい〜……それに出張の間はくっ付けなくてアスタさん成分が不足してしまったので、その分の補充です……!」
そんな意味不明なことを言ってからリアは俺のお腹に頬をスリスリする。
「……そういえば、お腹、ちょっと柔らかくなりました?」
「うぐっ……言わないでくれよ……。最近……というかリアと一緒に住み始めてから、ほんの少しだけ太ってるんだよ……」
「ふふっ、健康的な食事を摂ってちゃんと寝てるお陰ですね……! 私はアスタさんがどんな姿でも気にしませんよ?」
何故か、リアは嬉しそうな表情を浮かべていた。
完全にリアにダメ人間にされている気がする。
最近じゃあ、家事は任せっきりだし、美味しいご飯を毎日作ってもらってるからな……。
お陰で脂肪が付き始めてしまった。
「冒険者の時は、脂肪とは全く縁がない、ムキムキの体だったのに……」
「そういえばアスタさんは昔、冒険者だったんでしたっけ?」
「ああ、一応俺は元々Aランク冒険者だったね」
「Aランク……! 冒険者の中でも上から2番目の強さじゃないですか!」
リアは驚愕で目を見開いた。
「でも、俺はアイテムと装備で実力を盛って、なんとかAランク冒険者になっただけだよ」
「でも凄いですよ! 冒険者の時はどんな感じだったですか? 私、アスタさんの冒険者の時について知りたいです……!」
「珍しいな。リアが俺の過去に触れるなんて……」
「何というか……ふと、私ってアスタさんのことを全然知らない気がしたんです」
「……まあ、俺も話題にあげないからな……」
冒険者時代かぁ。
……正直、恥ずかしい話しかないから、あんまり話したくはないんだよなぁ……。
好きなゲームに転生した俺は、前世ではアラサーだったにも関わらず、めちゃくちゃ浮かれていたのだ。
多分、普通の10代の若者くらい調子に乗っていたな。
そうなると、当然、黒歴史も製造してしまっているわけで……
「うっ、頭が……思い出すのを拒絶してる……」
「だ、大丈夫ですか……? そんな大変なことがあったんですか?」
「まあ……色々と」
「ふぅん……?」
リアはしばらくの間、俺をジト目で見つめると――
「――もしかして、何人も女の子を侍らせたり……!?」
「いやいやいや、してないからね!?」
「そんな……アスタさんがそんな人だったなんて……私、2人目なんて絶対に許せません……どうしましょう……」
「り、リア……? なんか怖いけど……俺、女の子侍らせたりしてないからね!?」
「そ、そうですよね……! ちなみに、そういう願望も無いですよね?」
「………………うん、無いよ」
「なんですか、今の間!? こんなにわかりやすい嘘、初めて見たんですけど……!?」
「あはは……ほ、ほら、ハーレムは男の夢って言うじゃん? 真面目な話、願望があるだけで俺はちゃんと一途だから……」
俺がそう言うと、リアは少し黒いオーラを溢れさせた。
「……将来は私がちゃんと管理しないといけないみたいですね」
「り、リア……? なんだか怖いんだけど……」
「ふふっ、アスタさん、ちゃんと覚悟しておいてくださいね?」
リアはニコリと微笑んだ。
ちなみに目は全然笑ってなかった。
――丁度、その時だった。
玄関のドアが何度かノックされた。
「ええっと……ごめん。誰か来たみたいだ」
「私、出てきますね」
「ああ、助かるよ」
リアは玄関の方へ歩いていった。
数秒後――
「え……ッ!?」
玄関からリアの悲鳴に似た声が聞こえてきた。
すぐに驚いた様子のリアが帰ってきて――
「――アスタさん……っ! 貴族の女の子の知り合いなんか居たんですか!?」
貴族の……女の子?
……誰?




